☆新年度予算編成の考え方
本年8月、財務省は「平成26年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」について、「『中期財政計画』に沿って、民需主導の経済成長と財政健全化目標の双方の達成を目指し、メリハリのついた予算とする。」と示している。
また、概算要求にあげるべき内容については、「新しい日本のための優先課題推進枠」を設けていることが平成26年度予算を特徴づけるものとなっている。この優先課題推進枠は、緊急経済対策、防災対策、日本再興戦略、骨太の方針について、「中期財政計画」に定める改善目標を達成できる範囲内で、措置していくもの、となっている。
中でも「日本再興戦略」については、@「日本産業再興プラン」の実行による産業基盤の強化、A「戦略市場創造プラン」の実行による課題をバネにした新たな市場創造、B「国際展開戦略」の実行による拡大する国際市場獲得、を目指すもの。本市地域の経済発展に寄与する可能性が感じられ、大いに関心が持たれるものである。
一方、社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指して、昨年2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」に沿って、様々な部分で改革が進められつつある。本市平成26年度予算に影響を与えるものとしては、来年4月からの消費税の3%引き上げの他、社会保障に関しては子ども・子育て関連はまだ影響はないと思われるものの、医療・介護、年金などについては、影響が考えられる。
そこで、以上のことがらを踏まえて、以下三点について考え方を伺う。
【1回目質問】
- 平成26年度予算における重点施策について
- 中長期の財政見通しについて
- 社会保障と税の一体改革の影響と対応について
【答弁要旨】
- 新年度予算編成における重点施策についてです。
今日の我が国の経済は、長期のデフレからの脱却と日本経済再生に向け点お懸命の取り組みにより、回復の兆しが見え始めていると言われますが、本市の財政環境は決して楽観できる状況にはなく、依然として非常に厳しい環境にあります。
また「社会保障と税の一体改革」が、いよいよ本格的に始動する時期でもあり、本市においても、少子高齢化による人口構造の変化に伴い「成長型社会」から「成熟型社会」への転換を積極的に行っていくことが不可欠であります。
こうした我が国、及び本市を取り巻く環境の中で、総合計画に定めるまちづくりを着実に推進し、その歩みを一層確かなものにしていくために、新年度においては、次の5つの重点項目を掲げて予算編成にあたることとしています。
一つは、地域や人に活力を生むための「産業振興と賑わいの創出」です。
二つ目に、災害に強いまちづくりのための「防災・減災対策の強化」です。
三つ目は、将来を担う心豊かな人づくりのための「教育・文化の充実」です。
四つ目は、健やかで安心して暮らすための「保健・医療・福祉の推進」です。
五つ目は、環境に優しいまちづくりのための「環境対策の推進」です。
この五つの重点項目のもとに、事業の選択と集中により、適切な資源配分を行うことで、時代に即応した施策の推進と市民ニーズへの的確な対応を図ってまいりたいと考えています。
- 中長期財政計画見通しについてです。
国の日本経済再生に向けた様々な政策や世界的な経済の回復基調により、日本経済は、個人消費の持ち直しや企業の設備投資の増加傾向が見込まれるなど、全体として明るい兆しが見られるといわれています。
しかし、この地方においては、まだまだそれが実感として感じられ、企業マインドに浸透するところにまで至っておりませんが、中期的な見通しの中では、歳入の根幹である市税収入は個人市民税、法人市民税とも、一定の伸びが見込まれます。
また、消費税の増税に伴い、地方消費税交付金も増額になるわけですが、これらの収入が伸びれば、それと表裏の関係にある地方交付税は減額となるわけで、歳入関係は決して大きく好転するという状況にはありません。
一方、歳出面では、引き続き防災・減災対策に取り組む必要があるほか、少子高齢化社会の進展に伴う扶助費など社会保障関係経費の増加や、公共施設の老朽化による回収費の増加への対応などは避けられない状況にあります。
従って厳しい事業の選択のもとに、中長期的な視点に立った計画的な施策の推進を図るとともに、自主財源の一層の確保や市債や財政調整基金の計画的な活用を図り、また総人件費の抑制や事業の見直しなど、行政改革に不断にかつ積極的に取り組むことで、将来にわたる安定した財政運営を推進してまいりたいと考えています。
- 社会保障と税の一体改革の影響と対応についてです。
ご案内のように、今回の社会保障と税の一体改革では、消費税の増税により財源の確保を図りつつ、人口の高齢化や現役世代の減少、家族形態や地域基盤の変化、経済成長の停滞など、我が国の社会・経済の大きな変化の中で、社会保障のあり方を抜本的に見直し、充実・改革を図っていこうとするものですが、その実現においては、平成29年度を目途とした「社会保障制度改革プログラム法」により、計画的に順次進めていくこととされています。
主な内容としては、「子ども、子育て施策の充実」をはじめ「国民健康保険の財政運営の都道府県化」「介護保険における要支援者向けサービスの市町村事業への移管」「公的年金における基礎年金の国庫2分の1への引き上げ」、さらには保険料の国民負担の公平化などの「医療・介護・年金」の改革が予定されていますが、新年度予算においては、国民健康保険税の軽減の拡大など一部のみで、大きな影響は見込まれていません。
しかし、こうした制度の改革は市民生活にも大きな影響を与えるものですので、今後の国の動きを注視しつつ、市民の皆さんへの広報・情報提供にも最大限努めていきたいと考えています。
次に税の改革における消費税の引き上げの影響ですが、歳出においては、4月から工事費や委託料、物件費など、人件費等を除くほとんどの分野で消費税が課税され支出が増となります。
一方、歳入においては、地方消費税が1%から1.7%に引き上げられ、地方消費税交付金の増収が見込まれます。
また消費税は地方高税の原資にもなりますので、一定の引き上げが見込まれますが、こうした歳入への影響は、12月以降と、歳出とのずれが生じ、新年度は歳入の増を上回る歳出の増となってきます。
従って、使用料など消費増税に伴う改定を行うほか、市税の収入率向上や基金の活用など必要な財源の確保を図る中で、諸施策の推進に努めてまいりたいと考えています。
【2回目質問】
- 26年度予算の重点施策について、「産業振興とにぎわいの創出」、「防災・減災対策の強化」など5項目を重点項目としていくというお答えだった。
そこで、産業振興に関してさらに2点伺う。
昨年度、杉浦議員や坂柳議員の一般質問で、産業振興に必要な企業用地の確保に関連する質問をした際に、「市長は23号線バイパス周辺で考えている」、さらに「関係機関や地域との調整を進め、早期の事業着手を目指して体制や工程を整えていきたい」という趣旨の答弁をされている。
23号線バイパス周辺での産業用地取得に向けた取り組みについて、進捗状況及び今後の見通しを伺う。
また、今年の6月議会で私が質問した国の成長戦略への対応ということについては、「この地域に有効で、具体的に活用できるものに焦点を絞り、詳細な情報の入手に努めていきたい」という趣旨の答弁をいただいている。9月議会では、TPPへの備えとして「国に対する規制緩和等の提案の考え」を伺った際には、「本市や田原市をはじめとする東三河や浜松市などとも連携し、現場からの提案を広域的な案件として取りまとめ、国などに働きかけていく必要がある」という考えを示していただいた。
国の成長戦略への対応、農業における近隣市と連携した国に対する提案、について、どのように進めていくのか、考え方を伺う。
- 中期財政見通しについて、景気回復による市税収入は一定の伸びが見込まれるが歳入環境が劇的に好転するとは考えにくいこと、扶助費、社会保障関係経費の増加、公共施設の長寿命化ニーズなどの歳出への対応として、市債、財調の活用、行財政改革プランの推進を行うということだった。
一般会計の市債現在高の推移をみると、20年度末の1,135億円から24年度末の1,063億円へと、約70億円減少している。様々な努力をしていただいた成果だと思う。
一方、公共施設の長寿命化ということについては、ファシリティマネジメントが中心となり計画をつくり実行も行われている。ただ、校区市民館などについてはかなり短期間に一気に整備されたという事情もあり、今後、更新時期が集中してくることも十分に予想される。
市債残高が減少している中で、今後の財政の安定運営、世代間の負担の平準化などを考えると、一部の施設については更新時期を前倒しすることも含め、積極的な更新計画を立てていく必要があると考えるが、どのように対処していくのかお考えを伺う。
- 社会保障と税の一体改革について、まず、消費税の影響については、地方消費税交付金の交付時期が税率引き上げ時期とズレることにより、差し引きで歳出増となること、消費税の一部を原資とする地方交付税の動向が未だ不明であるということだった。
消費税による増収分については、26年度から低所得者の国保保険税・後期高齢者医療保険料の軽減拡充に充てられる見込みとのことだった。
そこで、消費税の影響についてさらに伺う。
消費税には適用が除外される非課税取引がある。健康保険法、国民健康保険法などによる医療、労災保険、自賠責保険の対象となる医療などが該当する。そのため、市民病院の大半の課税仕入は非課税売上に対応するものとなる。結果として、課税仕入に係る支払消費税の大半が市民病院の負担となっている。税率引き上げがこの辺りにどれ程の影響になるのか、どのように対応していくのかについて、考えを伺う。
【答弁要旨】
- 産業用地に向けた取り組みの進捗状況と今後の見通しについてです。
3.11の震災以降、特に内陸部の産業用地への進出の要望は多く、23号バイパス沿いは、交通アクセスも良いことから、本市といたしましても、早急に産業用地確保に向けた取り組みを進めていく必要があると考えています。
しかしながら、当該地域は、農業の盛んな地域でもあることから、地域の活性化に向けて総合的な見地から、土地の有効活用を図っていくことが重要であると認識しています。
このような状況の中、23号バイパス沿線の東部地区を中心に、現在、地域の皆様の意向を確認させていただいているところです。
今後、地域の皆様や地権者の方々の意向がまとまり次第、愛知県をはじめとする関係機関とも調整を図りながら、産業用地の整備を進めてまいりたいと考えています。
次に、成長戦略への対応と農業における近隣市町村と連携した国に対する提案の進め方についての考え方です。
現在、国では、成長戦略に沿った平成26年度の予算編成に対応するため、「攻めの農業戦略」として、「農地制度のあり方」や「米の経営所得安定対策」を抜本的に見直すなど、制度の改革を伴う検討が進められているところです。
また、成長戦略の具体化を図る「農林水産業・地域の活力創造プラン」の中では、所得の倍増につながる施策の導入など、新たな農業の確立にむけた様々な取り組みが提案されておりますので、今が、各種の施設園芸や野菜栽培などを中心とする本市農業の現状と課題を政府や農林水産省に認識していただく大きなチャンスであると考えています。
そこで、今後は、様々な地元農業者から出される現場の意見なども参考とし、また、愛知県や田原市などの近隣市とも十分な連携を図るなかで、特区や規制改革制度の活用や地域が一体となった要望活動などを通して、国への働きかけを進めてまいりたいと考えています。
- 公共施設の積極的な更新への対処についてです。
厳しい財政状況を鑑み、現在、計画的な回収による安全で安心な施設の提供と将来負担の軽減を図るため、施設保全計画を策定しているところです。
施設保全計画は、目標耐用年数を設定し、施設の劣化状況や過去の工事履歴を踏まえた上で、長寿命化と合わせ、時代のニーズに合った施設整備を計画的に行うというものですが、施設の複合化により効果が認められるケースについては、目標耐用年数にかかわることなく、施設更新をしっかり検討してまいりたいと考えています。
なお、計画の策定にあたっては、本市の中期財政見通しとの整合が図られるよう財務部門と調整を行いながら進めていきたいと考えています。
- 消費税率引き上げの病院事業会計への影響についてです。
支出では、平成26年度予算で概ね3.4億円程度の支出増となる見込みです。
一方、収入への影響ですが、国は医療機関の消費税負担について、診療報酬における検討を行う中で、税率引き上げ分を入院基本料や初診・再診料などに上乗せするとの議論がされています。
診療報酬改定の内容は、年内に示される見込みであり、引き上げ等は現時点では明らかでありませんが、詳細が判明次第、影響額を的確に見込み、新年度予算に盛り込んでいきたいと考えています。
【まとめ】
- 産業振興に絞って2回目をお伺いしたところ、産業用地の確保ということについては、23号バイパス沿線の東部地区で産業用地の整備に向けて、地域の皆さんの意向確認を進めているとのことだった。
農業の振興ということについては、本市農業の現状と課題を政府や農林水産省に認識していただく大きなチャンスととらえ、田原市などと積極的に国に働きかけていくとのことだった。成果を期待する。
ところが、市内産業の中で最も大きなウェイトを占める製造業の振興ということについては、答弁の中から今後の方向性をはっきりとは伺い知ることができなかった。さらに調査研究を進めていただくことを期待する。
一つの可能性として、新産業用地を新たな産業の拠点とすることを考えられないものか? そういう考え方も重要でないかと思う。新たな産業用地整備にあたって、どのような特性を持つものにするかということと合わせて、しっかり検討していただくことを期待する。
- 公共施設の更新については、複合化による効果が認められる場合には耐用年数にかかわらず、更新を考えていくとのことだった。
更新時期の分散という事も考慮しつつ、現状をよく調査した上で使い勝手の悪い施設などは早期に更新することを検討していただきたい。
- 市民病院の売り上げの多くが消費税が非課税であることにより、課税仕入れの税率引き上げ分の多くの部分が市民病院の負担になることについては、国の動向を見て対応するということだったので、わかった。
☆高齢化社会への適応策
我が国の高齢化は世界に例がないと言われる程の早さで進行しており、本市における高齢化率は平成24年度には21.0%に達し、本年度には65歳以上の人口は8万人を超えていると考えられる。
内閣府のデータによれば、高齢者人口の増加は平成54年のピークまで続き、高齢者率はその後も上昇することが示されている。
既に人類史上例を見ないと言われる超高齢社会に突入しており、今後、様々な経験したことのない課題に対応していかなければならないと考えられる。
そこで、現時点、既に顕在化している社会の高齢化に伴う以下の三点の課題について、適応策の考え方を伺う。
【1回目質問】
- 高齢者の力を活かす場づくりについて
8万人を超えるであろう市内に居住する65歳以上の高齢者の多くは、まだまだ元気であり、長年の仕事経験の中で様々な技能や知識を蓄積した方々である。しかし、現状ではこのような技能、知識、労働力が活かしきれていないのが実情であると考えられる。
内閣府のデータによれば、我が国において2000年には3.9人の現役世代が一人の高齢者を支える構造になっていたものが、2012年には2.6人の現役世代が一人の高齢者を支えることになっている。今後この傾向はさらに進み、2030年には1.8人で一人の高齢者を支えることになると予測している。
現役世代が疲弊してしまわないためには、高齢者が支えられるばかりでなく、支える側にも参加してもらう仕組みづくりが必要であると考える。また、高齢者にも自己実現の機会を作っていくことが、生きがいづくりにつながるものと考えられる。
高齢者の力を活かす場を増やすことの必要性の認識と、その方策についての考え方を伺う。
- 高齢者介護サービス事業所職員の不足について
本市においては豊橋市介護保険事業計画に従い、介護保険施設等の整備に関する助成が行われ、施設整備が進んでいる。本年度にも3施設の整備が行われている。
一方、市内の介護施設では職員の不足に頭を悩ませているという声をよく耳にする。公益財団法人 介護労働安定センターが平成24年10月に介護事業所に対して行った実態調査によれば、介護従事者の離職率は17.0%で前年より0.9%増となった。従業員数が「大いに不足」「不足」「やや不足」の解答は合計57.4%で、前年度を4.3%上回る結果になったとのこと。
厚生労働省の調査では、「介護保険制度の施行後、介護職員数は増加し、10年間で倍以上になっている。2025年にはさらに1.5倍以上必要」と推計している。
このことから、現状、介護職員は既に不足しており、今後さらに深刻化していくことが考えられる。当面の対応、長期的な対応についてどのように考えるか伺う。
- 終末医療の体制について
医療技術の飛躍的な進歩により、日本人の平均寿命は着実に伸びている。その中で、ガンにより死亡する方の数は増加傾向にある。
本市の調査によれば、心疾患、脳血管疾患、肺炎による死亡者は、平成7年から平成22年まではほぼ横ばいとなっているが、悪性新生物(ガン)による死亡者数はこの15年間に10万人あたりで183人だったものが、236.4人にまで増加している。このことからは、治療による回復が望めなくなった終末期のガン患者が増えていることが推測される。
治療による回復が望めなくなった終末期のガン患者数の推移と、その緩和ケアの体制をどうすべきかについて、考え方を伺う。
【答弁要旨】
- 高齢者の力を活かす場を増やすことの必要性の認識とその方策です。
高齢者が就労の機会を持つことは、生きがいと健康の増進につながるものと考え、働く意欲と能力を持った方が就労などを通じて社会の支え手として活躍できるような支援が必要であると認識しています。
次に方策ですが、就労支援としては、高齢者に働く機会を提供するシルバー人材センターへの支援とともに、就労活動や地域交流による生きがいを推進する場として高齢者活動センターを設置しているところです。
また、今年度より豊岡地区において、地域包括支援センターが中心となり、ゴミ出しや草取りなどの生活上の支援が必要な高齢者に対して、ボランティアを紹介することにより、地域で支え合うモデル事業にも取り組んでいます。
こうした仕組みを構築することにより、元気な高齢者もこのボランティアとして参加することができ、ご自身の生きがいとしての活動の場づくりにつながるものと考えています。
- 介護職員の人材不足に対する当面の対応と長期的な対応についてです。
介護サービスのニーズの高まりとともに、事業所も年々増加しており、人材不足に陥りやすい傾向は続くものと考えています。
人材確保に向けては、これまでも国による介護職員の賃金改善を目的とした処遇改善加算の導入、県による介護福祉士資格取得支援事業による就労支援などが行われ、現在審議されている介護保険制度の改正の中でも、人材確保への新たな施策が国・県の役割を中心に検討されているところです。
こうした中、本市における当面の対応としましては、介護現場における人材確保への課題の分析を行い、この地域の実情に応じた人材確保に向けた取り組みを行っていきたいと考えています。
一方、長期的な対応としては、職員の定着率を向上させることが最も有効な確保策と考え、働き外のある魅力的な職場づくりをする事業者の支援として、事業者向けの人材育成研修の開催や介護職場のイメージアップにもつながるような出前講座によるPRなどの取り組みを行っていきたいと考えています。
- 終末期のがん患者数の推移と緩和ケアの体制についてです。
生涯のうち約2人に1人は、がんに罹ると推計されており、本市においても約3人に1人はがんで死亡しています。お尋ねの終末期のがん患者数は把握しておりませんが、ガン患者数の増加に伴い、終末期の患者数も増加していくことが予想されます。
次に緩和ケア体制についてですが、国は平成24年に策定した、「ガン対策推進基本計画」の中で重点的に取り組む事項として、「ガンと診断された時からの緩和ケアの推進」を掲げています。ガンと診断された時から患者とその家族は、身体的にも精神心理的にも社会的にも苦痛を抱えることになります。そのような苦痛を早期に発見し、和らげることで生活の質(QOL)を改善する取組みが必要になります。
そのためには、患者が退院してから自宅等住み慣れた地域での療養生活が送ることができるよう治療時期や療養場所を問わず、切れ目ない適切な緩和ケアと合わせ、その家族にも心のケア等の支援を行う体制が必要であると考えております。
本市における緩和ケア体制としましては、豊橋医療センターの緩和ケア病棟(24床)のほか、地域がん診療連携拠点病院である市民病院の患者総合支援センターにおいて患者さんへの療養上の相談支援を行うとともに、自宅で治療する患者及びそのご家族の方に対しましては、病院・診療所で実施している、ガン疼痛治療や精神症状ケア、また医師会の訪問看護ステーション事業において、身体面及び精神面への在宅緩和ケアに取組んでいるところであります。
【2回目質問】
- 高齢者の力を活かす場について
働く意欲と能力を持った方が就労などを通じて、社会の支え手として活躍ができるような支援が必要であるとお答えいただいた。市内には元気な高齢者がボランティアとしてその能力を活用する取り組みをしているところがある、ということも紹介していただいた。
こうした取り組みを広げていくことが大切であると考える。今、既に団塊の世代が高齢者の仲間入りをしつつあり、高齢者の数は大きく増加していることと合わせ、その方々の持つ経験や知識はこれまで以上に多様になっていることが推察できる。今まで以上に高齢者の力を活用する可能性が広がっているということもできるのではないか?
例えば、会計処理、財務分析、在庫や品質などの管理、マーケッティングなどの戦略作り、営業などの知識や経験は、現状ではなかなか活かしていく場が見当たらず、埋もれてしまっていることが推察できる。
企業活動あるいは地域活動団体等で、これらの知識を活かすことが、それぞれの団体、そして高齢者自身にも喜ばれることになるのではないか。
豊橋市の長寿介護課のホームページを見ると「豊橋市高年齢者等就業支援団体」の募集が行われている。シルバー人材センターに準ずる高年齢者就業支援団体が豊橋市と随意契約を行うことができるようになる、というもの。しかし、残念ながら実績は1件のみと聞いている。
この事業を通して、高年齢者就業支援団体の育成をしていくことを考えられないかと考えるが、認識を伺う。
- 介護職員の不足について
介護サービスのニーズの高まりとともに、人材不足に陥りやすい傾向が続くと思われること、人材確保への課題分析を行い人材確保の取り組みを考えるということ、事業者向け人材育成研修や介護職場のイメージアップを考えることなどを答えていただいた。
そこで、さらに2点伺う。
まず、人材確保への課題分析と人材確保の取り組みということについて。
他地域の取り組みを見てみると、県が行っているものがいくつかある。京都府では、北部地域の福祉人材確保を目指して「きょうと介護・福祉ジョブネット」という仕組みを構築している。「介護現場の職員、関係団体、職能団体が参集し意見を交わす、人材のプラットホーム」となるもの。
この中に人材確保などのワーキンググループを設置し、現状を共有し意見交換を行っている。このように進行する人材不足に対して、行政と民間事業者などがともに考えていくという仕組みは、京都府の他にも広島県、埼玉県、高知県などでも取り入れている。
また、平成25年6月の都道府県別介護関係職種の有効求人倍率を見てみると、全国平均の0.75倍に対して愛知県は1.64倍となっており、全国一の高い倍率となっている。このことを考えると、県に依存するばかりでなく、市としての行政・民間事業者が協力した検討の場を設ける必要があるのではないかと考えるが、認識を伺う。
次に介護職場のイメージアップを考えるということについて
一般的に介護職場のイメージとしては、力仕事が多い、キャリアアップが難しいなどと捉えられているように思われる。
しかし、先週のテレビ番組「TVタックル」でも紹介されていたように、車の運転、高齢者に対する傾聴などそんなに体力を必要とすることなく、高齢者でできる仕事も多くある。介護現場では知的障害など障害を持った人も働いているという話も聞いている。
介護資格を持っているものの、今は介護の仕事についていない人、あるいは市で行っている「生活・介護支援サポーター養成講座」を受講した人などは、高齢者介護に関する知識、あるいは高齢者介護への関心を持ち合わせているはずで、期待できる人材と言えるのではないか。
キャリアアップということについては、介護ニーズが高まる中、今この仕事につけば数年先には指導的立場に立つことも十分考えられるし、今後、海外においても日本の介護技術が求められ海外展開も可能性が高い。
介護職場の正しい理解を促しつつ、今、申し上げたような人たちと介護職員を必要とする職場とのマッチングを行うイベント、あるいはネット上の仕組みなどを考えるべきではないかと考えるが、認識を伺う。
- 終末医療について
終末期のガン患者数が増加すると予想されること、末期ガン患者のQOLを高めるための取り組みが必要という認識、豊橋医療センターの緩和ケア病棟や在宅緩和ケアの支援体制などについてお答えいただいた。
そこで、さらに2点について伺う。
答弁で国が平成24年6月に策定した「ガン対策推進基本計画」に触れられていた。この計画の中では取り組むべき施策として、「拠点病院を中心に緩和ケアに関する相談や支援を受けられる体制の強化」を掲げ、さらに個別目標では「5年以内に拠点病院のガン診療に携わる全医師が緩和研修を修了すること」、「3年以内に拠点病院を中心に、緩和ケアを迅速に提供できる診療体制を整備すること」などが示されている。
豊橋市民病院はこの地域のガン診療連携拠点病院の認可を受けていることから、医師の緩和研修や緩和ケアの診療体制整備を進めていることと思う。
緩和ケアについては、患者自身の「痛み」や「倦怠感」などの身体的症状や、「悲しみ」や「落ち込み」などの精神的症状を和らげることばかりでなく、在宅介護をしなければならない家族の指導など、医師にとっては日常の業務では経験することが少ない事がらも身につけることが求められる。
研修で学ぶだけでなく、実際に現場でそういった体験を重ねることできればそれに越したことはない。そういう意味で、豊橋には緩和ケア病棟がある国立の豊橋医療センターがあることから、市民病院の医師達が緩和ケア現場を体験することは大変有意義なことであると考える。
また、豊橋医療センターには答弁にあったように24床を持つ緩和ケア病棟がある。ここには様々な医療機関から紹介を受けて入院することになるが、過去3年間の紹介元病院の中で豊橋市民病院が突出して多く、約半分の46.8%を占めているとのこと。ちなみに医療センター内から緩和ケア病棟に移行する患者は23.7%である。このことを考えると、医療センターで緩和ケアを行う医師にとっても豊橋市民病院でガン治療を経験することは有意義であると考えられる。
そこで、豊橋市民病院と豊橋医療センターとの間で、ガン治療及び緩和ケアの連携強化に向けて、医師の人事交流を図ることが必要ではないかと考えるが、認識を伺う。
次に、ガン治療及び緩和ケアの豊橋モデルを作るということについての認識を伺う。
豊橋医療センターの緩和ケア病棟は平成17年3月に設置された。これは13万人の署名を集めた市民運動が国を動かした結果実現したもの。当時、豊橋市議会でも平成15年9月定例会で国立新病院に医療機能の充実を求める意見書が採択されている。現在では、医療センターのホスピス病棟利用者数は全国でも有数の施設となり、本市は既に緩和ケアの先進地域となっていると言える。
このアドバンテージを更に一歩進めて、医療センターと市民病院が協力することにより、当地域の他の診療施設も含めたガン治療及び緩和ケアの地域連携ビジョンとして「豊橋モデル」を作り上げていくことが、他市に勝る安心して暮らすことのできるまちということになると考える。「豊橋モデル」づくりということについて、市民病院が医療センターと協議を進めることについて、考え方を伺う。
【答弁要旨】
- 高年齢者就業支援団体の育成への認識についてです。
高齢者福祉計画において、高齢者の生きがいづくりの支援を推進し、高齢者が長い人生の中で培った知識や経験を活かすことができるよう雇用機会の確保や雇用に関する情報発信を行い、地域で活躍できる場の確保に努めることとしており、これら団体の活動は有意義なものと認識しています。
こうした中、市が発行する高齢者向けの機関誌や就労支援用のパンフレットの中に、これら団体の活動状況を掲載したり、イベントへの参加を呼び掛けて、広く周知していくことにより、団体の育成にもつなげられると同時に、働く意欲を持った高齢者の就労機会が少しでも広がるような支援をしていきたいと考えています。
- 介護職員の人材確保に向けた取り組みを行うためには、介護現場における人材不足の実態把握と課題分析が必要であります。そのためには、介護事業所やハローワークなど、現場の声や情報を一元化した上で対策を協議していくことが重要であると認識しています。
次に介護職員を必要とする職場とのマッチングなどの取り組みの必要性についてですが、愛知県をはじめ県単位での施策として介護分野のイメージアップや人材確保に向けた様々な事業に取り組んでいるところです。
本市においても、これら先進事例を参考にして、高齢者の再雇用も含め、介護資格を持ちながらも就業していない人材の発掘と就業機会をマッチングする仕組みや情報提供の仕組みについて勉強してまいりたいと考えています。
- 豊橋市民病院と豊橋医療センターとの間で、医師の人事交流を図ることについて
当院は、地域がん診療連携拠点病院として、化学療法、緩和ケアなどの診療体制を整えるなか、積極的に、地域の医療機関から紹介されたがん患者の受入れや、がん患者の状態に応じ、地域の医療機関への逆紹介を行うとともに、院内においては、緩和ケアチームの活動により、がん治療と並行して緩和ケアを実施しているところです。
また、東三河南部医療圏においてがん医療に携わる医師を対象とした緩和ケア研修会を毎年定期的に開催し、当院医師も多数参加する中で、緩和ケアに対するスキルを高めるとともに医師の交流も深めております。
当院と医療センターとの連携につきましても、当院から医療センターへの患者紹介という形で、医療機関間の機能分担、役割分担による連携が図られており、医師間の連携も十分とれていることから、医師の人事交流につきましては、考えておりません。
次に、「豊橋モデル」づくりにおける市民病院と医療センターの協議について
国は、がんの診療体制について全国どこでも質の高いがん医療を提供することを目的として、地域がん診療連携拠点病院を全ての2次医療圏に整備することを目指しています。
本市が属する東三河南部医療圏においては豊橋市民病院が、がん診療連携拠点病院として指定を受けており、その役割の1つには病病連携、病診連携の協力体制といったまさに地域の拠点病院としての役割を担っています。
また、本医療圏では地域がん診療連携拠点病院と緩和ケア病床を有する医療機関が異なっており、それぞれが機能、役割を分担、連携しているという特徴がございます。
議員が言われるように、市民病院からの紹介が多い緩和ケア病床をもつ医療センターとの連携・協力体制は、本市におけるがん治療及び緩和ケア体制を築く上で重要な病病連携であると認識しております。
今後は、本医療圏の地域性を生かしながら地域がん診療地域連携拠点病院である豊橋市民病院を中心として、相談支援、情報提供、診療支援など医療センターを始め、各関係機関と医療連携を推進していくことが、がん治療と緩和ケアの地域連携(豊橋モデル)につながるものと考えております。
【まとめ】
- 高齢者の力を活かす場について
「働く意欲を持った高齢者の就労機会が少しでも広がるような支援をしていきたい」というお答えだったが、「高年齢者等就業支援団体」をどう育成していくということについて、具体的なお話はなかったと思う。
ネット上で「シニアSOHO」というキーワードで検索すると、関東を中心に数カ所あることがわかる。ホームページトップには「元気なシニアの居場所と出番を創る」、「地域とシニアを元気にするコミュニティビジネス型NPO」と紹介されている。高齢者社会活動マッチング事業などを行っている。こういった活動を紹介しながら、高年齢者就業支援団体を広げていくということも必要なのではないか。高年齢者等就業支援団体育成の一つとして、老人クラブがこうした活動も行うようになれば、新たな会員が得られる可能性も増える可能性もあり得る。
また、シルバー人材センターの事業範囲を広げるということも是非考えていただきたい。これらについて積極的に進めていただくことを期待する。
- 介護職員の不足について
現場の人不足は切迫した事態になっている。このままいくと、職員の負荷が過大になり、離職率が高まることになりかねない。悪循環が起こってしまう。とにかく、できることからすぐにでも着手していただきたい。
- 終末医療について
医療センターとの医師の人事交流は考えていないとのことだった。がん治療と緩和ケアの地域連携のユニークなモデル、豊橋モデルを作っていくということについては、必要という認識だったと思うが、そのことで特に医療センターとの協議ということについては、答弁の中で触れられていなかったと思う。
ダ・ビンチも導入して先進的なガン治療を行う市民病院と、市民運動から生まれ全国でも有数の緩和ケア病棟を持つ医療センターが、事務的な接触ばかりでなく、地域全体のビジョンを議論していくことは、ガン治療と緩和ケアを行う新たな地域連携の形を作り得ると思う。これから在宅ケアをしていかなければならない患者さんの家族は増えていくわけであり、今までの形ではなく新たな形が必要なはず。是非そのことを研究していただきたいし、医療センターとの議論も今後考えていただきたいと思う。
来年10月には、「生と死を考える会全国協議会」の全国大会が豊橋で開催されることになっている。豊橋が緩和ケアに先進的な取り組みをする町として、全国にアピールする絶好のチャンスともなる。市民運動で緩和ケア病棟がつくられた豊橋は、市民の意識が高い町。行政もその市民の想いに応えて欲しい。
高齢化社会への対応策について、いろいろ議論させていただいた。団塊の世代が高齢者の仲間入りをし、既に様々な課題が顕在化している。高齢者の数が増えるばかりでなく、高齢者の持つ資源、ライフスタイルなども大きく変わってきている。
今、高齢者になりつつある人たちは、日本が高度経済成長時代に社会に入った人たちであり、その頃から日本の社会というのはサラリーマン化が進んでいる。つまり今高齢者になりつつある人たちはサラリーマンの人たちが多い。つまり、様々な分野のスペシャリストが多い。そういった人たちの知識、経験などの資源を活かすことは、これからの社会を支えていく上で重要なものになるのではないか。
このような変化をチャンスに変えるべく、積極的な対応策を構築していただくことを期待する。以上で終わる。
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