2013年9月10日(火) 9月議会一般質問
青字は答弁
質問テーマ [農業先進地である豊橋市としてのTPP参加に対する備え]

[解説新聞記事]

農業先進地である豊橋市としてのTPP参加に対する備え

 7月15日から25日に、マレーシア・サバ州コタキナバルで、TPP(環太平洋パートナーシップ)の第18回目となる拡大交渉会合が開催され、今回、日本は12番目の交渉参加国として初めて参加した。8月22日から30日にはブルネイで第19回会合も開催され、アメリカは交渉の年内妥結を目指しているとも言われている。
 TPPの農業への影響については、重要5品目の取り扱いなど今後の交渉によるため、品目ごとの具体的対応方策を現時点で議論することは難しいものの、対応の考え方については早急に整理し準備しておくことが必要と考え、今回質問させていただくこととした。農産物の生産のためには、農業機械、施設、材料等、生産開始の数カ月前には発注することが必要であり、ロスを最小限にするためには早急な対応が必要になるはずであり、早過ぎることはないと考える。
 そもそもTPPは、2010年3月に、環太平洋戦略的経済連携協定いわゆるP4協定参加の4カ国(シンガポール、ニュージーランド、チリ及びブルネイ)に加えて、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムの8カ国で交渉が開始された。その後、マレーシア、メキシコ、カナダも加わり、アジア太平洋地域において高い自由化を目標とし、非関税分野や新しい貿易課題を含む包括的な協定として交渉が行われている。
 日本がTPPに参加することになれば、人口7億9000万人、GDP27兆USドルの世界の3分の1に相当する貿易量を有する経済圏となり、タイ、フィリピン、台湾、中国なども関心を示していることから、さらに大きなものとなる可能性をも持っている。
 これまで国内においては、日本のTPP参加について、賛成、反対の様々な議論がなされており、国論を二分する問題となっている。
 その中で語られている我が国の主なメリットとしては、「関税が撤廃されることで輸出企業に有利に働く」、「日本企業が海外へ進出しやすくなる」、「日本全体の生産性が増加する」、「米や肉などといった食料の値段が安くなる」などがあげられている。
 その反面、「食糧自給率が低下する」、「デフレが進む」、「医療格差が広がる」、「国内農家が圧迫される」などの可能性があることが危惧されている。このことから、JAグループなどの農林漁業団体や医療関係団体などは、TPP交渉への参加に対して反対の態度を示してきた。
 今後の交渉の行方はわかりませんが、既に日本はTPP参加に向けた入口に立ったことになる。このことを考えれば、TPP参加による効果を最大化し、不利益を最小限にとどめる方策の確立に向け、一刻も早く検討を行わなければならないのではないか。安倍首相は「今後の交渉によって我が国のセンシティブ品目への特別な配慮など、あらゆる努力により、悪影響を最小限にとどめる」と発言している。
 悪影響を最小限にするための努力は全て国に委ねるばかりでなく、地方自治体においても積極的に進めなければならないはず。農業先進地を自任する本市においては、全国の先行事例となる取組みが必要だと考える。今こそ、世界に負けない強い豊橋の農業とするために、市として何をなすべきかを考えていただきたいと考える。
 そこで、以下4点について伺う。

【1回目質問】

  1. 日本のTPP参加により、本市の農業が受ける可能性のある影響について
     重要5品目など今後のTPP交渉推移によっては影響の度合いが変わるものの、最悪のケースにおける本市の主な農業生産物の内、大きな影響があると考えられるものはどんなものがあり、どの程度の影響になるか、認識を伺う。
  2. 海外の主要な農業国との比較における、本市の農業の特異性について
     海外農産物の輸入の増加への対応、国産農産物の輸出の振興に向け、考えておくべき本市の農業の長所あるいは短所についての認識を伺う。
  3. 市内農業の国内・国際競争力強化の方策について
     経営形態、マーケティング力、生産技術など、様々な面からの考え方を伺う。
  4. 市としてなんらかの支援を要する農産物はあると考えるのか、またその理由について
     市場原理に任せることにより、ある種の農業が市内で大きく縮小することが懸念され、そのことが全市的になんらかの大きな損失をもたらすことになることも考えられる。それを予防する支援策の必要性の有無に関する認識を伺う。
【答弁要旨】
  1. TPPにより本市農業にどのような品目がどの程度の影響を受けるかの認識です。
     TPPは各国の関税の撤廃を前提としていることから、関税の高い農作物は大きな影響を受けると考えられており、国は「米」「麦」「牛肉・豚肉」「乳製品」「サトウキビなどの甘味資源作物」を特に影響が大きいと思われる重要5品目と位置付けています。
     豊橋市では、これらのうち「米」や「牛肉・豚肉」、「乳製品」の生産が盛んに行われていますが、その中で銘柄米や銘柄豚、高級牛肉以外のものが外国産と競合すると懸念されており、最悪の場合、牛豚ともに70%、米では90%が外国産に置き換わると考えております。
     また、乳製品では北海道を中心に生産されている加工向けの牛乳が外国産に置き換わる可能性があり、行き場を失った安価な北海道産加工乳が生乳として、国内の生乳と置き換わる恐れがあります。その場合本市の生乳は勝ち残れないことも十分想定されます。
  2. 外国産農産物に対抗するための本市の農業の長所と短所についての認識です。
     本市は、温暖な気候と豊富な日照、豊川用水の整備などにより、露地野菜から施設園芸、果樹、畜産と非常に多岐にわたる農産物を生産している、全国的にも稀な地域で、その一つひとつが高い品質を維持していることが本市の持つ大きな長所であると認識しています。
     また、大葉やウズラ卵をはじめとして全国トップの生産量を誇る農産物も多く、そうした現在の地位を築いた先駆的な農家の存在やそれを支えた農業者団体や農業関係企業の集積、さらには、これらの農業関係者がさらに高いレベルの品質を追求し続けて磨き上げた栽培技術も豊橋の誇る長所であると認識しています。
     しかしながら地域においては個人経営の農家が太宗を占めており、諸外国の経営規模と比較して生産効率の低さや、経営基盤の弱さから生じる後継者不足と農業従事者の高齢化であると考えています。
  3. 本市農業の国内・国際競争力強化の方策についての考え方です。
     まず第一に必要なことは、外国産農産物との価格競争に対応するための生産コストの削減であると考えています。そのためには経営の法人化や規模の拡大のための農地の集積や、生産効率を向上させる新たな技術や施設の導入などを、国などの支援策と連携して効果的に推進していく必要があると考えています。
     また、国内・外の消費者ニーズや信頼に応えることで、消費者から強い支持を得られる生産地となることも大変重要であると考えています。
     そのためには農産物の安全性や、品質、おいしさの追求はもとより、健康に関心の高い消費者をターゲットに、健康機能の高い農産物の開発やおいしい食べ方を提案するなどの消費者の立場に立った取組みも積極的に進める必要があるものと考えます。
     大切なことは、本市の農産物を消費者に欲しいと思わせ、それを安定的に提供していくことが重要であり、そのためには生産、加工、流通、販売の各業者が一体となり、新たな付加価値の創造や消費者目線での情報提供など、きめ細やかなマーケティングに基づく取組みが必要であると考えます。
  4. TPPへの参加により影響の大きい本市の農産物としては、やはり「米」や「牛肉・豚肉」「乳製品」などであると考えています。
     これらの農産物は、いずれも私たちの食生活において欠くことのできないものですが、外国産に市場を席捲され、国内生産が脆弱になった後に、海外産地の異常気象や外交上の問題から輸入農産物の確保が難しくなることも考えられますので、我が国の「食糧安全保障」の観点からも一定の供給体制を確保する必要があるものと考えています。
     また、農地には食糧を生産する機能の他に、洪水の防止や水涵養、生物生態系の保全といった、「環境への貢献度」も高く評価されており、農村には伝統文化の継承や人間性を豊かにする体験学習の場といった「地域社会を形成・維持する機能」が豊富であり、これらの「公益的機能」は農産物の価値だけでは計ることのできない地域農業の非常に大切な役割であると受け止めています。
     そのようなことから、食生活において欠くことのできない農産物や、私たちの暮らしと密接に結びついている「農業」から収穫される農産物については、存続に向けた支援を行っていく必要があると考えています。

【2回目質問】

  1. TPP参加により想定される、本市農業への影響について答えていただいた。
     特に「米」「牛肉・豚肉」「乳製品」に大きな影響を受ける可能性があるとのことだった。
     この影響はその品目だけにとどまらないことも予想される。例えば、本市では市の支援によりホール・クロップ・サイレージ施設整備が行われ、飼料用稲の生産が行われようになり、順調に推移していると聞く。しかし、畜産、酪農の規模が縮小されれば、飼料用稲の需要がなくなり、せっかく投資したWCSの設備の稼働が落ちてしまうことも考えられる。
     この他、様々な機械・装置や資材の提供をしている企業の他、豊橋市内には生乳を加工する製乳企業があり、ここへの影響も考えられる。
     いずれにしろ、本市農業さらに関連する分野への影響の根本は国のTPP参加という政策によるものであり、その影響を軽減するため、あるいは新たな活路を見出すため、何らかの施策の実現は国に対して求めるべきものといえる。
     そして、生産現場の問題を国に伝えるということについては、市として果たすべき役割は大きいはず。農業先進地である豊橋市の役割は他市以上に重く、問題が起こる前に様々なケースを想定し、積極的な国の施策を求めていくことが必要と考える。
     (1)については終わるが、(2)以下ではこの役割を確実に遂行していただくことを期待して、2回目の質問をさせていただく。
  2. 海外主要農業国と本市農業の比較については、長所として、多岐にわたる農産物をそれぞれ高い品質で生産していること、それを実現した先駆的農家、それを支えてきた農業者団体や農業関連企業の存在があげられた。
     課題としては経営規模が小さいこと、経営基盤が弱いことなどがあげられた。
  3. 本市農業の国内・国際競争力強化の方策については、規模拡大のための農地の集積、生産効率向上に向けた新技術や施設の導入、消費者から強い支持を得られる生産地となるための取組み、きめ細やかなマーケティングに基づく取組みなどの必要性があげられた。
     そこで、(2)と(3)を合わせて、3点伺う。
     まず、TPPの影響については生産品目の特性により、その程度と対応とは概ね四つに区分して考えることができる。
     一つは、日本以外のTPP参加国においても関税は下がることにより、輸出の可能性が高まる品目。
     二つ目にはTPPの影響が軽微である品目。
     三つ目にはTPPの影響が大きく本市での生産が困難になる品目。
     四つ目には市場原理に任せれば生産の継続は困難ではあるものの、公益的機能や食糧安保の観点から何らかの支援策により生産を維持していく必要がある品目。の四つとなる。
     この四つの内、一から三までについて、(2)と(3)を合わせた2回目として伺う。四については(4)の2回目として伺う。
    1. 輸出の可能性が高まる品目について伺う。
       (3)の競争力の強化では、きめ細やかなマーケティングに基づく取組みが必要ということだったが、輸出を伸ばしていくためには、従来の中心的な考え方であるプロダクト・アウトの発想から、海外の消費者の目線による生産、流通を考えるマーケット・インの発想がより重要となるはず。
       6次産業化ということも含め、マーケット・インの発想による戦略の導入ということについては、行政の指導が重要であると考えるが、どのように認識し対応を考えているのかを伺う。
    2. TPPの影響が軽微である品目について、その影響を軽減する取り組みについて。 (2)では、本市の農業の弱いところとして、経営規模が小さいことに起因する生産効率の低さということが言われた。これまで農地利用集積円滑化事業などで農地の効率的な利用が進められている。
       一方、相続が行われることにより農地が細分化されるという、経営規模の拡大とは反対のトレンドも底流にある。国の産業競争力会議では農地の中間的受け皿として「農地中間管理機構」の設置も検討されていると聞く。
       そこで、本市として農業の経営規模拡大に向けて、市としての取り組み、あるいは国への要望などにつき、どのように考えているか伺う。
    3. TPPの影響が甚大であるケースについて。この場合、生産品目を変えていかなければならない。
       生産品目の転換をしなければならないようなケースにおいて、市としてできること、あるいは国に対して要望すべきことなどの認識について伺う。
  4. 市場原理に任せれば市内での生産は困難になってしまうケースについて、「公益的機能」の観点、「食料安全保障」の観点から、存続に向けた支援を行っていかなければならない品目もあるとの認識を示していただいた。
     2回目として、市場原理と切り離し、公益的機能、食料安保の観点から生産を維持すべき品目への支援のあり方についての認識について伺う。
【答弁要旨】
  1. 済み
  2. (3)と統合
    1. 海外市場への新たな輸出戦略の導入と行政の指導についての認識と対応についてです。
       ご指摘のように、消費者のニーズを重視した販売戦略は確かに必要なことであります。しかし、海外の市場に存在しない新しい農産物をこちら側から提案していくことも重要な戦略となり得ると考えており、現在、私たちは、香港などの富裕層をターゲットに高糖度トマトなどの海外にない農産物の新しい食べ方や健康機能等の優れた特徴をPRすることで、香港などで一定の評価をいただきつつあるものと考えております。
       そこで、今後も、香港などで培ってきた提案型のマーケット戦略を基本に6次産業化による加工品なども含めた輸出品目の充実や、新たな市場の開拓等を進めていきたいと考えておりますが、ターゲットとする地域や消費者ごとに様々な戦略を展開していくことも重要であると考えていますので、各方面からの情報収集に努めるとともに国の新たな施策展開などを注視しながら、本地域の農産物の輸出拡大を積極的に支援してまいりたいと考えております。
    2. TPPによる影響が軽微にとどまる品目に対する、今後の経営規模拡大に向けた取り組みについての市の対応と国などに向けた要望についてです。
       本市では、これまで農業委員会や農協などと連携し、農地利用円滑化事業や農地銀行などの制度を活用して農家同士の相対契約による農地の貸借を進めておりますが、まだまだ面的集積については十分であるとはいえない状況にあります。 そこで本市では農協などと連携して、関係者が集まった法人組織の立ち上げや農地の集約を話し合える環境を提供することにより経営規模の拡大を図っていきたいと考えております。
       また国では来年度、農地集積の効率化を促進するため県ごとに農地中間管理機構を設置することとしております。農地中間管理機構では地域の農協や農業委員会と連携して、農地の確保と土地改良事業を行い、農地集積を行うこととしていますが、国に対しては期待される機能が十分に発揮できるように必要な予算や体制を十分に確保すること、また、土地改良事業に伴う地元負担の軽減策などについて要望してまいりたいと考えております。
    3. TPPにより生産品目の転換を余儀なくされる農家に対する市の取り組みや国への要望に関する認識についてです。
       TPP参加は国の施策であることから、基本的には国が支援や助成を行うことが当然であり、施設や機械を入れ替える場合の助成や新たな生産技術の習得に対する支援などについての要望を行っていくことが必要になるものと考えています。
       しかしながら、最も大切なことは意欲ある地元農家が新たな農業で再起を目指すことであると考えており、そのためには本市として、今まで培った知識や経験を活用できる転換品目の相談や、6次産業化などの新たな取り組みを経営的にも技術的にも支援する体制を、県や農協等とともに構築していくことが重要になるものと考えています。
       また、こうした取り組みを進める中で、地域や農家の実情に応じた効果のある支援策を、国や県に対しても具体的に提案していく必要があるものと考えております。
  3. 市場原理と切り離し、公益的機能、食料安保の観点から生産を維持すべき品目への支援の在り方についての認識です。
     このような特別な品目への支援については、あくまでも国家の基本的な施策として、国民への十分な合意形成を図りながら、支援の方策や規模、実施期間などを農林水産省が中心となって検討していくべきものであると認識しており、本地域のように日本農業の中核でもある生産現場の声をしっかりと伝え、施策に反映していただくことが本市の大きな役割であると考えています。
     同時に、県や市におきましては、国民の農業への意識を高めるため、農業体験や地産地消等の取り組みなどを推進し、多くの市民が地域の農業と触れ合い、自ら農業について考える機会を積極的に提供していくことも重要であると考えています。

【3回目質問】

  1. 済み
  2. (3)に統合
  3. 2回目の質問では、TPPの影響についてその度合いに応じて、四つのケースについて聞かせていただいた。できるだけ漏れなく対応策を考える場合にはこのようにカテゴライズしていく方法も必要だと思う。また、今回質問した以外のことについても、様々な関係者との意見交換等により、重要な課題を見落とすことのないようにしっかり検討していただくことを期待する。
     (2)(3)の2回目(A)については、「高糖度トマトなどの海外にない農産物の新しい食べ方」などを提案していくとのことだった。まず、販売ターゲットを明確にすることが重要だと思う。そのターゲットに最もアプローチの可能性が高まる販売経路を考えることが必要になる。販売ということについては、行政の皆さんの経験は決して多いとは言えないわけで、商社の方など、多くの経験と蓄積を持った方に議論に加わってもらうことも考えるべきではないか。
     また輸出の可能性が高いケースでは、「知的財産権」ということについてもその保護とについても、考える必要があるかと思われるので、今後の検討に期待したい。
     (B)については、経営規模拡大をこれまで以上に推進するため、農地の集約を話し合える新たな環境づくりをしていく他、新たな制度として検討されている中間管理機構については、必要な予算や体制の確保について要望していくとのことだった。
     中間管理機構は県の組織となるということであることから、答弁にもあった体制確保ということについて、市町村がきめ細かい運用に携わることができるよう、しっかり要望していただくことを期待する。
     (C)については、意欲ある地元農家が新たな農業で再起できるように、新たな取り組みを経営的・技術的に支援できる体制を構築することと、国・県に対して具体的な支援策を要望していくことの必要性の認識を示していただいた。期待したいと思う。
     ただ、既存の農産物については既に受給バランスが一定成立しているわけで、品目転換をして新規参入していくのが難しいケースが多いことも予想される。そういう意味では、例えば薬草生産など新たな需要の開発ということも考える必要があるのかもしれないと思う。
  4. の2回目については、対策は農水省が中心になって考えるべきものであり、市としては日本の農業の中核にある生産現場の声をしっかり届けることと、地産地消推進など市民の農業の大切さの理解促進活動の重要性の認識を示していただいた。
     これらの課題への対応策を考えるにあたっては、答弁にもあったように、TPP参加という政策が課題の原因を作る可能性があるわけで、対応策についてはしっかり国の力を引き出す努力を期待する。
     現在、アベノミクスの成長戦略の一環で国家戦略特区提案の公募が行われている。本市が必要とする規制緩和を実現していくことは、TPPへの対応策として大きな力となることが期待できる。
     6月14日の閣議で「日本再興戦略 -Japan is Back-」において、「国家戦略特区」の創設が位置付けられた。そして、8月12日から9月11日にかけて、特区において実施すべきプロジェクトに関する提案の募集が行われている。これは国の成長戦略の中で進められているものだが、7月15日からTPP交渉会合に参加したことを考えれば、TPPへの対応として特区を活用することもしっかり考えていくべきだし、国もそれを想定しているものと思う。
     そして、報道によれば、愛知、岐阜、三重、静岡、の4県と名古屋、静岡、浜松の3市により、8月26日に「モノづくり産業強靭化スーパー特区」、「有料道路コンセッション特区」と合わせ「アグリ・フロンティア創出特区」が提案された。「アグリ・フロンティア創出特区」では@企業活力の導入による農業の活性化、A農家レストラン等を活用した6次産業化の促進、B農業と都市の調和による都市構造の構築、C畜産における大規模・効率経営の実現、を掲げ、特区のエリアとしては、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県の全域としている。
     そこで、(2)から(4)をまとめた3回目の質問をさせていただく。「アグリ・フロンティア創出特区」の提案については本市もエリアに含むものとなっているが、この内容について、TPPの影響への対応の観点からどのような感想を持っているか伺う。
     また今後、農業先進地である本市として、国に対する規制緩和等の提案に向けて検討を進めていく考えはないか、認識を伺う。
【答弁要旨】
  1. 済み
  2. (4)に統合
  3. (4)に統合
  4. 「アグリ・フロンティア創出特区」と国に対する規制緩和等の提案についてです。
     今回の特区は、4県と3政令指定都市による提案ということで本市にも十分な事前調整はなく、田原市を含めた日本有数の農業地域における市や農協、及び関係企業の意見が十分に集約されなかったことは残念に思っています。
     しかしながら今回の提案には、農業生産法人の要件緩和や6次産業化に必要な施設の設置要件の緩和などが盛り込まれています。このことは、これまで本市が進めてきた現在の本市の農業を支え、育ててこられた農家や関係者の方々が、今後一層力を発揮できる新たな農業を創造するための農業政策にも十分活用できるものと受け止めています。
     さらに、今回の提案項目の他にも、営農規模拡大のための土地の賃貸借や土地改良事業に関する制限などの緩和に加え、6次産業化を進めるための国レベルでの海外市場開拓など、まだまだ提案する案件は多いものと考えております。
     これらに関しましては農業関係者とともに本市や田原市をはじめとする東三河や浜松市などとも連携し、現場からの提案を広域的な案件として取りまとめ、国などに働きかけていく必要があるものと考えております。

【まとめ】
 アグリ・フロンティア特区に関する感想については、農業生産法人の要件緩和や6次産業化に必要な施設の設置要件緩和など、本市の農業施策にも効果的であるという期待と、営農規模拡大のための土地賃貸借の制限緩和など、さらなる規制緩和を求めたい部分も残っているという認識だった。
 また、これらを広域的な連携の中で国に働きかけていく必要があるとの認識も示していただいた。
 広域的な連携ということについては、まず、発信力を最大化することができる枠組みから考えていただいたらどうか。農業産出額全国1位の田原市、4位の浜松市が隣接してあり、全国6位の本市を加えた発信力は大きなものになるはず。東三河+浜松ということでもいい。
 そして、その枠組みの中で、TPPの影響への対応に必要な規制緩和策について議論を進めていく、という手順を考えていただくのがいいのではないか。農業において日本をリードしている地域であるからこその提案が期待できる。
 第五次総合計画では「意欲のある農業者を支援することにより、活力と魅力のあふれる農業を推進し、日本一の農業を目指します」とある。TPPへの参加はもしかすると豊橋の農業に大きな影響を及ぼすかもしれない。しかし、このことに積極的に対応策を考える中で、豊橋らしいユニークな農業を実現することも期待できる。大きな変化に積極的に対応することで日本一の農業の実現につながるものと確信する。
 今、日本は大きく変わりつつあるという印象がある。アベノミクスの成長戦略、TPP参加などが契機となり、地方がその地域にあった国の施策を発信しやすくなり、国がそれを求める機運が高まっているように感じられる。積極的な提案をすることが大切であるし、その意欲の有無が地域間格差につながるのではないか。
 今年の6月議会で、「国の成長戦略」への対応について質問をさせていただいた際、答弁の中で「国などへの具体的な提案をより積極的に展開していけるよう、迅速な対応に努めていきたい」と答えていただいた。今日、答弁していただいた内容と合わせ、着実に実行していくことを期待する。


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