2015年8月26日(水) 環境経済委員会
青字は答弁
質問テーマ [新しい産業戦略プランの考え方について]

新しい産業戦略プランの考え方について

 平成23年からスタートした現在の産業戦略プランは、平成27年度に終了する。28年度からの新しい産業戦略プラン作成に向けて、産業戦略プラン進捗状況報告書と新しい産業戦略プラン骨子が作成され、これら資料に基づき議論が行われた。

  1. 指標のあり方について
     進捗状況報告書には産業集積戦略について取組みの進捗状況が記載されている。その中の重点プロジェクト@として産業集積促進プロジェクトについて評価が記載されており、各項目の評価は「計画どおり」または「概ね計画どおり」とされている。P.15に示されているようにそれぞれの事業が概ね行われたということだと思う。
     しかし、新産業の方向性は見えてきたのか、あるいは広域連携による企業誘致活動による新規立地の見通しができたのか、についてはわからない。三河港に関連することについてはp.15に成果の記載があるが、それ以外については成果がどれほどになったのかが見えない。
     本来、そこが最も重要な部分であり、進捗状況を明確にすることが大切だと考える。そういう意味で、今回の指標の設定のあり方について、課題をどのように把握し、新しいプランにおける指標設定をどのように考えているのかについて伺う。

    【答弁要旨】
     現行の戦略プランでは、基本理念に掲げた産業の姿を実現するための四つの総合的な産業戦略目標及び実践的な活動方針である五つの戦略について、それぞれ目標指標を掲げて取り組んできました。
     総合的な目標指標はアウトカム指標を設定した一方で、戦略ごとの目標指標にはアウトプット指標が多く含まれています。
     事業の進捗管理を行う上では、アウトプット指標が有効ですが、戦略の成果を把握する上ではアウトプット指標より、アウトカム指標が有効であると考えています。
     目標指標は、事業の進捗管理と戦略の成果を図る上で、大変重要なものであると認識しており、今後、重点プロジェクト等を掲げる中で、成果を適切に評価でき、かつ市民に分かりやすいものとなるよう検討をしていきたいと考えています。

    【2回目質問】
     指標のあり方について、現プランにおいては、総合的な目標はアウトカム指標に、戦略ごとの目標指標にはアウトプット指標とすることが有効であるという考えだったとのこと。
     しかしこれでは、総合的な指標に対する結果が出た時に、その原因がどの戦略がどのような影響を及ぼした結果によるものなのかがわからない。プランの総括で示されている「目標の達成状況」の表では、いずれも目標値には達していないが、その理由は「社会経済情勢の影響」ということにとどまり、戦略の適否の判断に至っていない。
     どの戦略に効果があったのか、どの戦略に問題があったのかを判断できるようにすることが、次の戦略を考えていく際に大変重要な情報になるはず。戦略の進捗状況を把握するために、アウトプット指標を置くことはいいとしても、それだけにしたのではこの重要な情報が得られなくなってしまう。
     そこで2回目として、どの戦略の成果が総合的な成果にどのような影響を及ぼしたのかを判断できるように、個別戦略のアウトカム指標と総合的なアウトカム指標を関連付けできるような目標設定を考えるべきではないかと考えるが、認識を伺う。

    【答弁要旨】
     議員ご指摘のとおり、個別戦略と総合的な目標指標を結びつける目標設定は、戦略を推進するうえで大変重要なことであると認識していますが、特に産業分野においては企業が事業主体となることから、社会経済情勢の影響を強く受けるような指標も多くあるなど、理想的な指標の設定は大変難しいものであると考えています。
     いずれにしましても、個別戦略の成果と総合的な成果との関連付けができる指標を設定することは、プロジェクトの経済効果を把握し、実効性のある産業振興施策の立案に効果的であると考えます。
     目標指標の設定にあたっては、このような点に留意しながら、検討を進めてまいりたいと考えております。

  2. 三つの基本方針について
     プラン骨子には、現行プランにはなく新プランで新たに加えられた、三つの基本方針が示されている。それぞれの方針について伺う。
    1. 新産業の創出について
       産学官連携や異業種連携による新技術の開発やサービス分野における新たな価値創造ということが記載されている。この表現だけ見ると、他の地域でも同じようなことを言っているように思われる。
       当地域として独自性を発揮することが他地域の追随を許さない新産業の確立につながるのではないか? 当地域の独自性を発揮し得る資源についてどのような認識を持っているのかについて伺う。

      【答弁要旨】
       本市には、独自の高度な技術・ノウハウに裏打ちされたものづくりをする事業者が多数集積しています。ものづくりが盛んな市内において、幅広い業種がバランスよく集積していることは大きな特徴であり、異業種連携に取り組む上では強みとなります。
       また、豊橋技術科学大学があり、これまで企業の技術開発のため多くの共同研究がなされ、サイエンス・クリエイトや金融機関等の支援体制があることも強みと考えています。さらに、全国有数の農業地域であり、農業関連事業者、農業者が有する技術・ノウハウも全国有数のものとなっています。先進的なものづくり技術を農業関係にも活かすことができる環境にあると認識しており、事業者や農業者のニーズを把握しながら、技術シーズとのマッチングにより、新技術の開発、新産業の創出に取り組んでまいりたいと考えています。

      【2回目質問】
       当地域の独自性を発揮できる資源ということについて、多様なものづくり事業者の集積、豊橋技科大の存在、全国有数の農業地域であることなどをあげていただいた。
       もちろんこれらは大切な資源であることは間違いないが、未だ新産業の創出ということについては十分な成果を生み出す状況には至っていない。
       そこで、今、言われたことの他に、この地域にはトヨタ生産方式を経験した人が多くいるということも重要な資源と考えるべきではないのか?トヨタ生産方式とはジャスト・イン・タイムとニンベンの付く自働化を柱とし、徹底的に無駄を省くという考え方によるもの。
       この考え方は、ものづくりに限らず農業やサービス業など様々なビジネスにも活用が可能だと思う。この地域にはこのトヨタ生産方式を経験した人が多くいる。
       トヨタ生産システムの他業種への導入ということも基本方針1の中に入れていくことが有意義ではないかと考える。このことについての認識を伺う。

      【答弁要旨】
       農業やサービス業など、非製造業分野では、製造業と比較して生産性向上の余地が大きく残されていると認識しています。このため、基本方針1では、「ロボットなどの技術開発を行いサービス分野における新たな価値の創造」により新産業を創出することを位置付けており、農業やサービス業など非製造分野での生産性向上につながる取組みも想定しています。
       また、プランの推進にあたっては、骨子案の6ページに、全ての戦略において「高品質化や効率化」という基本認識を踏まえながら事業を実施することを謳っており、生産効率の向上はあらゆる産業において重要なことと認識しております。

      【まとめ】
       トヨタ生産方式を様々な業種に展開することの考えを伺ったところ、高品質化や効率化は既に掲げているという趣旨の答弁であり、トヨタ生産方式については全く触れられることがなかった。
       特定の企業の名前をあげることへの配慮ということがあるのかもしれないが、トヨタ生産方式は生産工学の一つであり、多くのものづくりの現場でその考えが取り入れられているし、研究対象にもなっているもの。
       その知識や経験を持つ人が多いというのが、この地域の長所の一つであり、それを活かすことが必要。つまり製造業だけでなく農業やサービス業にも活用することで、他地域に真似のできない事業活動ができるのではないかということで申し上げた、ということを理解していただきたい。

    2. 産業集積の促進について
       二つ目の基本方針「産業集積の促進」については、「企業誘致の推進や事業活動の基盤となるインフラの整備により、産業集積を促進することが必要」と記載している。産業集積の促進は産業戦略のゴール、即ち目指すべきところではないかと思われるが、それを基本方針として掲げることに違和感を覚える。どのような考えによるものか伺う。

      【答弁要旨】
       基本方針は、当プランが掲げる基本理念を実現するための基本的な考え方として位置づけています。 独自の技術やノウハウを持った企業による層の厚い産業集積が本市にできることで、企業間で、また、異業種間での新たな連携による新産業が生まれることを期待しています。このことにより、働く場所が増え、地域経済が活性化するものと考えています。

      【2回目質問】
       産業集積の促進ということについて、独自の技術やノウハウを持った企業による層の厚い産業集積という説明をしていただいた。ただ、そのことまではここに書かれた説明では理解できない。もう少し丁寧な説明が必要なのではないか。
       そういう意味では、企業の地方拠点受入れ推進とか、新規創業の活性化なども含めて丁寧な説明をすべきではないかと考えるが認識を伺う。

      【答弁要旨】
       産業集積につきまして、本骨子案では基本方針2の産業集積の促進と戦略3の産業集積戦略において、企業誘致の推進や事業活動の基盤となるインフラ整備などを位置付けております。
       議員ご指摘の企業の地方拠点受入れ推進や新規創業の活性化などにつきましては、産業集積を形成するために有効な方策と考えており、戦略の下に位置付ける重点プロジェクトとして、今後検討してまいりたいと考えております。

      【まとめ】
       企業の地方拠点受入れ推進や新規創業の活性化などについては、重点プロジェクトとすることを検討していただけるとのことだったので期待する。
       基本方針における産業集積ということについても、もう少しわかりやすい説明をしていただく必要があると思う。
       基本方針は、豊橋らしさを活かし、各戦略をユニークなものにする方向性を示すという意味を持つものと考える。それぞれの基本方針がきちんと理解されるように適切な説明をしていただくことを期待する。
       全体を通じて感じたことを1点申し上げる。産業戦略プランにおいては企業の活動をいかに振興していくかが重要になる。そういう意味では企業経営に関する様々な知識を勉強しておく必要がある。経営戦略、マーケティング、財務戦略、トヨタ生産方式など。今回お話を聞く限り、この辺りをもっとしっかり勉強していただく必要があると思う。

    3. 事業者の経営力強化について
       「事業者の経営力強化」ということについて、生産効率向上、設備投資やグローバルな販路開拓などを経営力として挙げている。経営力を言い換えれば経営資源ということになると思われるが、経営力強化に必要な経営資源はこれだけでいいのか? また、その経営資源を補完する方策は人材の育成だけでいいのか、について認識を伺う。

      【答弁要旨】
       事業者の経営資源は、事業活動の基盤となる人材、提供する製品やサービス、円滑な事業活動のための資金などが主要なものです。とりわけ、企業を支える人材の育成は重要なものですが、中小企業が多い本市では、企業独自の人材育成が難しい場合が多く、関係機関と連携しながら、行政が重点的に取り組んでいくことが必要であると考えています。
       また、独自の技術や知的財産、事業活動を有利に進める情報なども経営資源と認識しています。従いまして、技術を磨くための研究開発、知的財産の確保、補助金やセミナーの情報提供なども事業者の経営力を強化するために不可欠であり、必要な支援を行っていきたいと考えています。

      【まとめ】
       新規創業者や中小企業は、コア・コンピタンスのみが確立されているが、その他の経営資源は不十分な状態にあることが一般的である。そのことが持続的発展を可能とする経営ができないということの原因としてある。それをどう補っていくかは、単に人材育成ばかりでなく、人材マッチング、あるいは支援システムなども考えていく必要があるのではないかと考える。


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