2015年10月13日(火) 地方創生等計画策定調査特別委員会
青字は答弁
質問テーマ [豊橋市人口ビジョンとまち・ひと・しごと創生総合戦略について]

豊橋市人口ビジョンとまち・ひと・しごと創生総合戦略について

  1. 基本目標について
     前回の骨子では基本目標や具体的施策における重要業績指標について、項目例が挙げられていたものが、今回は目標、指標ともに明確に定め、それぞれの数値も記載されている。大変多くの数値等があり全てを確認しきれないので、5つの戦略の内4つの基本目標について、説明の文書と数値目標の整合について確認させていただく。
    1. 「活力あるしごとづくり戦略」の基本目標について
       説明では、やりがいのある質の高い雇用の確保、地域産業の活性化の2点があげられている。数値目標としては、雇用増加数があげられているが、ここではその「やりがいのある」に相当する雇用の質を示していない。その理由を伺う。
    2. 「ひとの流れづくり戦略」の基本目標について
       説明では、豊橋で育ったあるいは学んだ若者の転出を抑えること、首都圏等から本市への転入を促す取り組みを推進とある。数値目標としては、首都圏からの転入者数については説明と一致するが、休日における滞在人口比率は説明とは全く異なる。その理由を伺う。

      ※「安心子育て環境づくり戦略」についてはその目標は概ね理解できる。

    3. 「快適で暮らしやすいまちづくり戦略」の基本目標について
       説明では、都市機能の集積と公共交通による連携、公共施設の統廃合をあげている。数値目標は市街化区域人口の比率、中心市街地の人口があげられており、都市機能、公共交通、公共施設とは全く異なる指標となっている。その理由を伺う。
    4. 「広域連携による地域づくり戦略」の基本目標について
       説明では、関係市町村等との連携による広域的な地域づくりをあげている。数値目標として「首都圏から東三河地域への転入者数」はわからないことはないが、なぜもう一つの数値目標が「東三河地域の製造品出荷額等」なのか。東三河の産業は製造業だけではないはずであり、なぜ製造品出荷額を指標とするのかわからない。その理由を伺う。

    【答弁要旨】
    1. (商業振興課) やりがいのある質の高い雇用とは、従業員にとっては、やりたいことがやれる自己実現だけでなく、家族を養うため、給料を稼ぐための働く場所があることであり、そのためには給料を払える、安定した雇用ができる企業があることです。
       そして、企業にとっては、グローバル化社会において直面するさまざまな状況や課題を乗り切っていける新たな価値観や創意工夫がもたらされる多彩な人材が揃い、活かされることです。
       こうした考えや質そのものを数値目標として掲げることは非常に難しいことから、数値目標に雇用保険の動向を使ったものです。
       なお、この雇用保険の動向は、総務省の労働力調査の雇用者数の約7割を占めるとされており、産業の雇用の動向をとらえるために有効な手法として厚生労働省も労働市場の分析に活用しているものです。
    2. (政策企画課) ひとの流れづくり戦略は、人口の維持さらには増加につながる人の流れをつくるための戦略であり、その基本的方向として、若者の地元定着、首都圏等からの移住促進に加え、交流人口の拡大を掲げています。
       人口減少対策として、直接的に移住や定住を促すことはもちろんのこと、そのきっかけとなる訪問、滞在を増やすことも重要です。
       休日における滞在人口率は、休日に2時間以上滞在した人口率を示すものであり、本市を訪れ滞在する人の状況、言わば、目下の人口だけでなく、将来的に本市への転入を促す取組みの成果を測るための指標として設定したものです。
    3. (都市計画課) 快適で暮らしやすいまちづくり戦略の基本目標の中で述べております「都市機能の集積と公共交通による連携」や「公共施設の統廃合」は、本戦略の具体的な施策を示したもので、これらに関する指標につきましては、できるだけ重要業績評価指標(KPI)として設定いたしました。
       本戦略の基本目標は、こうした具体的な施策やアクションプランに掲げております事業を進めることにより、「コンパクトで利便性の高いまち」を目指すこととしておりますので、時代に適応したコンパクトなまちを示す象徴的な数値目標として、「総人口のうち市街化区域人口が占める割合」や「中心市街地の人口」を設定したものでございます。
    4. (政策企画課)広域連携による地域づくり戦略は、東三河が魅力と活力に満ちた地域になることを目指すもので、ひとつの広域的な経済生活圏として人、物、資金を呼び込み価値を創造する、そうした産業活動を最も端的に表すのが製造品出荷額等だと考えています。
       鉱工業生産はもちろん、設備投資にも関係しますし、物流や対事業所サービス業など関連業種も多く、さらには広域幹線道路や三河港など産業基盤整備の状況もこの指標に一定影響を及ぼすと思います。
       こうした考え方から、東三河の産業経済を推し量るのに適していると考え、指標として製造品出荷額等を設定したものです。

    【2回目質問】

    1. 「活力あるしごとづくり戦略」について、従業員にとってのやりがいのある質の高い雇用とは、自己実現できることと一定水準以上の所得が得られる雇用という趣旨のことを言われた。活力あるしごとについて、このように解釈することは適切であると考える。しかし、そのことを数値目標とすることは非常に難しいということも言われた。
       確かに、自己実現できる職場の増減を数値で図ることは難しいと思われる。しかし、所得については数値で把握可能なものである。例えば、本市の被雇用者の平均賃金額あるいは全国との比較値を目標として設定するということは可能なのではないのか?
       単純に雇用数の増加だけを見るというのではなく、活力あるしごととは何かを積極的に追求し、それを表す数値を目標とする必要があると考える。仕事の量だけではなく、質を重視することが必要という意味で申し上げている。このことに対する認識を伺う。
    2. 「ひとの流れづくり戦略」について、豊橋で育ったあるいは学んだ若者の転出を抑えるということが数値目標になっていないということについては、「ひとの流れづくり戦略」では若者の地元定着、首都圏からの移住促進に加え、交流人口の拡大を掲げている、だから指標として「休日における滞在人口率」を選択したとのお答えだった。
       しかし、説明にある若者の地元定着は重要な課題であり、数値目標を設定する必要があり適切であると考える。そういう意味ではKPIに示されている、15歳から24歳の市民の人口移動の数値を基本目標とする方がわかりやすいと思うが、見解の相違ということになると思うので、この件については終わる。
    3. 「快適で暮らしやすいまちづくり戦略」の基本目標に、説明にある都市機能、公共交通、公共施設の状況を直接示す指標が使われていないことについて、「これらについてはできるだけKPIとして設定した」とのお答えだった。
       確かに、KPIとして1日当たり公共交通利用者数が設定されているが、都市機能と公共交通の連携状態を示すものにはなっていないと思う。この基本目標については、山田委員の質疑に対して、相応しい指標について考えていきたいとの答弁があったので、今申し上げた点についても考慮していただくことを期待する。この件についても終わる。
    4. 「広域連携による地域づくり戦略」について、数値目標の一つに「東三河地域の製造品出荷額等」があげられていることについてお聞きした。答弁では、「産業活動を最も端的に表すのが製造品出荷額だと考える」ことによるとのことだった。
       確かに東三河における様々な産業の中で、製造業の生産額が突出しているということは間違いないと思う。しかし、全国でも有数の先進的農業そしてジオ・パークや伝統文化などの観光についても広域連携による発展への期待は大きいと考える。
       そこで2回目として、製造品出荷額だけでなく、東三河の総生産(GDP)を数値目標とする、あるいは製造品出荷額等に加えて農業産出額や観光客入込者数も数値目標に加えることなどを考えるべきではないかと思うが、このことに関する認識を伺う。
    【答弁要旨】
    1. 活力あるしごとづくり戦略に掲げた基本的方向を地域産業の活性化につなげた成果として、平均賃金額や全国との比較値を数値目標とすることは、国のまち・ひと・しごと創生総合戦略においても、賃金上昇率を参考指標としていることから、有効な指標であると考えます。
       しかしながら、こうした数値の基礎となる調査、例えば、厚生労働省の賃金構造基本統計調査などがありますが、こうした調査は都道府県単位のデータにとどまり、市単位でのデータがないこともあり指標としての採用は難しいのが実情です。
       こうしたことから、今回、雇用の確保という大きい視点から、数値目標を雇用増加数としたものですが、一方で委員ご指摘のとおり、雇用の質を重視した目標の見方もあることから、どういったものが指標になりうるか引き続き勉強し、検証、評価の中で表現できればと考えております。
    2. 終了
    3. 終了
    4. 基本目標に掲げる数値目標は、5つの戦略ごとの目標に掲げる以上、戦略の中味全体に関わりを持つ総合性のある指標でかつ、その進み具合の評価検証に活用していけるものであるべきと認識しています。このため、ご指摘の農業産出額と観光客入込数はその産業においては重要な意味を持つ指標ですが、そのような分野限定の色合いが強い指標を数値目標に加えることは考えていません。
       そういう意味では、東三河のGDPは、全産業の付加価値や市民所得の合計を測るもののため、大変有効な指標だと思います。しかし、その値が掲載される愛知県市町村民所得は、計測から2年遅れの公表となるため、直近の取組みの評価とはリンクせず数値目標には馴染まないと考え、数値目標には加えていません。
       このような観点から基本目標の数値目標を設定してきたものですが、その達成に向けては、東三河の地域分析を様々な角度から行う必要がありますので、ご指摘にありました値を含め、各種統計データの把握に努めていきたいと考えています。

    【まとめ】

    1. 「活力あるしごとづくり戦略」については、雇用の質を重視した目標ということについて、引き続き検討していただけるとのことであり、期待する。
    2. 終了
    3. 終了
    4. 「広域連携による地域づくり戦略」については、東三河のGDP値を目標にすることが望ましいが、データ公表に時間がかかるため製造品出荷額等を基本目標としつつも、各種統計データの把握に努めるとのことで、概ね理解した。

  2. 緩和策の目指す目標、適応策の目指す目標について
     この総合戦略は2060年における持続可能なまちづくりを実現するための、一里塚ともなるべきものと考えられる。そういう意味では、2060年の目指すべき状態を明らかにして、2019年における緩和策の目指す目標、2019年における適応策の目指す目標も明確にすべきではないかと考えるが、認識を伺う。

    【答弁要旨】
     将来の人口の維持に向けた緩和策と、現下の人口減少に対する適応策は、性質が違い、アプローチも異なるため、それぞれの塊で目標を示すべきとも思います。
     しかし、この2つは互いに影響を及ぼし合い、交わる部分も多いため、施策及びそれにひもづけられる事業の関係性が複雑になります。
     そうしたことから、5つの戦略ごとに区分し、取組みの成果を分かりやすく整理しながら推進することを優先したため、緩和策・適応策といった単位での目標は設定しておりません。
     しかしながら、2060年を展望した5年間の総合戦略でありますことから、その推進、評価・検証においては、個々の目標値の達成度を見るのみならず、そのままで将来の人口展望を達成できるかどうかといった視点を持ちながら取り組んでいきたいと考えています。

    【2回目質問】
     2060年に向けた一里塚となるように、2019年における緩和策や適応策のそれぞれの目標を明確にすべきではないかということに対して、その必要性がないわけではないが5つの戦略ごとの目指すべき成果を表現することを優先させたとのことだった。ただ、将来の人口展望を達成できるかという視点を持ちながら取り組みたいとのことだった。
     戦略の取り組み主体である行政の皆さんがそういう気持ちを持つことは大切だと思う。しかし、このことは行政だけが理解していればいいというものではないはずである。前回の委員会での答弁でも言われたように、市民の皆さんにも現状と課題の認識を共有していただくことが大切なことである。
     ところが、2019年までの取り組みが2060年の人口減少社会へのソフトランディングに向けて、順調に進展しているのか、あるいは不十分なのかということについて、市民の皆さんがこの戦略の推進の過程で理解しやすいものになっているとは言い難いと思う。沢山の指標を見て判断して下さいというのは無理がある。総合的な判断ができる指標を示してこそ市民の関心と理解は深まると考える。市民の理解を得やすくするために総合的な判断ができる指標づくりをすることについての認識を伺う。

    【答弁要旨】
     市民に分かりやすい総合的な指標づくりということと思いますが、総合戦略は、将来的な人口減少の緩和策から現下の人口減少への適応策まで、産業、交流、子育て、都市計画など、幅広い分野にわたる施策と数多くの事業で構成しているため、それらの成果及び目標の達成状況と、2060年の目指す人口33万人への進捗状況をひとつの指標に総合させることは困難です。
     しかしながら、総合戦略の成果向上を図り、5年後(2019年)の数値目標を達成し、2060年の目指す人口へ近づいていくには、何よりも市民の皆様のご理解が欠かせないと認識しています。
     基本目標、KPI以外の指標は考えておりませんが、市民の皆様に対しまして、総合戦略に位置づけた事業の検証結果とともに、基本目標とKPIの目標値に対する毎年の実績値の一覧表や、その時点での人口の現状や今後の見通しの分析結果を示すなど、様々な判断に使っていただけるよう、分かりやすく正確な情報提供に努めてまいります。

    【まとめ】
     市民の理解促進をはかるための戦略進捗状況を総合的に判断できる指標づくりということについては、困難とのことだった。
     人口減少下で自立的な行政を実現していくためには、前回の委員会で申し上げた財政のシミュレーションを行うことで、それを可能にするための制約条件が明らかになると考えられる。その制約条件の克服度合いは一つの判断指標になるものと考える。今後の検討に期待する。


戻る