2015年9月8日(火) 9月議会一般質問
青字は答弁
質問テーマ [地方債の推移と今後の目指すべき方向性][新たな行財政改革プランの目指す方向性]

地方債の推移と今後の目指すべき方向性

 本年2月、第5次豊橋市総合計画の平成27年度から29年度の実施計画が示された。この中には一般会計中期財政見通しが示されており、29年度末までの地方債年度末現在高の見通しも記載されている。地方債の期末現在高即ち期末残高は25年度末には1,057億円であり、29年度末には1,015億円となり約4%の減少となっている。
 ただ、ここでは地方債の種類別の内訳は示されておらず、建設地方債と臨時財政対策債がそれぞれどのように推移するかはわからない。目指すべき状態に向かって前進しているのかどうかが判断できないし、そもそも目指すべき状態も明確になっていない。
 地方債のあり方については、現世代と将来世代との負担の均衡、自立的な行政運営の確保の両面から考えることが必要だと考えるが、この二つの観点から地方債のあり方として今後の目指すべき方向について議論させていただきたい。
 そこで、以下、建設地方債と臨時財政対策債の2点について質問する。

  1. 建設地方債について
     建設地方債は地方財政法の第5条の規定を根拠に起債されるもので、投資的経費の財源となる。
     道路・橋梁、上下水道などのインフラや、学校、病院、市民館などの公共施設は、建設後数十年にわたり多くの市民が利用するものであり、受益者負担ということを考えれば、現世代がその建設費を全て負担するのは適切ではなく、将来世代も等しくその建設費を負担するべきもの。
     このことから、建設費を現世代も将来世代も等しく負担する方法として、地方債を財源として活用することは適切であると言える。
     近年の建設地方債年度末現在高の推移を見てみると、平成20年度末の約800億円から平成25年度末の約530億円へと約270億円も減少している。最近では建設事業でPFI方式がとられることが増えている。PFIによる将来世代負担はバランスシート上では長期未払金として計上されるが、この間の長期未払金の増加額は約140億円程度となっている。このことを考慮しても建設地方債の減少は顕著な傾向を示していると言える。
     これらを踏まえて建設地方債について3点伺う。
    1. 投資的事業における現世代と将来世代の負担のあり方に対する考え方について
    2. 近年、建設地方債の年度末現在高を大幅に減少させている考え方について
    3. 28年度中の策定を目指している公共施設等総合管理計画の実施に伴う建設地方債起債額への影響について

    【答弁要旨】
    1. 道路などのインフラ資産や学校などの公共施設は建設後、将来にわたって利用していただくものであり、世代間の公平性の観点において、将来世代も応分の負担を担っていただく、市債発行はそうした大きな意義を持つものと考えています。
       なお、そのような市債発行にあたりましては、現世代と将来世代の負担のバランスを十分に考慮するとともに、過度な将来世代への負担の先送りとならないよう、計画的な借入れ・償還に努めなくてはならないものと認識しています。
    2. 市債の発行は、将来世代の負担につながるものでもありますので、市債全体として残高を増やさないよう計画的な借入れを行ってきています。
       また、最近は過去借入の償還が進むとともに投資的事業自体が減少してきていること、また、近年の大型施設整備においてはPFIの導入が図られてきており、PFI事業では建設時に市債の借入を伴わないといった要因により、建設地方債の残高が減少してきたものと考えています。
    3. 「豊橋市ファシリティマネジメント推進基本方針」に従い、既存施設の老朽化へ対応するため、計画的な施設保全により、公共施設の長寿命化を図るとともに財政負担の軽減に努めていますが、施設全体の老朽化を迎え、すべての施設の維持管理、更新を実施していくには多額の費用負担が見込まれています。
       財政負担の平準化を図る上でも、建設地方債の活用は必要であり、起債額の増加も想定されるところですが、市債の全体額や実質公債費比率等の指標に配慮し、健全財政を堅持しながら、適切な借入れを行っていきます。
       現在、これからの公共施設等をどのように管理していくのか、その方向性を定める「公共施設等総合管理計画」を策定中であり、将来的における施設の維持管理費・更新費に要する費用の縮減と市債借入の抑制といった観点も持ちつつ、公共施設等の最適化の検討を進めていきたいと考えています。

    【2回目質問】

    1. 投資的事業における現世代と将来世代の負担のあり方について、世代間の公平性を図るための財源として市債を活用するという認識を持っているとのことだった。また、過度な将来世代への負担の先送りにならないよう努めているとも言われた。必要な考え方だと思う。
       現状では、市債の大半は20年償還となっている。一方、建物などの公共施設や道路・橋梁などのインフラについては、耐用年数が30年あるいは50年というものが多く含まれている。このことは例えば50年使える公共施設等を建設後20年間の市民が負担するということになっている。その結果、残りの30年間の市民は当該施設等を無料で使用しているということになる。これでは世代間の公平性が図られているということにはならないはず。
       このことに対して2回目の質問として、世代間の負担の公平性を図るため、補完的にどのような方策を考えているのか、認識を伺う。
    2. 建設地方債の残高が減少していることについては、過去の借入の償還が進むとともに投資的事業自体が減少している、大型施設整備においてはPFIの導入が図られていることなどを、その理由として答弁があった。
       投資的事業自体が減少しているということだが、一方で、資産老朽化比率は右肩上がりで増加している。平成20年度末で36.0%だったものが、25年度末には43.4%となり、5年間で7.4%も上昇している。
       資産の老朽化比率の上昇を食い止め、将来負担の平準化をする方策として公共施設等総合管理計画の検討が行われている。施設更新負担を先送りすることがないように、早急かつ十分な検討を期待する。 ((B)については終わる。)
    3. 公共施設等総合管理計画の実施に伴う建設地方債起債額への影響については、今後、多額の費用の発生が見込まれ、建設地方債起債額の増加も想定される、とのことだった。また、施設の維持管理・更新に要する費用の縮減と市債借入の抑制といった観点を持って、公共施設等の最適化の検討をするとも言われた。
       施設の維持管理・更新に要する費用の縮減と市債借入の抑制の観点を持った、公共施設等の最適化は大変重要なことであると思う。将来世代の負担が過度にならないような計画とすることを考えなければならない。
       そのためには、財政部門がまず将来世代が負担可能な公債費の額を示すことが必要となる。本市は既に人口減少傾向に入っており、公共施設等総合管理計画の最終年度となる2040年度には、高位推移による推計でも人口は35万4千人になる見通しとなっている。約6%の人口減少ということになる。
       将来世代の負担ということについては、市民全員という視点ばかりでなく、市民一人当たりの公債費負担を考えなければならない。公共施設等総合管理計画の策定に当たっては、既にそのことを考えた上で検討が進められていることと思う。
       そこで、2回目として、将来世代の市民一人当たり公債費負担を過度にしないために、公共施設等総合管理計画の最終年度における建設地方債の残高をどの程度とすべきか、またそのことから計算して2040年度末における減価償却の対象となる固定資産の総額をどの程度とすべきか、それぞれについて考えを伺う。
    【答弁要旨】
    1. 地方債の償還期間につきましては、起債対象施設の耐用年数の範囲内の期間を原則として、財政融資資金を始めとした、各借入先の融資条件に基づき設定することとなっております。
       本市の借入方針といたしましては、そのような地方債の仕組みの中で、将来世代の過度な負担とならないよう配慮しながら、各年度の公債費負担を平準化するよう借入れを計画的に行うことで、将来にわたって、世代間の公平性の確保に努めているものでございます。
    2. 終了
    3. 公共施設等総合管理計画の最終年度は2040年度を想定していますので、今から25年後の2040年における考え方ということについては、公共施設等総合管理計画が個別施設ごとの統廃合や再配置を定めた計画というものではなく、施設類型別に、例えば建物だとか、インフラだとか、そういった類型別にどのような管理をしていくべきかという方向性を定めるもので、施設ごとの統廃合については、その方向性をもとに総合管理計画後に検討していくものです。
       従って、現時点で各施設の行動計画が定まっておらず、また、コンパクトシティを目指して、現在策定が検討されている立地適正化計画においても、都市機能の誘導区域がどのように変わるのか、設定されるのかというようなことによっても、公共施設の再配置なども検討されることになるので、こうした状況の中で現時点では、ご質問の考え方については、特段こうした考え方というように言えるものは持ち合わせていません。

    【まとめ】
     建設地方債について、(A)の耐用年数と負債の償還期間のずれの補正策としては、公債費負担の平準化を考えるとのことだった。多分、それが適切だと思うが、そこになんの便益も伴わない臨財債の償還負担が多くなると、公共施設等の世代間負担のバランスが崩れるということは考えるべきだと思う。
     (C)の将来世代の一人当たり公債費負担を大きくしないための、減価償却の対象となる固定資産の適正額というのは容易に出せないということだった。確かに難しいことではあるが、(A)の1回目で言われた、公債費負担の平準化のためには把握しておかなければならないことである。今後の検討を期待する。

  2. 臨時財政対策債について

     臨時財政対策債は国の地方交付税の財源不足により、平成13年度から臨時的な措置として導入された地方債。しかし、当面の国の財政状況を見る限り、簡単には財源不足額の全額が地方交付税支給されるということは予想しがたい。
     本市においては毎年数十億円の期末現在高の増加があり、平成20年度末の約225億円から平成25年度末には約410億円にまでなっている。
     そもそも臨時財政対策債の性格は、現世代が必要とする経常経費を借金で賄うというものであり、言い換えれば将来世代に現世代の必要経費を負担してもらっているということになるもの。
     また、臨時財政対策債の元利償還については国が責任を持つと言われてはいるが、財源不足額の計算の際に基準財政需要額に算入するというものであり、財源不足額がない、即ち普通交付税の不交付団体になった時には、全て市が返済に責任を負わなくてはならなくものでもある。
     一方、臨時財政対策債の起債を抑制すれば、歳入総額が減少することにより経常収支比率が上昇し、財政の自由度が低下するという当面の問題も生じる。
     これらを踏まえて臨時財政対策債について2点伺う。
    1. 臨時財政対策債の起債を抑制することなく起債限度額まで起債し、期末現在高が400億円を超える状態になっていることの要因の認識について
    2. 新行財政改革プランやまち・ひと・しごと創生総合戦略の実施に伴う臨時財政対策債起債額への効果について

    【答弁要旨】
    1. 臨時財政対策債は、国の財源不足により普通交付税の振替措置となっているものであり、後年度に元利償還金の全額が交付税措置されることから、大幅な税収が見込みにくい歳入環境や社会保障関係経費など義務的経費の増など、本市の厳しい財政状況を踏まえまして、起債限度額まで借入れを行っているものです。
       一方、市債全体の残高としては、建設地方債残高の減少により、平成20年度から平成25年度にかけ全会計で2,004億円から1,743億円へと減少しており、臨時財政対策債だけでなく市債全体を見据え、将来世代に過度な負担を与えないよう、残高の抑制に努めているものです。
    2. いずれも現在策定中の計画等でありますが、策定後におきましては、これまで以上に持続可能な行財政運営の確立を図るとともに、豊橋の創生に向けての少子化対策や地域活性化に一丸となって取り組む諸施策の推進を図っていくこととなります。
       財政面におきましては、これらの計画に基づき、スクラップ&ビルドの更なる徹底といった歳出見直しの取組みや税源涵養による歳入増の取組みなどの推進を通じ、収支改善効果が創出され、臨時財政対策債の発行減少にも繋がっていくものと認識しています。
       しかしながら、当面の間は厳しい財政状況が見込まれますので、自立的な行政運営を財政面から支える財源確保を図るため、地方財政計画の動向を踏まえる中で、引き続き臨時財政対策債の適切な活用が必要となるものと考えています。

    【2回目質問】

    1. 臨財債の残高が400億円を超える状態になっている要因としては、社会保障関係経費などの増加など厳しい財政状況を踏まえ、起債限度額まで借り入れを行っている結果であるとのことだった。
       臨財債による借入をしなければならないのは、厳しい財政状況があるからと言われるが、厳しい財政状況にあるからこそ臨財債が必要となっているのであり、当然のことと言える。
       しかし、他の自治体の中には、岐阜市、浜松市では起債限度額の8割に起債を抑えているし、豊田市でも抑制するということに取り組んでいる。本市においても起債額の抑制に向けて努力する余地はあると思う。是非、このことには取り組んでいただくことを期待する。
       また、臨時財政対策債だけでなく市債全体を見据え、残高の抑制に努めているということも言われた。このことについては大いに違和感を覚えるので、さらに2点について伺う。
       まず、将来世代も利用可能な公共資産を伴う建設地方債と、なんら将来世代の便益を伴わない臨時財政対策債を同列にとらえ、総額で管理していくというのはおかしいのではないか? 臨時財政対策債は償還に国が責任を持つということになっている。しかし、普通交付税の不交付団体になった時点でこの負債は全額、市が償還に責任を負わなければならなくなる。
       こうした将来世代の財源をあらかじめ使ってしまうという性格の負債は、建設地方債とは分離して残高の削減に最大限の努力をすべきものではないかと考えるが、このことについての認識を伺う。
       次に、公共施設等総合管理計画により建設地方債の残高は増加することが予想されるということを言われた。
       臨財債については、平成13年度から始まり、平成26年度末にはその残高は約420億円になっている。償還については、3年据え置きで20年償還ということになっている。今の答弁では、臨時財政対策債については、今後も活用を続けるということを言われた。これらを考え合わせると、平成36年度末までは残高は増加を続けることになる。
       平成13年度から26年度までの14年間で臨財債残高は420億円になっており、同じペースで増加を続ければ平成36年度には740億円を超えることになる。過去14年間には不交付団体であった時期があることを考えれば、この金額はもっと増えることも考えられる。
       建設地方債残高の一定水準への増加、臨財債の右肩上がりの残高の増加が予想される中で、その総額を抑制するということがどうして可能なのか、考え方を伺う。
    2. 新行財政改革プランやまち・ひと・しごと創生総合戦略の実施に伴う臨財債への効果については、収支改善効果が創出され、臨財債の発行減少につながるとの認識だった。ただ、自立的な行政運営の財源確保のため、引き続き臨財債の活用は必要であるとも言われた。
       自立的な行政運営の財源確保と言われるが、現世代はそれでいいかもしれないが、将来世代にとっての自立的な行政運営に必要な財源を奪ってしまうということになり兼ねないものであるということは忘れてはならないことだと思う。このことを考えれば、臨財債の残高を減らしていくことは是非考えなければならない。
       新行財政改革プランやまち・ひと・しごと創生総合戦略により臨財債の起債減少につながると言われるが、どちらも計画ができるまではその具体的な効果額は不明な状態にある。
       そこで2回目として、臨財債の残高をどのように減らしていくかという財政計画を先行して明確にし、それを実現するために新行財政改革プランやまち・ひと・しごと創生総合戦略の目標値を定めていくという手順とすべきと考えるが、認識を伺う。持続可能な行政運営を確実に行うために、必要なことのはず。
    【答弁要旨】
    1. 建設地方債と臨時財政対策債は、いずれも市の借金であり、当然ながら将来の財源で返済することに変わりありませんので、償還能力に応じた借入れを行わなければならないと考えています。
       建設地方債につきましては、投資的事業の事業費の増減を平準化する観点から、適切な借り入れを継続して行っていくことが重要でありますし、臨時財政対策債は毎年度の財政状況に応じて、発行可能額の範囲内、こうした借り入れのことについてもいろいろ検討し、可能であれば、こうしたことにより縮減と、削減ということも可能であると考えています。
    2. 質問の趣旨は行革とか総合戦略を策定する際の前提となる財政計画を立てる際に、臨財債の残高をこれだけ減らすというような設定条件というか、目標を掲げた財政計画を立てて、その収支不足に陥れば行革をするとか、あるいは財源関与の総合戦略を行うとか、そういったことに取り組んで、手順として考えてはどうかということではないかと思いますが、これまでいろいろお答えさせていただいたように、今後の本市における歳入面の大幅な税収増が見込まれず、また義務的経費も増大するという大変厳しい財政状況を考えますと、いろいろな先行自治体のことも教えていただきましたが、まだまだ財政状況については、不安な要素がありますので、そうした状況の中で臨財債の残高を減少させるということを前提とした財政計画を立てた手順、計画ということは今の時期では考えていない状況です。

    【まとめ】
     「建設地方債と臨時財政対策債は、いずれも市の借金であり、将来の財源で返済することに変わりない」だから「一体的な抑制に努めていくことが適切」との答弁だった。しかし、建設地方債の残高は今より高い水準にすべきであり、臨財債は適切に活用するということなのでその残高は右肩上がりとなる中で、地方債の総額を抑制することは可能かということについては、答弁で明確にされることはなかった。
     一体的な抑制に努めていくことが適切ということを言われたが、中期財政見通しでは、今よりさらに公債費比率が低くなるとしている。1.(A)の2回目で言われた公債費負担の平準化を考えた時、公債費比率をドンドン下げればいいということにはならないはずである。現在の本市の実質公債費比率は、国の定める早期健全化基準と比べても、決して心配する程高いものではないということを考えると、ドンドン下げることを考えるより、適正な額はどこかということを見定める、そのことが大事ではないかと考える。
     そして、残高を今より高い水準に安定させるべきである建設地方債と、できるだけ残高を小さくしたい臨財債、この二つの目指すべき状態の異なる地方債を、一体的にしかも抑制するというのは不適切なことなのではないか。建設地方債をどこまで増やすかということをきちんと見定めること、臨時財政対策債については抑制を徹底して図っていくということ、こういうふたつのものということで管理をしていくということが大切だと思う。
     建設地方債の抑制によって資産の老朽化が進むことがないように、しっかりとした計画策定と実行を期待する。

    新たな行財政改革プランの目指す方向性

    【1回目質問】
     現在の行財政改革プランは、「多様な主体との協働・連携を通じた『豊橋の活力』の向上」を目的に、平成23年度から27年度までの5年間にわたりその取組が行われてきた。厳しい財政状況打開に向けて積極的に対応しようとする姿勢は評価したいと思う。
     本年度その計画期間が終了することから、現在、新たな行財政改革プランの検討が行われている。プランの実効性を高めていくためには、しっかりPDCAを回していくことが大切であり、その出発点となる計画の目標を適切に定めることが成否を左右する重要なポイントとなる。
     現行プランにおいては、数値目標を「財政指標」「行政体制に関する指標」「共同の取組に関する指標」「経済的効果に関する指標」の4点掲げている。このことを中心に新たな行財政改革プランの考え方について議論したい。
     そこで、以下の点について質問する。

    1. 財政指標として、経常収支比率85%達成を掲げたことの成果と課題について
    2. 行政体制に関する指標として、普通会計部門の定員を9.4%減としたことの成果と課題について
    3. 協働の取組に関する指標として、新規に取り組んだ協働事業数を5年間延125件としたことの成果と課題について
    4. 経済的効果に関する指標として、歳入・歳出の見直しによる経済的効果額を5年間の累積で70億円としたことの成果と課題について

    【答弁要旨】

    1. 現行の行財政改革プランの策定時点平成22年度の同比率は85.5%でしたので、財政運営の自立性・健全性の確保のため、過去の経常収支比率の推移や将来見通しを踏まえ、85%を目標に掲げました。
       成果としては、社会保障関係経費等が増加する中、目標達成に向け、給料表や各種手当の見直しなど総人件費の抑制、業務改善などを通じた改革改善の実施、スクラップ&ビルドの考えに基づく事業の選択と重点化などを進めることができました。
       課題としては、財政運営の自立性・健全性を図る指標としての経常収支比率は、歳入では普通交付税の減や臨時財政対策債の発行、歳出では消費税率の引き上げなどによる増など、行財政改革プランの取組にもかかわらず、経済情勢などの影響で数値が大きく変化することが、目標達成の評価をわかりにくくしている点が挙げられます。
       今後、取り組みで努力した結果が、よりわかりやすく市民に説明可能な指標の設定、進捗管理や、経済情勢などにより大きく変化することがない指標について検討をする必要があると考えています。
    2. 最小の経費で最大の効果をあげるという行政運営の原則のもと、普通会計部門等において210人減の目標を掲げました。 成果としては、事務事業についての不断の点検、整理、サンセット方式の徹底、業務執行体制の見直しに伴う民間委託や多様な任用形態の活用などにより、計画を着実に推進するとともに、プランになかった減員も行うことで当初目標を上回る減員を見込んでいます。一方で、東日本大震災に係る被災自治体への職員派遣や消防力の強化・充実など、プラン策定後の新たな行政需要に対応した増員も行ってきましたが、職員総数としては、中核市の中でも上位となる効率的な職員体制を維持することができています。
       課題としては、「地方創生」をキーワードとする新たな施策にも的確に対応するため、マンパワーの充実が少なからず必要となると考えられることから、業務量の的確な把握と、効率的、効果的な人員配置を徹底するとともに、職員の能力を十分に発揮できる職場環境づくりにも意を用いた指標や目標値の設定が必要であると認識しています。
    3. 現行の行財政改革プランでは、様々な身近な地域の課題に対して、自らが暮らす地域は自らの責任でつくるという自立した地域づくりが必要との考えから、市民との協働を重視しており、その進捗度合いを測る指標として、新規に取り組んだ協働事業数を設定しました。
       成果としては、住みよい暮らしづくり計画、健康のまちづくり事業など自治会を中心とした地域との連携による事業拡大や、公共交通空白地域におけるコミュニティバスの運行検証、利用促進策の実施など地域運営団体との協働などにより、地域コミュニティにおける取組が進みました。
       目標は未達成の見込みですが、地域コミュニティなどと課題や情報を共有し、連携して事業を進めるなど効果的な支援を行うことで協働推進体制の強化を図ることができました。
       今後の課題としては、取り組みの継続や深化が重要な要素であると考えています。
    4. 財政運営の自立性・健全性の確保のため、新たな行政需要への対応による歳出増を見据え、市債や基金の計画的な利用や行政執行の見直しと効率化の徹底による一定の財源確保が必要との考えから、現プランの取組では、新たな歳入の確保、あるいは様々な主体との協働・連携を含めた事業のあり方や進め方の見直しによる事業費の抑制や定員の抑制などから生まれる歳出の抑制による5年間の累積額で70億円を目標として掲げました。
       成果として、過去に借りた高利率の地方債を低利のものへ借り換えるなど、歳出の抑制に努めたほか、市有地における未利用地の売却促進や市ホームページなどへのバナー広告の拡大や各施設における新たな収入確保の取組を進めるなど、計画を上回る経済的効果額を得ることができる見込みです。
       課題としては、新たな行政需要や、第5次総合計画推進のため、経済効果額による一定の財源確保を考えていますが、財政運営の健全性・持続可能性の確保の観点から、次期プランにおいて経済効果額を含めた指標の設定について検討する必要があると考えています。

    【2回目質問】

    1. 効果として、総人件費の抑制、業務改善、事業の選択と集中などをあげていただいた。しかし、経常収支比率の推移を見てみると、23年度86.8%、24年度89.5%、25年度86.9%、26年度89.0%であり、22年度の85.5%より悪い値となっている。多くの成果があったとする答弁とは異なる指標の値の推移となっている。
       その原因はこの指標の分母が経常一般財源総額となっていることに起因していると考えられる。経常一般財源総額には、普通地方交付税、臨時財政対策債も含まれることになる。因みに、普通交付税と臨財債の合計額は、23年度85億円、24年度77億円、25年度84億円、26年度63億円であり、経常収支比率の値とは逆相関の関係が見てとれる。
       普通地方交付税と臨時財政対策債の合計額は、基準財政需要額から基準財政収入額を差し引いた財源不足額により概ね算出されるものである。つまり、財源不足額が大きくなると経常収支比率が改善されるという結果になってしまっていると言える。
       分子については経常経費充当一般財源となっているが、これには減価償却費が含まれていない。今後、固定資産の更新を確実に行っていく財源を確保するためには減価償却費を把握し、それに見合った蓄積を確保していくことをしっかり考えておかなければならない。
       課題として、経済情勢の影響により目標達成の評価をわかりにくくしている、ということを言われた。財政の自由度を確保するということのためには、「指標を検討する必要がある」という認識には期待する。
       そこで2回目として、財政の硬直度を示す独自の新たな指標をつくる考えについて認識を伺う。例えば、経常収支比率の分子として減価償却費を含む数値として純経常行政コストとし、分母については経常一般財源総額から普通交付税と臨時財政対策債の値を差し引いた値とすることなどが考えられる。
    2. 成果として中核市の中でも上位となる効率的な職員体制を維持することができているとのことだった。課題としては、効率的・効果的な人員配置、職員の能力を十分に発揮できる職場環境づくりにも意を用いた指標が必要との認識だった。
       ここで言われている定員は正規職員の数であり、アルバイト・嘱託などは含まない。さらにそのことにより市民サービスの低下が生じていないか、ということもわからない。大切なことは、定員削減を補って余りある生産性の向上、あるいはマネジメント力の強化がなされているのかどうかにある。
       そこで2回目として、定員削減の際に当該部署における生産性向上の方策の確認をすること、あるいは非正規の職員に置き換える時にはマネジメント力強化の方策の確認は行われているのか、また、今後そういったことを行うことの必要性の認識について伺う。このことが課題で言われていることの対応策ということになるのではないかと思う。
    3. 協働の成果について、目標は未達の見込みだが協働推進体制の強化を図ることができた、ということだった。問題はその協働推進体制の強化が必要とされる程度に達していたかどうか、ということにあるはずだが、それがわからない。そもそも協働推進体制をどの程度必要としているのかもわからない。
       課題としては、取り組み継続や深化も重要要素であると考えているとのことだった。
       そもそも、この指標を必要としているのは、二つの視点の一つ「地域力」における基本方針「市民等の公益的な地域活動の推進」の達成度合いを把握するためと考えられる。であるならば、自治会の活動に焦点を絞った指標が最も適切なのではないか?
       そこで2回目として、協働の進捗度合いを把握するための指標としては、自治会加入率などが考えられるが、このことについて認識を伺う。
    4. 経済的効果の目標を5年間の累積で70億円としたことの効果については、歳出抑制や新たな収入確保により、計画を上回る経済的効果額を得ることができる見込みであるとのことだった。
       課題としては、財政運営の健全性・持続可能性の確保の観点から、経済効果額を含めた指標の設定を検討する必要があるとのことだった。
       ただ、そもそもなぜ5年間の累積経済的効果の目標を70億円にしたのかが分からない。5年間の累積額が70億円になるためには、単純計算をすれば毎年約4.7億円ずつ収支差額の改善をするということであり、平成23年度期首の収支差額に比べて平成27年度期末の収支差が約24億円改善されているということになる。この数値を必要とする根拠がどこにあるのかが明確でない。
       そこで2回目として、財政運営の健全性・持続可能性の確保をするためには、財政におけるどの数値がどういう値であることが必要と考えるかについて、認識を伺う。特に統一的基準による新しい公会計の数値も含めての考えを聞かせていただきたい。
       また、経済的効果を上げるための重要な視点として、補助金や他会計操出金の見直しは重要な要素であると考えるが、そのことについて言及がされなかった。補助金や他会計操出金の見直しについて、どのように認識しているかを伺う。

    【答弁要旨】

    1. 財政の硬直度を測る指標としての経常収支比率は、広く全国の地方自治体で使われており、他自治体との比較・検証が可能であることは、指標として重要であると考えています。
       平成28年度決算から作成される地方公会計の新基準では、比較可能性の確保の観点から、全国統一的な基準を採用するよう求めており、財政の硬直度の指標についても、他自治体や国の動向を注視しながら、検討をしていきたいと考えています。
    2. 定員削減に際しましては、市民サービスの低下を招かないことを前提に見直しを進めています。例えば正規職員を嘱託職員に置き換える場合には、当該職場において嘱託職員に任せる業務量や業務に伴う責任の程度を精査し、適正な業務配分であるか確認した上で判断しています。また、他の正規職員が政策の立案、推進などの面でより力を発揮できるような体制となるかという視点も持ちながら、効率的な業務執行体制となるよう努めています。
       さらに、嘱託職員に業務を任せる場合には、管理職の指導のもと直属の主査が中心となり、マネジメントを意識して業務の進捗管理や成果の確認を行いながら、組織全体で事務事業の効率化と行政サービスの質の維持、向上を図っているところです。
       いずれにしても、組織の業務目標に対する個々の職員の役割と達成した成果を明確化することが、さらなる公務能率の向上につながると考えていますので、今後においても人事管理制度の充実に努めていきたいと考えています。
    3. 新たなプランにおいては、「選ばれ、住み続けたくなるまちづくり」を目指し、自治会、NPO、企業、行政など多様な主体が連携し、パートナーシップを深化させ、それぞれがまちづくりの主役となる協働によるまちづくりを進めていきたいと考えており、市民協働の進捗度をみる指標は、新たなプランの成果、進捗度を見る上で重要な役割を担っています。
       自治会加入率について、自治会は防犯、防災、交通安全をはじめ多くの地域における公益活動を担っていただいているところであり、住民の自治会への加入は、地域活動に参加するきっかけとなることも考えられることなど、その加入率は住民の交流や繋がりの度合い、参画を図る一つのバロメータになるとも考えられます。
       新たなプランの指標については、様々な角度から評価・検証できる複数の指標設定についても視野に入れていきたいと考えています。
    4. 財政の健全性・持続可能性は、資産と負債、借入と償還のバランスがとれているかという視点が重要であります。
       新たな統一的な基準による地方公会計の財務諸表では、財政の健全性・持続可能性を図る指標として、例えば「地方債の償還可能年数」や「住民一人当たりの負債額」など、他地方自治体と比較可能な形で利用できるようになります。このような財政指標につきましては、国においても今後の活用事例等を踏まえマニュアル等の充実を図っていくこととしており、その動向を注視しながら、平成28年度決算に向けて勉強してまいりたいと考えております。

    【まとめ】
     社会の高齢化に伴う扶助費の増、インフラを含む公共施設の老朽化への対応等を可能とするため、新しい行財政改革プランについては、しっかりとした目標を立て、持続可能なまちづくりに貢献することを大いに期待する。
     今日、是非申し上げたかった大切なことは、持続可能なまちづくりをしていくということについては、まず自立的なまちを運営できる財政計画を立て、それに基づいていろいろな計画を立てていく、これが重要であろうということ。ご検討いただきたい。


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