2021年1月28日(木)、29日(金) 基本構想特別委員会
青字は答弁
テーマ [第6次基本構想について]

☆第6次基本構想について
 基本構想とは、市の目指すまちの姿跡その実現に向けたまちづくりの基本的な考え方を明らかにするもので、豊橋市では1970年に第1次基本構想が策定されて以来、半世紀にわたり総合的かつ計画的にまちづくりが進められてきました。第5次基本構想の計画期間が2020年度に終了するため、2030年度を目標年次とする新たな基本構想を策定し、議会の議決を求めたものです。

  1. 財政の見通しについて
    【1回目質疑】
     序論にある「一般会計歳入の市税の欄では、2020年度に658億円となっているものが、2025年度に675億円に、2030年度に694億円にと、順調に増加する見込みであると思われる。
     一方、財政の見通しについての説明では『税収の見通しが厳しい情勢の中』とある。何をもって税収の見通しが厳しい情勢というのは、何をもって判断したことなのか、認識を伺う。

    【答弁要旨】
     新型コロナウィルス感染症の影響により、令和3年度の市税収入は大きく減少することが見込まれる中、感染拡大への対応や地域経済の活性化などに総力をあげて対応しても、コロナ前の水準に戻るには、数年かかると見込んでいるほか、生産年齢人口の減少傾向など、これらの状況から税収の見通しが厳しい、としているものです。
     なお、財政の見通しにおける市税収入については、国の経済成長見通しをベースに、企業立地の促進や本市への転入増加策など、税収増加につながる施策を施した場合の計画値を記載しています。

    【2回目質疑】
     本市の現状としては厳しいことが予想されるが、今後、企業立地の促進や本市への転入増加策などの施策を施した場合の値であるとの説明だった。着実に成果に結びつけ、税収の計画の達成を期待する。
     また、地域経済がコロナ前の水準に戻るには数年かかることが見込まれるということだった。早期復興に向けた適切な施策が不可欠であると考える。
     続いて、「一般会計ストック」についての表について伺う。純資産の推移として2020年度が3.637億円、2025年度が3,232億円、2030年度が2,933億円となっている。5年間の減少幅を見ると、前期が1年あたり81億円、後期は59.8億円となる。単純にこの変化を解釈すると1年に4.24億円ずつ純資産減少額が縮小されるということである。つまり2020年度の純資産減少額は91.6億円、2030年度は49.2億円、2042年度には純資産の変動額がプラスに転じるというものとなっている。
     そこで、この計画では、行財政改革による行政コストの縮減をどの程度見込んでいるのかについて伺う。

    【答弁要旨】
     一般会計の歳入・歳出計画を策定するにあたり、行財政改革プランの中で、平常時において財政調整基金に過度に頼らない、メリハリのある財政構造に転換するため、財政調整基金の残高について、2025年度末時点で75億となるよう目標を定め、財政調整基金からの繰入を縮減することで、目標を達成する計画を策定しました。
     今回、一般会計ストックの算定では、行政コストは計算できませんでしたが、減価償却費といった非現金支出等に変動がない前提で、財政調整基金の残高からみると、2020年度末時点を約50億円と見込んでいることから、今後5年間で25億円の増額となり、結果として1年あたり約5億円のコスト縮減を図ることができるものと見込んでいます。
     したがいまして、今後におきましても、行財政改革を推し進め、目標の達成に向け努めていきます。

    【まとめ】
     まず、このように財政計画に財務諸表の数値が初めて用いられたことに敬意を表したい。大変画期的なことだと思う。これにより、今、答弁していただいたように、行財政改革の明確な目標設定が可能になる。さらにそれを下位計画の目標設定にも活用することで、より実効性を高めることが可能になる。
     一方、この財政計画の通りに進んだとしても、2041年度までは純資産が減少をし続け、現在の3、600億円余の純資産は約1,000億円減少することになる。税収の確保と行財政改革の着実な実施により、将来世代が自立的した市政を行えるように、純資産の確保に努めていただくことを期待する。

  2. スタートアップの促進と新たなビジネスモデル創出支援について
    【1回目質疑】
     商工業の振興の「取り組みの基本方針」の2番目「スタートアップの促進と新たなビジネスモデル創出支援」について、伺う。
     市長は12月定例議会での所信表明で、4点目の施策として「元気を生み出す地方新時代」の二つ目の取組みとして、「(本市の専門性の異なる3つの大学など)との連携をより深めることで、地域発の技術開発や創業を支援します。」を掲げている。
     所信が第6次総合計画にどう反映されているか確認するため、昨年8月の素案と本議案の参考資料とで、「スタートアップの促進と新たなビジネスモデル創出支援」の項目の説明を比較したところ、1行目に「関係機関と連携し」という文言が追加されていた。
     素案に対して「関係機関と連携し」という文言を追加したその意図と、その具体的なイメージについて説明していただきたい。

    【答弁要旨】
     スタートアップの促進や新たなビジネスモデルの創出を促していくためには、この地域の特色や強みを生かしながら地域が一体となって新たな事業の芽を生み出していく環境づくりが必要であると認識しています。そのためには、これまで以上に産学官金の連携を深め、地域内外のネットワークを強化していくことが重要であると考えており、その意図を強調する意味で「関係機関と強調し」を追加したものです。
     具体的なイメージとしては、産学官金連携拠点のサイエンスコアや商工会議所、豊橋技術科学大学をはじめとした近隣の大学等との連携のほか、国の「スタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市」や愛知県が進める「ステーションAI」の取組みに積極的に関わっていくなかで、起業家や事業者が求めるニーズのマッチングを後押しし、だれもがスタートアップしやすい環境づくり推進していきます。

    【まとめ】
     「関係機関と連携し」を追加した意図については、これまで以上に産学官金の連携を深め地域内外のネットワークを強化していくことが重要と考えたものであるということはわかった。しかし、その具体的なイメージということについては、残念ながらまだ明確になっているとは感じられなかった。
     まずはスタートアップの促進と新たなビジネスモデル創出支援に何が足りていないのかを確認し、産学官金のそれぞれにどんな役割を期待するかを明確にし、その上でそれらをどのように連携するかの方策を考えるという手順が重要であろうと考える。
     早急に検討し、成果に結び付けていただくことを期待する。

  3. 豊橋で”若者”や”女性”が働きたくなる仕事の創出について
    【1回目質疑】
     個別戦略1.活力みなぎる『しごとづくり』の、「特に注力」の1番目「豊橋で”若者”や”女性”が働きたくなる仕事の創出」」について、伺う。
     市長は12月定例議会での所信表明で、4点目の施策として「元気を生み出す地方新時代」の四つ目の取組みとして、「中・高一貫したキャリア教育や産学官連携などにより、キャリア志向を持つ女性に豊橋、東三河での就職を選んでいただけるよう、施策を推進してまいります」と言っている。
     このことについて、12月に示された案に対して今回の議案の参考資料では「豊橋で”若者”や”女性”が働きたくなる仕事の創出」」の中に「新しい生活様式に適応した働き方の導入や魅力的な働く場の創出に、官民が一体となり取り組むとともに、キャリア教育等により若者や女性へその魅力を伝えるなど、自らの理想の仕事を本市で実現することができる環境づくりを進めます」と修正された。
     「新しい生活様式に適応した働き方の導入や魅力的な働く場の創出」に「官民が一体となり取り組む」ということが現実に可能であるのかどうかがよくわからない。「キャリア教育等により若者や女性へその魅力を伝える」ということも含め、具体的にどのようなことを想定しているのか、考えを伺う。

    【答弁要旨】
     これまで、官民一体の取り組みとして、テレワーク環境や子育て中の方が働きやすい職場づくりに関する支援、大学等の連携によるイノベーションの創出や、新たなビジネスにチャレンジする方への支援などを実施してきました。新しい生活様式に適応した働き方の導入や魅力的な働く場の創出へ向け、これまでの取り組みの充実を図るとともに、今年度、実証実験を行っている託児付きコワーキングスペースの検証などを通して、新しい働き方、魅力的な働く場の創出につなげていきます。
     また、地域の企業の魅力を伝えるため、中学校や高等学校等において、学校やNPOなどがキャリア教育を行っている他、商工会議所が実施するビジネスパークなど、「活力みなぎる『しごとづくり』」の実現に向け、様々な主体が行動し、そして関係するパートナー同士での連携を促進するなど、一丸となった取り組みを進めていきたいと思います。
     こうした取り組みを若者や女性に伝えるためには、効果的なアプローチが必要です。
     産学官連携推進会議など既存の仕組みを活用するなど、学校や企業などと情報共有を密にしながら、本市の魅力をしっかりと周知したいと考えています。

    【まとめ】
     魅力的な働く場の創出に官民が一体となり取り組むというイメージについては理解した。それぞれ必要なことだとは思う。しかし、市長の所信でいうところの、「キャリア志向を持つ女性に豊橋、東三河での就職を選んでもらう」ことにつながる内容としては、残念ながら新規のものは見られずインパクトが弱いのではないかと感じる。まずは、”若者”や”女性”が働きたくなる仕事とは何なのか、職種や環境など多面的に分析把握することが重要であると考える。今後、一層の検討に期待する。

  4. 自然と共生し、地球環境を大切にするまちについて
    【1回目質疑】
     昨年10月26日に菅総理が総理大臣就任後初めての所信表明を行った。その中で八つの項目が挙げられ、その三番目として「グリーン社会の実現」を訴えている。そこでは「我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを目指すと宣言している。このことを踏まえて以下質疑させていただく。
     参考資料p.120には「1 気候変動対策の推進」についての記述がある。そこには、指標として「再生可能エネルギー施設の設置容量」と「エコファミリーの登録件数」の二つが示されている。8月に示された素案の段階では、この二つの他に、「温室効果ガスの総排出量(2015年度比)」という指標が候補として示されていた。しかし、今回の(案)では、温室効果ガスの総排出量が指標から外されている。菅総理の所信表明の直後に作られる総合計画であるにも関わらず、総理が大切にしようとしている指標を敢えて除外したのはなぜか。その理由を伺う。

    【答弁要旨】
     本市は、世界首長誓約/日本の誓約団体として、温室効果ガスの国の目標以上の排出削減に取り組むことを掲げていることからも、温室効果ガスの総排出量は重要な指標であると認識しております。しかしながら、本市における排出量の算定は、国が毎年度末から約2年遅れで公表する全国の総排出量を基に、本市の人口や産業構成割合等により推計するため、結果として約3年遅れでしか把握できず、毎年度の取り組みの実績を示す指標としては不適当だと判断しました。今回設定している指標は、温室効果ガス排出量削減への貢献度が高く、その実績が翌年度に効果検証できるものとしております。

    【2回目質疑】
     約3年遅れでしか把握できず、毎年度の取り組みの実績を示す指標としては不適当だと判断したとのことであったので理解した。
     菅総理はさらに「世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります」とも言っている。 本市では他市に先駆けて、ソーラー発電の推進、バイオマスエネルギーの利活用、エネルギーの地産地消など、CO2の排出削減に取り組んでいる。菅総理の政策は本市にとって好機になり得ると思われる。このアドバンテージを活かし、グリーン産業の振興や誘致などの取り組みを行うべきと考えるが、取り組みの基本方針にそのことが記載されていないのはなぜか、その理由を伺う。

    【答弁要旨】
     取り組みの基本方針2「再生可能エネルギーの利用促進」の中で記載している「多様な再生可能エネルギーの導入を促進し、エネルギーの地産地消を進めます」には、例えばスマートグリッド構想のような、企業と連携した再生可能エネルギーの普及促進など、新エネルギー分野における産業振興も含んでおり、具体的な取り組みについては下位計画である環境基本計画や地球温暖化対策地域推進計画のなかで示し、推進していくこととしております。
     ここで指標とした再生可能エネルギー施設の設置容量の目標達成には、こうしたグリーン産業の振興は不可欠であり、産学官連携も含めた積極的な戦略の立案や企業への普及啓発・情報提供に努めていくことが重要であると認識しております。

    【まとめ】
     取り組みの基本方針2「再生可能エネルギーの利用促進」の中には、スマートグリッド構想や再生可能エネルギーの普及促進など、新エネルギー分野における産業振興も含んでいるということだった。
     しかし、これらは新エネルギー分野の産業のユーザーであるという以上のものではない。今、世界が地球温暖化暴走の脅威にあることが危惧されている中にあって、グリーン社会の形成に寄与する製品やサービスを生産・提供する企業群(産業クラスター)の形成は、十分検討に値するものと思われる。今後の取組みに大いに期待したい。

  5. スマートシティ化について
    【1回目質疑】
     市長は12月定例議会での所信表明で、3点目の施策「暮らしを支える地域づくり新時代」の最初の取組みとして、「暮らしと産業を支える基盤整備推進のため、AIやICTなど先進技術の積極的導入によるスマートシティ化を進める」としている。
     参考資料のp.130からp.139の中でそれらしいものを探したところ、p.132の取組みの基本方針1.公共交通の維持と活性化の中に「ICTを活用して利便性を高める取り組み」という文言があるのみだった。しかもこれは8月に示された素案の中に既に含まれているものである。
     市長が言われるところのスマートシティ化を進めるということは本計画の「8暮らしの基盤が整った、便利で快適なまち」の、p.130「1都市空間の形成」からp.139の「5下水道の整備」の中で、どこに示されているのか、また、どのようなイメージのことなのか、について伺う。

    【答弁要旨】
     スマートシティは、先進的技術の活用により、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、各種の課題の解決を図るとともに、快適や利便性を含めた新たな価値を創出する取り組みであります。
     分野別計画、8「暮らしの基盤が整った、便利で快適なまち」において、2「交通環境の充実」の取組の基本方針の1.では、「ICTを活用して利便性を高めるための取り組み進めます。」として示しており、具体的には、路線バスへのICカードの拡充やMaaSなど新たなモビリティサービスの導入などをイメージしています。さらに4では、「自動車の走行データを活用した効果的で効率的な交通安全対策を進めます。」と示しており、ビッグデータを活用した適切な交通安全対策が可能となることをイメージしています。
     このほか4「水道水の安定供給」の取組の基本方針の3、及び、5「下水道の整備」の取組の基本方針4では、共に「ICTの活用などにより、一層の経営効率化を図ります。」と示しており、自動通信が可能な水道スマートメーターの運用やAI・IoTの活用による管きょの適切な維持管理などをイメージしております。

    【まとめ】
     市長の考えるスマートシティについて伺ったところ、MaaSなど新たなモビリティサービスの導入をイメージしているとのことだった。公共交通の選択肢がそんなに多くない本市において、MaaSが果たしてどんな効果をもたらすかには疑問がある。もしAIやIoTの活用が目的であるとすれば、それは本末転倒であると思う。
     まずは本市の暮らしや産業を支える基盤の課題として、何があるかを明確にした上で、その解決手段としてAIやIoTが選択肢の一つとして活用されるという順番で考えるべきだと思う。スマートシティという答え有りきの出発は失敗のリスクを伴う可能性が高くなると考える。
     さらに、国ではSociety5.0を目指すとしており、情報通信技術の進歩の速度は目覚ましい。これらの情報把握に常に努力するとともに、専門家のアドバイスも重要になる。国土交通省のサイトには、スマートシティの先行事例も掲載されているので、参考になるかもしれない。


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