2020年7月29日(水) 環境経済委員会
青字は答弁
テーマ [エネルギーの地産地消事業について]

☆豊橋市エネルギーの地産地消事業 事業化可能性調査
 2020 年1月策定の「豊橋市地産地消エネルギー指針」で目指す姿として示した「2050 年 再生可能エネルギー利用100%のまち とよはし」に向け、新電力会社を中心とした電力の地産地消事業について、その主要電源となるバイオマス利活用センターの運営会社である㈱豊橋バイオウィル(SPC)、その筆頭会社であるJFE エンジニアリング㈱及び本市の3 者で共同してその事業化の可能性について調査しました。その結果について、環境経済委員会で調査研究を行ったものです。以下は豊田一雄の質疑の概要です。

  1. バイオマス利活用センターの既存の電力売買契約について
    【1回目質疑】
     フェーズ1では、「バイオマス利活用センター及び本市が関与する太陽光発電所から調達した再エネ電力を公共施設130に供給する」とある。バイオマス利活用センターで発電した電力は、現状FITにより電力を販売していると思われるが、この現状の電力売買契約はどうなるのか?

    【答弁要旨】
     現状FITによる売電を行っておりますバイオマス利活用センターで発電した電力につきましては、新電力会社が今までの売電単価を変えることなく、送配電事業者を経由して特定のFIT電力の買い取りができる「特定卸供給」というスキームを活用して調達を実施してまいります。
     その他の本市が関与する太陽光発電所につきましても、同様のスキームを活用し、現状の各発電所における事業性に影響を与えることなく、調達を実施してまいります。

    【まとめ】
     特定卸供給ということについて確認をした。この件については終わる。

  2. 協力企業について
    【1回目質疑】
     説明では「再生可能エネルギー由来の発電所及び相対契約の安定電源を有し、十分な供給力を備えているJFEEを協力企業として」とある。再生可能エネルギー由来の発電所及び相対契約の安定電源を有する企業であることが、協力企業であるためになぜ必要な要素となるのか?

    【答弁要旨】
     地域新電力事業において、事業の安定化が不可欠である一方、気候変動や原油価格変動などの社会的要因による市場価格の上昇や、電力の需給バランスの不一致によるインバランス料金の発生など、運営上のリスクが考えられます。そのリスクへの対応策として、自己調達できる電源の保有や需給調整が可能な体制を有することは重要な要素であり、協力企業としているJFEEはそのいずれも備え、リスクを低減することができる事業者であると認識しております。
     また、JFEEグループにおいて廃棄物発電や太陽光発電など多くの再生可能エネルギー由来の発電所を有していることにより、温室効果ガスの排出量を抑制することができ、環境面においても事業メリットがあると考えております。

    【2回目質疑】
     協力企業に必要な要素として、再生可能エネルギー由来の発電所と相対契約の安定電源を有すること重要であることはわかった。しかし、その条件を満たす企業は他にも多くあるはず。
     エネルギーの地産地消を標ぼうしているからには、リスク対応のための電源も地元に有する企業を選択するということを考えるべきではないのかと考える。該当する企業はなかったのか、検討結果について教えていただきたい。

    【答弁要旨】
     市内にもメガソーラーや大型のバイオマス発電所を所有する企業が複数あることは把握しており、その電源を活用することは地産地消のためには有効であると考えます。しかしながら、そこで調達した地元の再エネ電力を確実に地元に供給し、さらにそこで得た収益を新たな再エネ導入促進のために市へ寄付という形で還元するという、市の施策に沿った事業活動を行うことは、一般の民間企業との連携協定により実現することは難しいと判断し、市自らも出資をする新会社を設立し実施することとしております。

    【3回目質疑】
     1回目と2回目の答弁を集約すると、「需給バランスの不一致によるインバランス料金の発生など運営上のリスクを回避し、地元の再エネ電力を地元に供給し、そこで得た収益を新たな再エネ導入促進のために市に還元するためには、電源を地元に有しない企業を選択する」ということになる。
     もう少し簡単に言うと、地元の再エネ電力を地元に供給するために、電源を地元に有しない企業を選択するということである。矛盾した答弁であるように思われる。
     市への寄付ということについても競争性が生かされることにならず、最大化とはならないと思われる。
     この2点について、理解できるように説明していただきたい。

    【答弁要旨】
     1点目の地元企業を選択しない理由については、バイオマス利活用センターの電力を主要電源とする電力供給業務の確実性を最優先に考えたうえでの事業者選定であり、外部専門家委員による検討委員会においても妥当との意見を得ております。
     2点目の競争性についてですが、本事業の主目的はコストメリットの最大化ではなく、温室効果ガス排出削減と地域経済活性化への貢献であり、競争性の確保を最優先するものではございません。

    【まとめ】
     電力供給業務の確実性を最優先したということだが、地産地消を犠牲にせずにそのことは実現できる可能性は十分にあると思われる。さらなる検討が必要と考える。
     この件については終わる。

  3. 推進体制について
    【1回目質疑】
     推進体制については、「本市においてエネルギー地産地消を円滑に推進するためには、市のエネルギー施策を最大限事業に反映しつつ「つなぐ」を担う、新たな地域新電力事業の立ち上げが不可欠」という記載がある。
     市が保有する再生可能エネルギーや市内の民間事業者が保有する再生可能エネルギーを活用する仕組みについて、他にないか検討したのか、したのであればその結果について伺う。

    【答弁要旨】
     再エネ電力の地産地消という環境施策を確実に推進するためには、電源となる再エネ電力を地元から優先して調達し、供給先についても公共施設等地元の施設を最優先するなど、常に市のエネルギー政策を最大限尊重した事業活動がつなぎ役の電力小売事業者には求められます。また、本事業のスキームの一つである、事業収益の一部を市へ寄付し、再エネ促進に資する施策に活用していく点においても、民間企業との連携協定により実現することは相当程度ハードルが高く、市が直接出資することで経営に一定関与する必要があると考えます。
     以上のことから本事業においては、市が直接出資する会社の設立を前提として可能性調査を実施しております。

    【2回目質疑】
     市のエネルギー施策の尊重、事業収益の一部を市に寄付することなどから、市が直接出資する必要があるとの認識だった。
     しかし他都市では、自治体として国内で初めて、バーチャルパワープラントを組み入れた事業としてエネルギーの地産地消事業を行う静岡市では、民間事業者に委託という形で行っている。温室効果ガスの排出削減に取り組む富士市では、民間事業者と温暖化対策包括連携協定を締結することにより、電力の地産地消に取り組んでいる。これらについて、どのように評価しているのかについて伺う。

    【答弁要旨】
     エネルギーの地産地消事業において、地産の再エネ電力を地元の施設へ供給することは他都市の事例でもある通り、民間事業者との委託契約や連携協定によって実施することは可能と認識しております。
     しかしながら、先ほども申し上げた通り、本市の事業スキームは地産地消に加えて、新電力会社の事業収益を新たな再生可能エネルギー設備整備のために市へ還元することを含めており、委託や連携による実現は難しいと判断しております。

    【3回目質疑】
     静岡市や富士市の取り組みをどのように評価しているのかについての質疑に対して、これらについては全く触れることなく、ただ、委託や連携による実現は難しいというお答えだった。
     今回の取り組みが重要なものであるという認識があるのであれば、他都市の異なる取り組みと具体的に比較した資料を示すべきではないのか? 私が知る限り、静岡市の取り組みでは、電力調達コストの削減規模は今回示されたものに比べ桁違いの数値が示されている。
     比較資料の提示なしに、難しいというだけでは市民への説明として不十分と思われるが、認識を伺う。

    【答弁要旨】
     本事業では、まずは市が発電した電力を市有施設へ供給することを第1歩としており、その立ち上げを確実に実施するための最も適当と考える手法が、今回の事業案であると考えております。
     しかしながら今後フェーズ2,3以降の事業を推進するにあたっては、他都市の取り組み事例についても勉強していくことは重要なことであり、その段階から他の事業者との連携により新たなスキームを導入することは可能であると認識しております。

    【まとめ】
     フェーズ2、3以降では、他都市の取り組み事例について勉強するし、その段階から他の事業者との連携による新たなスキーム導入が可能ということだった。少なくともそのことは実現していただきたい。できれば、もっと早い段階であれば、さらに有意義であろうと考える。
     この件については終わる。

  4. コスト縮減について
    【1回目質疑】
     収支シミュレーションでは、事業性試算の結果、約400万円の電気代を削減した場合の利益は、200万円となると記載されている。年間売り上げ5億円に対して約1.2%のコスト縮減ということになると思われるが、この値をどのように評価しているのか、認識を伺う。

    【答弁要旨】
     一般的に再生可能エネルギーは環境付加価値が高い分、価格は通常の電力に比べ若干高くなる傾向にあります。しかしながら本事業では、現状の契約単価を上回ることなく再生可能エネルギー由来の電力へのスイッチングが実現できるものと見込んでおります。また、バイオマス利活用センターを中心とする市内の再生可能エネルギーやJFEEグループからの低炭素な電力により、温室効果ガスの排出削減が可能であり、加えて豊橋市役所のREの向上といった事業メリットを考慮すると、約1.2%のコスト削減という数値は、総合的には評価されるものと認識しております。

    【まとめ】
     先ほど申し上げたように静岡市の事例では、もっと大きなコスト縮減を実現している。市が参加する新会社の設立という事業方式がベストな選択であるのかということについては、多いに疑問が残る。このことを申し上げてこの件については終わる。

  5. 出資比率について
    【1回目質疑】
     資料によれば自治体出資割合が50%以上が10社、33.4%以上50%未満が4社、33.4%未満が11社となっている。33.4%以上50%未満の割合がもっとも低くなっているが、このことをどのように分析しているのかについて伺う。

    【答弁要旨】
     自治体の出資割合が50%以上については資本金880万円~5,000万円となっております。また、1億円以上の資本金について自治体の出資割合は5~10%となっており、資本金が多くなると自治体の出資割合が少なる傾向となっております。
     本事業におきましては、市の施策を確実に事業へ反映させつつ、民間活力も最大限引き出し、かつ、議会への経営状況の報告および監査義務が発生し、経営の透明性が図られることから、市の出資比率を33.4%とし、専門家で構成する検討委員会においても妥当であるとの意見を得ております。

    【まとめ】
     三分の一以上の出資が法的に力を持つのは、特別決議の際ということになる。事業計画などの普通決議事項は半数以上の賛成で議決される。P.21の4-3の①で言う「市のエネルギー政策をタイムリーに最大限事業に反映させることができる」ということに不安が残る。
     答弁であったように資本金の額との相関はあるようだが、企業規模が大きくなれば自治体が関与する度合いが低くなることは十分考えられることである。その中にあっても、自治体が資本参加することで得られるメリットを確保することが考えられているはず。
     その一方で、特別決議における拒否権の必要性を認めている自治体は2割に満たないということは考慮する必要があると思う。
     このことについては終わる。

  6. 卒FIT買取について
    【1回目質疑】
     民間事業者が住宅用卒FIT電源の買い取り制度を設けて実施しているが、市の出資する会社が同じことをするというのは、民業圧迫になる恐れがあるのではないか? 認識を伺う。

    【答弁要旨】
     一般家庭から卒FITの売電先として新電力会社を選択してもらうためには、市の環境施策について広く理解を求めていく必要があると認識しております。その上で、再エネ電力の調達量増加のために創エネ事業を進めながら、電力の買取りについては民業を圧迫するのではなく、むしろ市内の一般家庭や事業者との営業網を確立している市域における他の電力会社との連携・協力による調達手法の導入もひとつの選択肢として考える必要があると認識しております。

    【2回目質疑】
     電力の買い取りについては、他の民間電力会社と連携・協力し調達手法を確立するかもしれない、ということだった。
     そもそも行政の役割としては、市場原理が成り立ちにくい部分の公共サービスに税金を投入して、市民の暮らしを守るというものであるべきではないのか? 市場原理で動いている分野に行政が入っていくには、明確な理由を持つべきと考える。
     そこで、仮に連携・協力するとしたら、具体的に何をすべきと考えるのか? 認識を伺う。

    【答弁要旨】
     例えば一般家庭の既存の太陽光パネルの余剰電力買い取りについては、市場原理が市内においてもある程度働いている分野であり、行政が民業を過剰に圧迫してまで踏み込むべきではないと考えます。しかしながら、固定価格買取制度による売電単価が下落した結果、市場原理により新たな太陽光パネルを設置する家庭が減少する中で、コストメリットだけでなく地球温暖化対策への環境メリットについて理解いただき、新たな太陽光パネルの設置を促していくことについて、民間が構築した営業網と連携することができるであれば、地球温暖化の緩和という市民全体の利益につながることからも行政が積極的に関わっていく必要があると考えます。

    【3回目質疑】
     この質疑で最初に聞いているのは、「卒FIT買取」ということについて、民業圧迫になるのではないかということについて聞いている。今の答弁は、新たな太陽光パネル設置を促すために、民間の営業網と連携するということを言われている。全く別の話だ。
     卒FITの買い取りについて、民業圧迫にならない民間事業者との連携は具体的に何なのか、市場原理で動いている分野に行政が入っていく明確な理由とともにお答えいただきたい。

    【答弁要旨】
     卒FITの買取りに係る民間との連携についてはあくまでも一つの可能性であり、具体的な実施内容について現状明確なものはございません。連携はあくまで相手方の合意が前提であり、お互いが利益を享受できなければ成り立たないものです。本事業で卒FITの買取りを実施することで民間企業に大きな不利益が生じるようであれば、本事業においては他の電源調達方法を模索したり、もしくは創エネ、省エネによる再エネ率の向上を図っていくことに重点を置くことを考えなければならないと認識しております。

    【まとめ】
     民間事業者との事業領域の棲み分けということについては、十分に検討する必要があると考える。
     この件については終わる。

  7. 出資者の選定について
    【1回目質疑】
     説明には「出資割合がB案の33.4%が適当と考える」という記載がある。残りの出資者をどのように選定するのか、考え方を伺う。

    【答弁要旨】
     新電力会社の業務は、電力小売り事業に関する専門的な知識と経験を必要とするものであり、その管理能力が経営にも大きな影響を及ぼします。民間のノウハウを最大限生かし、安定した経営を実現するためには、その業務について熟知している事業者が筆頭株主となり、実務を担うことが適当と考えます。本事業においてはバイオマス利活用センターの電力を主要電源としているため、その売電権を有しているJFEエンジニアリングが筆頭株主となることを前提としております。
     また、財務の専門家としての視点から定期的に経営をチェックすることによる健全性や透明性の確保など、ガバナンス強化のためには、地元金融機関にも出資いただくことが適当と考えております。

    【まとめ】
     JFEEを筆頭株主とし、地元金融機関にも出資をしてもらうということだった。JFEEを筆頭株主にする理由は、本事業はバイオマス利活用センターの電力を主要電源としており、JFEEはその売電権を有しているからということも言われた。
     供給先施設概要を見ると、その契約電力の合計は14,116kwになる。電源調達施設概要を見ると、バイオマス利活用センターの発電容量は1,000kwとなっている。比率にすると、供給必要量のわずか7%にしかならない。
     さらに、市内の再生可能エネルギー発電所の総発電容量は173Mw(バイオマス利活用センター発電容量の173倍)あり、バイオマス利活用センターと同等以上、つまり1,000kw以上の発電所が15ヵ所もあるということが記載されている。なぜJFEEが筆頭株主なのか?
    持ち時間がなくなったのでこれ以上聞かないが、JFEEを筆頭株主とするには、その根拠があまりにも希薄と思わざるを得ない。株主構成について、さらに検討する必要があるのではないか。
     フェーズ2以降に、新たな事業者との連携や、場合によっては出資により参画していただくことも選択肢として考える必要があると思う。是非、積極的に考えていただきたい。
     新会社を設立するとした場合の株主構成の検討のほかにも、事業方式の検討、民間事業者との事業の棲み分けの検討など、答弁を聞く限りではまだ十分になされていないところも見受けられると感じた。この事業については市が自発的に行うものであり、検討不十分なままで進める必要はないはずである。今後、時間をかけ、しっかり検討しその上で進めることを期待する。


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