2013年3月11日(月) 3月議会一般質問
青字は答弁
質問テーマ [持続的に「自助、共助」ができるまち][先端技術を活かした新産業拠点形成][市役所職員の資質向上]

持続的に「自助、共助」ができるまち

 豊橋市の第五次総合計画における基本構想で示されている、まちづくりの基本理念は「ともに生き、ともにつくる」となっている。これは「自然とともに」あるいは「世界とともに」という意味合いも含まれているが、「自助、共助」の促進ということが強く意識されているものと考える。
 しかしながら、この第五次総合計画がスタートしてまもなく2年が経過しようとしているが、未だ自治会加入世帯の増加は見られず、そのリーダー後継者の発掘に苦労しているところが多いとも聞く。消防団についても、団員の確保には苦労しているところが多い。計画の着実な推進に向けて、どういう問題があるのかについてしっかり確認し、対応策を講じることが必要なのではないか。
 今回、自助・共助に深い関係があると予想される、市民の世帯構成の推移に着目をしてみたところ、国勢調査によれば、近年、三世代世帯が減少し、一人暮らし世帯が増加する傾向が見られた。平成7年に18.6%を占めていた三世代世帯は漸減し、平成22年には13.5%となっている。約5%の減少ということになる。その逆に、一人暮らし世帯については、平成7年が22.9%だったものが平成22年には28.8%と約6%の増加となっている。核家族についてはほぼ横ばいで1%弱の減となっている。つまり、三世代世帯から核家族化を経て一人暮らし世帯への移行が進んでいると考えられる。
 一般的に見て、三世代世帯は自助の力があり共助の担い手にもなり得る。一人暮らし世帯はその逆と考えられる。核家族については、いずれ一人暮らしに移行する可能性が高い。これらを考え合わせると、持続的に「自助、共助」ができるまちであるためには、三世代世帯の減少を食い止めることが急務ではないかと考える。そこで、以下3点について伺う
【1回目質問】

  1. 第五次総合計画発足後約2年を経過して、「自助、共助」の充実状況の認識と課題について
  2. 「自助、共助」の促進と三世代同居または近居との関係の認識
  3. 三世代同居世帯が減少を続けていることの課題と対応について
【答弁要旨】
  1. 自助、共助については、東日本大震災を契機に「自らの命は自ら守る」という自助の意識が高まり、これまでの人と人のつながりが希薄化する中で、地域における助け合い、支え合いの必要性が再認識されてきているところです。 その中で、地域の創意工夫で地域コミュニティの活性化を推進する事業に活用できる「地域づくり活動交付金」の交付や災害時を含めた地域コミュニティの拠点施設である校区市民館の整備充実に努めています。
     また、公益的に活動する団体の事業に補助金を交付するなど市民団体の活動を支援し、団体登録数は平成20年度282団体から平成23年度372団体と増加しています。
     課題としましては、単身世帯、賃貸住宅世帯などの近所づきあいの希薄化による自治会への加入率の減少や自治会をはじめ各種団体における地域コミュニティのリーダーの高齢化、人材不足などと考えております。
  2. 一つ屋根の下に住む世帯は、最小のコミュニティ単位として「自助、共助」を促進する重要な単位であると考えられます。
     それが三世代であったり、スープの冷めない近距離であれば、祖父母が孫の子育てをしたり、孫が祖父母の介護をするなどの福祉面、祖父母が地域の歴史、風習や道徳などを孫に伝えるなどの教育面、災害時の助け合いなどの防災面、一つの部屋や場所に集まりウォームシェアによる省エネルギーなど環境面などの他分野にわたるメリットが多いと認識しています。 そして、三世代同居が自助の継続や共助の育成の苗床の役を担っている大切な単位コミュニティであると考えております。
  3. 三世代同居世帯が減少していることは、各世代におけるライフスタイルの多様化、雇用形態の多様化など社会的要因や各家庭における家族関係、経済状況や健康問題など個別要因など様々なことが原因となっていると考えられます。
     課題としましては、特に一人暮らし世帯のうち65歳以上の独居世帯の割合は平成14年度23.3%から平成24年度30.4%と10年間で7.1ポイント増加しており、三世代同居世帯の減少が結果として共助で支えられる高齢者の一人暮らし世帯の増加につながっていると考えております。
     三世代同居への対応については、先に申し上げましたように家庭における個別要因もあり難しいことと認識しております。
     しかしながら、社会情勢の変化や三世代同居世帯の減少、一人暮らし世帯の増加など様々な世帯構成にかかわらず、福祉や防災など安心、安全に暮らすことができるよう地域コミュニティによる共助の必要性とともに住みよいまちづくりに努めていくことが重要であると考えております。

【2回目質問】

  1. 自助・共助の充実状況の認識と課題については、公益的に活動する団体の活動を支援してきた結果、登録団体数は282団体から372団体に増えていること、自治会をはじめとする地域コミュニティのリーダーの高齢化、人材不足を課題として認識しているとの答弁だった。
     自助・共助の充実に向けて、公益的活動をする市民団体の育成を行うことについては、一定の成果があげられているということは理解できる。しかし、このことが自助・共助の中核的な役割を担うべき自治会をはじめとする地域コミュニティのリーダー育成につながっていない、と考えるべきではないのか。
     ここをどのようにして繋げていくのか、あるいは全く違うリーダー育成策を考えるのか、「ともに生き、ともにつくる」を掲げる第五次総合計画を進めていく上で、どうしても乗り越えなくてはならない重要な課題である。地域コミュニティ活動のリーダー育成の課題への対応策について、考えを伺う。
  2. 三世代同居が自助の継続や共助育成の苗床の役を担う大切な単位コミュニティであるとの認識が示された。そして、三世代同居世帯の減少により自助の力が弱くなり、高齢者一人暮らし世帯の増加により共助において支えられる側の市民が増加している。にもかかわらず、この流れを食い止める方策はないという認識だった。
     そこで、他市の事例を調べて見た。千葉市においては、高齢者の孤立防止と家族の絆の再生を目的として、三世代家族の同居・近居などに必要な費用について、持家の場合には新築や増改築に要する費用、借家の場合には礼金・権利金・仲介手数料など賃貸借契約に要する費用、さらには転居に係る引越費用の一部助成を行っている。岡山県笠岡市でも同様の支援を行っている。
     長野県飯山市では「三世代等同居住宅建設支援事業」として、父母、祖父母等親族と同居する目的で住宅を新築または増築するために資金を借入れた場合に、その借入金利子の一部を3年間にわたり支援している。
     大阪府高石市では「二・三世代同居等支援事業」として、高齢者の孤立防止と家族の絆の再生を目的として、二・三世帯の同居、又は近隣に居住するために新築または購入した住宅に課せられる固定資産税を、一定期間軽減している。
     東京都品川区では、介護や子育てなど、お互いに助け合いながら安全・安心に暮らしていくことができるように、親世帯と近居または同居することになったファミリー世帯に対して、転入・転居費用の一部を「三世代すまいるポイント」として交付している。この「すまいるポイント」は、協賛企業が提供する商品に交換することができるというもの。
     これらがどの程度の利用をされているか、まではわからなかったが、市がこのように三世代同居・近居を支援する制度を設けるということで、少なくとも市として市民に対してはっきりとしたメッセージを送ることになるのは間違いないはず。
     そこで、2、3をまとめた2回目として、本市において、今後、三世代同居あるいは近居を勧める施策の検討をしていくことの必要性の認識を伺う。
【答弁要旨】
  1. 地域コミュニティにおいては自治会を中心に各種団体により、まちづくりを推進しておりますが、そのリーダーとなる自治会長をはじめ各種団体の役員等を対象として、平成23年度より「まちづくり講習会」を実施しております。
     平成24年度については、「まちづくりを楽しもう」を演題として、楽しくまちづくりを進めていく手法やリーダーに求められる意識について、地域コミュニティ活動の専門家の講演を実施するなど、これからまちづくりを実践していく上でのリーダーの学びの場を設けています。
     また、あわせて地域コミュニティにおける実践事例を紹介することで、他地域の先進的な取り組みにふれ、自らのまちづくりへの一助となる機会にもなっています。
     今後も、こうした地域のまちづくりのリーダー育成への取り組みを継続して実施することにより、自助、共助、によるまちづくりを推進していきたいと思います。
  2. と3.を合わせた2回目、三世代同居あるいは近居を勧める施策を検討して必要性の認識についてです。 先にお答えしたように三世代同居世帯は「自助、共助」にとって有意義なものであると考えており、三世代同居世帯が増加すれば、地域を支えていく共助の力となり得る要因の一つであると認識しております。 他都市において同居を勧める施策を実施している多くの例をお示しいただきましたので、今後は、それらの取り組みも参考に三世代同居、近居を支援する制度について勉強する中で、「ともに生き、ともにつくる」まちづくりを推進してまいりたいと考えております。

【3回目質問】

  1. 地域コミュニティ活動のリーダー育成ということについては、自治会の役員の他各種団体の役員等を対象とした、「まちづくり講習会」を実施しているということだった。しかし、この方法では自治会活動など既に地域コミュニティ活動に参加している人が対象となっているわけで、新たに地域活動に取り組む人を増やすことにつながっていないと思われる。
     一方で、1回目の答弁で言われたように、公益的に活動する市民団体登録数は平成20年度282団体から平成23年度372団体と増加している。公益のために汗を流そうという気持ちを持つ市民が増加傾向にあるわけで、この人たちに地域コミュニティ活動のリーダー後継者となってもらうことは効果的な方策となるのではないのか。自助・共助を持続的に行えるまちづくりに向けて、このような市民が地域コミュニティ活動のリーダーになっていく道筋をつけることを考えるべきではないか?
     例えば、現在行っている市民協働推進補助金の中に、校区自治会が推薦し校区自治会とも関係を持ちながら行う活動を、校区推薦枠として確保していくなども考えられる。そこで、自治会活動の後継者育成に向けて、校区自治会と連携しながら行う、市民団体によるまちづくり活動を支援する補助施策を行うことの必要性について認識を伺う。
  2. と3.を合わせた2回目、三世代同居・近居の促進については、支援制度について勉強していただけるということだった。是非積極的に考えていただきたい。ただ、現実に三世代家族が核家族に移行していく事情は、経済的な問題が大きいというケースばかりではないことを考えると、三世代で暮らすことの大切さを、どのようにして市民の理解を促進していくべきか、ということについてもしっかり研究していただくことを期待する。三世代同居については終わる。

【答弁要旨】

  1. 現在の市民協働推進補助金の応募団体には、自治会をベースとした団体も増えてきております。補助金の審査にあたっては、申請書や公開のプレゼンテーションの中で、地域と連携できていると判断されれば実効性の審査項目で高く評価されているものです。
     市民団体のメンバーが地域コミュニティの活動へとつながっていくことは、同じまちづくりの方向性を持っている人々であれば、効果は大きいと考えられます。
     今後は、市民協働推進補助金などを通じ、様々な活動をしている団体の情報を地域コミュニティに提供し、連携したまちづくりが行えるしかけづくりを進めていきたいと考えています。

【まとめ】
 是非、市民団体のメンバーが自治会活動にも参加していく道筋づくりについて、積極的に考えていただくことを期待する。
 一般的に、行政施策では市民に行動変容を求める時、外発的動機付けによることが主だった。つまり、飴と鞭であります。その結果、どういう市民が増えるかというと、自分の利益を最優先に考える市民が増えるということになる。
 自助・共助を勧めるということであれば、そうではなく、まず全体の利益の最大化を考える市民を増やすことが大切。そういう意味では、外発的動機付けも導入段階では必要ですが、次の段階では、内発的動機付けによる市民の行動変容を促していくということ、こういった施策も是非ご研究をいただきたい。

先端技術を活かした新産業拠点形成

 本市ではこれまで新産業育成の方策として、サイエンスクリエイト21計画を策定し、それを具現化する中核的な機関として第三セクターの潟Tイエンス・クリエイトを設立し、様々な産学官連携事業の推進に取り組んで来た。また、大学の研究支援ということについては、特に研究領域を限定することなく幅広い分野を対象としてきた。
 新産業育成に向けて、大学の様々な研究の成果を利用するという発想であり、学官連携ということで言えば出口に焦点を絞った施策であったということができるのではないか。
 しかし、もっと効率的な支援ということで言えば、入り口から考える方が得策ではないかと考える。つまり、どのような新産業を形成していくのかというビジョンを作ることを最初に行い、戦略的に進めるということが必要なのではないか。このビジョンが明確になることで、研究助成を特定分野に集中的に行うことが可能になり、産業界とも協調した支援も考えられるようになる。さらに、本市ばかりでなく周辺自治体との広域的連携による支援もあり得るのではないか。
 そして、そのビジョンの産業領域ということについては、豊橋の既存の蓄積と強みを十分に活かしたものであることが実現可能性を高めるために必要なことと言える。本市は、産業の中核をなす自動車関連の製造業における技術や経験の蓄積が豊富にある。
 また、豊橋技術科学大学においてはロボコンを通じたロボットの研究蓄積が、他大学より優位に立っている。近年はパワーアシスト技術においても先進的な研究が行われていることも知られている。さらに、学内に技術創生研究機構の一つとして、2010年に「人間・ロボット共生リサーチセンター」を設置している。
 ロボットとは「自律的に判断する機能を持った、人の代わりに何らかの作業を行う装置」ということができるものであり、自律的に判断するためのセンサーが重要な役割を担うことになる。豊橋技科大は文部科学省のグローバルCOE事業において、「インテリジェントセンシング」が対象事業となったこともあり、高機能センサーの研究においては、先進的な研究が行われてきたところ。
 少子高齢化が進展する中、製造業や農業あるいは高齢者介護などの現場において、労働力の不足を補う手立てが求められている。このようなことから、今後の本市に築くべき産業拠点のテーマとして、ロボット産業は有力な候補として検討に値するのではないか。そこで、以下2点について認識を伺う。
【1回目質問】

  1. 大学の先端技術を活かした新産業拠点形成に向け、ビジョンと戦略を確立することの必要性について
  2. 新産業拠点のテーマとしてロボット産業を検討することの妥当性について

【答弁要旨】

  1. これまで本市では、この地域が得意とするものづくりの先端技術を活用し、産学官連携を推進していくことを目標とする「サイエンスクリエイト21計画」を基本として、様々な事業の展開を進めて参りました。しかしながら、この計画は、異業種や大学などの連携による研究開発や創業支援を通じ地域の産業を活性化しようとする構想であり、具体的に産業振興を推進するための施策が明確にされていない点が課題でもありました。
     こうしたことから農工商連携や産業集積の促進などを中心とする産業全体を捉えた実施計画レベルでの産業戦略プランを策定し、23年度より各種事業に取り組んでいるところです。
     こうした中、自動車産業における次世代自動車関連の研究開発や本市の特徴である農業を活用した農工商連携による新農業への取り組みなどが活発な展開を見せ始めており、このような段階において、それぞれの分野での明確な目標やその実現のための戦略を示していくことは、今後の事業推進に向けて効果的なものになると認識しています。
  2. ロボットについきましては豊橋技術科学大学が「ロボコン大会」において世界を相手に優秀な成績を収めている実績があり、当地域が研究開発の分野においてある程度の素地を持っていることは十分認識しているところであります。
     また、本市においては、地域産業の強みを活かした次世代自動車や食農産業クラスターから発展した新たな農業や健康・長寿産業の集積を目指したプロジェクトを積極的に推進しているわけですが、それらの実現をより加速させていくために「ロボット産業」を一つのツールとして、各分野発展の横串となるよう積極的に取り入れていくことは、それ自体が一つの産業戦略になり得るものと考えています。

【2回目質問】

  1. 「明確な目標を示すビジョンやその実現のための戦略を示す」ということについては、「今後の事業推進に向けて効果的なものになる」との認識を示していただいた。
     持続的に発展し得る新産業拠点を形成していくためには、様々な機能を盛り込むことが必要であり、大変な努力を要するもの。まずはシーズとなる科学技術研究機能の設置、そして、新規技術を産業に育てていくための資金提供をするファンド機能の設置、関連企業の誘致、さらには情報発信に向けたコンベンションあるいはイグシビジョン機能の充実など様々なことに取り組まなければならない。しかし、現状を考えた時、豊橋市単独で直ちにこのような施策を行うことは容易ではないと思われる。
     もし、広域的に取り組むことができれば、多様な資源の活用、役割の分担による負荷の軽減、あるいは情報発信力の強化などの期待が考えられる。そこで2回目として、周辺自治体との連携体制をつくり、新産業拠点形成に向け広域的に取り組むことについて、その必要性の認識を伺う。
  2. 地域産業の強みを活かした次世代自動車や新たな農業、健康・長寿産業の集積を目指しており、それらの実現を加速するために目指す分野の技術開発を「ロボット産業」として、横串とすべくテーマとして取り上げる産業戦略もあり得る、という答弁だった。
     ロボット産業をテーマとした産業戦略を進めるということについては、先ほど申し上げたように当地域には豊橋技術科学大学があり、シーズには恵まれている。一方で、産業の振興ということを考えた時、市場側のニーズの期待が多くあることも重要なこと。本市地域にそのニーズが大きく育てば、関連企業の立地促進につながる可能性も高まる。
     そこで、ロボットの産業拠点形成の可能性を模索するという意味も持ちつつ、ロボットのニーズの拡大に取り組む施策を導入するということは考えられないものか。
     デンマークでは国策として、高い人件費の問題を解決するために積極的にロボットを導入する施策を行っていると言われている。先日、あるテレビ番組において日本で生まれたアザラシの赤ちゃんを模したロボットが、デンマークの認知症患者の介護現場で活用されていることが紹介されていた。このような、高齢者や障害者の介護の支援、製造業や農業の現場作業の支援、生活の問題解決支援など多くの可能性が考えられる。
     今後、豊橋技術科学大学の人間・ロボット共生リサーチセンターとの連携により、いろんな方策が生まれてくるのではないか? そこで2回目として、ロボット産業振興に向けて、ロボットニーズ拡大の施策に取り組むことについての認識を伺う。

【答弁要旨】

  1. これまでの地域産業に新たな付加価値を創造した新産業の集積を図るためには、本市のみならず、同様の産業基盤を有する東三河地域、あるいは浜松市を中心とする西遠州地域などを対象とする広域的な取り組みが効果的であると考えております。
     また、そうした広域的な取り組みを具体化していくためには、行政のみならず企業や商工会議所、大学などの関係機関が一体となって、新産業の集積に取り組むことが必要であるものと考えております。
     そして、こうした産業振興に関する関係機関の一体感を醸成していくためには、今後、地域の特色を活かした産業集積の方向性をビジョンなどの形でお示ししていくこと、また、新産業を集積させるための各種の取り組みが、各関係機関の役割ごとに責任をもって推進されていくことなどが重要になるものと考えております。
  2. ロボット技術といわれるものにはパワーアシストはもとよりセンサーによるデータの蓄積や最適な選択を行う判断機能など、現在でも多くのバリエーションがあり、今後は様々な分野において、利用者の発想により、その用途が一層拡大していくものと考えております。
     高齢化が進む社会においては、介護のみならず、癒しの場面で、また、農業や漁業においては、これまで経験を拠り所としていた部分を詳細なデータに基づいて自動化するなど、現在では考えも及ばない様々な場面で、ロボットの可能性はますます高まっていくものと考えております。
     そこで、本市におきましては、産業技術の高度化を図り、新たな産業分野の拠点形成を目指す中で、ロボット分野の活用を図るため、豊橋技術科学大学の人間・ロボット共生リサーチセンターの革新的な取り組みやインテリジェントセンシングなどの先進的な研究を地域産業に活用してまいりたいと考えております。また、同時に、ロボット利用を促進するための支援方策などにつきましても具体的な検討を進めてまいりたいと思っております。

【まとめ】
 広域的な取り組み、ロボット利用の促進施策などについて、前向きな答弁をいただいた。
 今後の新産業拠点の形成ということを考える時、豊橋市というより豊川流域というスケールの方が、より多くの資源を活用できる可能性とか、発信力の強さなど実現可能性が高まると考えられる。
 昨年12月18日、総務委員会に示された「東三河広域連合」実現に向けたスケジュールには、第一期の事業イメージとして「東三河産業振興ビジョン」の作成が掲げられている。東三河広域連合で検討する産業振興ビジョンでは、是非とも、豊橋市産業戦略プランの経験を活かし、当初から「新産業拠点形成ビジョン」の作成を目指すことを検討していただいたいと考える。
 豊橋市民病院では新年度に医療ロボット「ダ・ビンチ」の導入も検討されている。さらに言えば、豊橋市のマスコット「トヨッキー」もヒューマノイド風であり、本市にとってロボットは親しみやすいものとなっている。
 豊川流域をシリコンバレーならぬロボットバレーにすることを目指して、まずはロボット需要を喚起する施策の実現に期待する。

市役所職員の資質向上

 昨年12月議会において、市長は所信表明の中で「市政運営に当たっては、徹底した行財政改革と職員の資質向上に努めるとともに、窓口サービスの充実や職員のホスピタリティを高め、市民に愛される市役所をつくっていく」としている。高質かつ効率的な行政運営に、職員の資質向上は不可欠のものであり、しっかり進めていただくことに大いに期待する。
 一方、人材育成基本方針は「自律型プロフェッショナル職員への挑戦」と題し、2008年に改訂され、2012年、つまり今年度までの取組み内容が示されている。この取組み期間を終えようとする今、市長が考える職員の資質向上を更に着実に進めるために、この5年間の取組みを評価反省することがまず重要と言える。さらに、豊橋市政を取り巻く外部環境変化、内部環境変化の中で、市職員の人材育成に大きな影響を及ぼす可能性のあるものを抽出し、それらを踏まえて、今後の人材育成方針を明確に示していくことが重要だと考える。そこで、以下3点について伺う。
【1回目質問】

  1. 人材育成基本方針の取組みの成果と課題の認識について
  2. 市職員の人材育成に大きな影響を及ぼす可能性のある外部環境、内部環境の変化の認識について
  3. 今後の職員の資質向上方策の方針とその進め方について

【答弁要旨】

  1. 人材育成基本方針の取組みの成果としましては、政策課題研究や創造性開発といった分権時代を見据えた研修の実施、あるいは、目標管理制度の定着などによりまして、個々の職員が事業の必要性や効率性を考え、主体的に行動できるようになってきていると認識しています。
     例えば、今年度の業務改善に関する取り組みでは、職員から300件近い提案が出されております。また、自己研修制度の利用者が最近5年間で50%以上伸びており、職員が自らの意思で意欲的に挑戦する組織風土が徐々に浸透してきていると感じています。また、上下水道局の「とよっすい」の企画販売など、これまでにない柔軟な発想・提案が事業化されるケースも出てきており、分権時代を担う職員の育成は着実に進んでいるものと考えています。
     一方、課題としましては、増加し続ける業務に限られた人員で適切に対処するためには、職員一人ひとりの基礎能力の底上げや高度な専門知識の獲得に継続して取り組んでいく必要があります。これらの取組みをこれまで以上に効果的に行っていくためには、何よりも職員自身が意欲を持って能力開発に取り組むことが重要であり、自ら学ぶ意欲をいかにして引き出すか、このことを意識した人材育成の取組みを進めることが必要となっています。
  2. 職員の人材育成に影響を及ぼす可能性のある外部環境としまして、何より影響が大きいのは地域主権改革の進展です。地方分権一括法の施行以来、地方自治体が担う権限及び業務は、質・量ともに大きく変革を遂げています。「国から地方へ」の流れは今後も続くことが予想され、地方政府として機能するための組織と、それを担う人材、即ち、自ら考え、行動する職員の育成が求められています。
     次に、内部環境の変化ですが、段階の世代の大量退職によって若手職員の割合が増加しており、また、労働環境の整備とともに女性の公務職場への就業が進んだことで、職員の年齢や男女別の構成割合に変化が生じてきています。また、総人件費抑制の影響で嘱託職員や再任用職員が占める比率も伸びており、年齢、性別そして任用形態の変化を意識した人材育成を進め、個々の能力をより一層高めていくことが求められていると考えています。
  3. 今後の職員の資質向上に向けては、現行の人材育成基本方針に、地方分権や公務員制度に関する直近の動向を踏まえた見直しと、女性職員の能力活用や非正規職員の能力向上など、新たに取り組むべき課題を見据えた内容に改訂し、職員が情熱を持って挑戦し、能力を十二分に発揮する職場作りに努めていきたいと考えています。
     その進め方ですが、職場における面談を通して、一人ひとりの能力の習熟度に応じた自己啓発や計画的なOJTの実践が意図的に行われるように働きかけるとともに、キャリアデザイン研修をより一層充実し、キャリア形成に必要な知識や技術を自主的かつ計画的に取得することをし得するなど、職員のモチベーションを高め、意欲的な行動を促す取組みを行っていきたいと考えています。

【2回目質問】

  1. 人材育成基本方針の取組みの成果と課題について答えていただいた。
     今年2月15日に、市の管理職を対象として管理職研修が行われた。講師には早稲田大学の稲継裕昭教授を招き、「自学を促す風土づくり」という講演が行われた。稲継先生は、参加者に「あなた自身が一番成長したと感じているのは、どんな時だったか?」と問いかけた。
     参加者の答えの多くは「大きな責任を与えられた時」「難しい仕事を任された時」というものだった。稲継先生の解説によれば、「人は任せられた時、必要を感じる状況になった時に学ぶ」ということだった。
     このことから、今回の答弁で課題としてあげられた「自ら学ぶ意欲をいかにして引き出すか」という問いへの一つの答えは、「職員に任せること、困難な課題を与えること」ということになると思われる。任せるあるいは困難な課題を与える場合に、必要となるのはPDCAのマネジメントサイクルを各職員が行えるようになることであり、それを確実に実行させるためには上司による面談が重要になるはず。
     そこで、2回目の質問として、各職員に対する上司の面談がどの程度行われているのか、また、今後、面談の頻度をどの程度にしようとしているのか、さらにそのためにどのような方策を考えているのかについて伺う。
  2. 人材育成に大きな影響を及ぼす可能性のある外部環境、内部環境の変化の認識について答弁をいただいた。
     その中で、若手や女性、嘱託職員、再任用職員の比率が増加するということが言われており、多様なキャリアを持つ職員が同じ職場で働くということが予想されているということになる。(1)の答弁と合わせると、多様なキャリアを持つ職員に対して、それぞれ「自ら考え、行動する」ことを求めていくということになる。
     このことは、様々なキャリアを持つ職員が相互に理解できる、共通の仕事を進める手法を確立する必要があるということを意味するのではないのか? そういう意味で、豊橋市役所としての問題解決の文化をどのように育てていくことを考えているのか、について伺う。
     更に、様々なキャリアを持つ人が一体となって仕事を進めるためには、知識や経験を組織的に継承していくということを考えなければならない。文章化することが容易な形式知ばかりでなく、コツとか勘などのようにマニュアル化が難しい暗黙知を含めて、知識や経験をどのように蓄積・継承していくのか、考え方を伺う。
  3. 今後の職員の資質向上に向けた方針とその進め方について、答えていただいた。
     その中で、キャリア形成に必要な知識や技術を自主的かつ計画的に取得することを支援するということだった。
     そこで、キャリアデザインの前提となる、複線型人事についてさらに伺う。
     複線型人事については、企業によっては採用時からキャリアコースを区分しているところもある。しかし、豊橋市役所においては、専任職となるのは専任主査に任命される時であり、5級職からとなる。このことから、実質的にコース区分されるのは、40歳頃となっている。スペシャリスト育成のスタートとしてはあまりに遅いのではないか。そこで、複線型人事制度の一層の充実を図ることについて、2点伺う。
     まず1点目として、スペシャリストである専任職の専門性をさらに高めるためには、複線型人事のスタートをもっと早い時期に改めるべきではないかと考えるが、認識を伺う。
     また、総合職と専任職の選択に職員の希望をある程度聞いていくということだが、そのためには専任職がどういうものかわからなければ、職員として希望すべきかどうか判断する材料がない。そういう意味で2点目として、専任職としてどのような職種があるのか、さらには専任職種によって教育やジョブローテーションはどのようになるのか、など職員が判断できる材料を公表する必要があるのではないかと考えるが、認識を伺う。

【答弁要旨】

  1. 部下育成のための面談については、年度当初に仕事の進め方や能力開発の目標について話し合う面談からスタートし、その後上司からの声掛け、あるいは部下からの相談など、OJTの観点から適切なタイミングで随時指導・面談を行っています。また、こうした随時の面談に加え年度中期には、これまでの指導・面談の記録と職員から提出される自己申告書の内容とを突き合わせ、仕事や能力開発の進捗状況確認のための面談を行うこととしております。
     職員を育てるには、任せて、やらせ、褒めて、伸ばすことが必要であり、面談は仕事の実践を通じた指導・育成の重要な機会であると認識しております。
     今後は、課またはグループ単位で行われる毎月の業務の進捗管理の機会も育成のための面談と位置付け、職員の能力開発の確認や、自己啓発意欲を喚起させる場として、定期的にまた意識的に行うよう管理・監督職員に促していきたいと考えております。
  2. 問題解決の文化、職場風土というお話かと思いますが、自ら考え、行動する職員を育成する上で、問題発見・問題解決能力の習得は不可欠なものと考え、各種研修などの機会を通じ、能力の向上に努めてまいりました。その結果、各職場における業務改善運動などで活かされておりますが、職場の風土として根付いているかというと、まだ道半ばかと考えております。
     職場風土に大きな影響を与えるのは、管理職の言動です。管理職が変わると職場風土も変わるとも言われます。管理職のリーダーシップ、パフォーマンスを高め、問題解決の文化、職場風土の醸成に努めてまいりたいと考えております。
     また、地域や経験の蓄積・継承ですが、団塊世代の退職後の組織力強化には、ベテラン職員の暗黙知の蓄積・継承が大変重要となります。暗黙知は、マニュアル化することが難しいものですが、共通の場で作業し、体験を共有することが最も効果的な方法と考えております。経験が未熟な職員に失敗を恐れず挑戦させ、先輩・上司が自らの経験を活かし指導・助言するなどOJT活動をより充実していくことで、組織内での蓄積・継承を図っていきたいと考えております。
  3. まず、専任職としてのスタートの時期でございます。
     現在は、採用後10年程度は複数の分野を経験し、その後中級職員から主任までの約10年間の中で専任職に向けての専門性を高める育成を行い、主査職から専任職としてその能力を発揮しております。本人の適性を見極めることや、複数の行政分野を経験することも必要でありますことから、現在の育成方法で進めていきたいと考えております。
     次に判断材料の公表ということですが、現在、キャリアデザイン研修において、複線型人事制度について説明しておりますが、必ずしも十分とは言えない面もございます。職員の理解度を高めるために、講義内容を含め、さらなる方法の提供に努めるとともに、専任職の役割や仕事がイメージできるよう、自己申告書に専任職の具体的な配置職場や職務内容を提示していくなど、判断材料の提供に努めていきたいと考えております。

【3回目質問】

  1. まず、面談についてお答えいただいたが、面談については上司と部下が1対1で、しっかり時間をかけることが必要。管理職に対して、時間や回数など一定のノルマを課すことを考えることも検討していただくことを期待する。
  2. 問題解決の文化ということについては、私の申し上げたかったことと少し異なる部分があるので、さらに少し説明させていただく。金曜日の代表質問で深山議員は5Sについてお話をされた。「整理、整頓、清潔、清掃、しつけ」ということだが、今、部長さん達に「整理」と「整頓」の違いを説明して下さいと申し上げると、かなりバラついた答えが返ってくると思われる。それでは、効率よく問題解決をすることが難しいと考えられる。このような問題解決に必要な言葉やツールについて、庁内の全員が同一のイメージを共有すること、これを問題解決の文化と申し上げている。是非、ご研究をいただきたい。
     経験の蓄積と継承という中で、暗黙知をどうするかとういうことについては、Yahooの知恵袋のようなものも考えられると思う。回答者にOBも参加できるようにすることで、より充実したものとすることができる。このことについても研究していただくことを期待する。
  3. 複線型人事については、専任職のスタートは変える考えはない、キャリアデザインのための情報提供については、充実に努めていくということだった。
     そこで、これまでの議論を総括して、職員の資質向上の必要性を唱えておられる佐原市長にお伺いする。これまでの人材育成基本方針の計画期間が終了し、新年度からは新しいステージにはいることになるが、どのような職員像を描いているのか、またそれを内外の環境変化、現在の人材育成基本方針の課題などを踏まえ、どのように実現しようとしているのか、について伺う。

【答弁要旨】
(市長)まず私が職員に求めていることの一つは、多様性ということがある。英単語で言えばダイバーシティということになる。これは「男と女」、いろんな職種経験を持つ人たち、あるいはハンディキャップを持つ人たちも含めて、そうした人たちを幅広く採用する仕掛けを作っていきたいと考えています。
 最近ではJAICAの青年海外協力隊の経験者や北海道大学院大学に行った人を採用するなど、専門の能力としていろんな経験を持った人の採用を広く始め出したのが、豊橋市の採用の特調であろうかと思っています。
 今度特別支援学校を建設するので、ハンディキャップ等の人たちを上手にどうやって戦力としてしっかり採用できるかということが、私たちにも課せられた一つの課題だと思っています。
 そして二つ目はシンパシーというんですか、しつけであったり、その人の心優しさであったり、そういった部分の向上をしっかり図っていきたいと思っています。
 最初の4年間で挨拶をしっかりしようというのをやっておりました。個人の社会経験、それとかいろんあ家庭環境とかありますから、なかなか100%はいきませんが、それdもずいぶん窓口での雰囲気が変わったと聞いています。
 それから、窓口に限らず、人と接して仕事をする市役所の職員において、いろんな場面で向上していったらと思っております。
 そして、最後が一番難しいし一番大事だと思いますが、行動力の強化ということだと思っています。
 一つは、好奇心をしっかり持っていろんなものの情報をしっかり集め、自分でも学びつつ、必要な能力についてはみずからそれを習得するという努力をするということ。もうひとつは、先ほど来ありますように、成功体験を持つためにいろんな仕事をしっかり任せて、失敗しないようにともちろん指導はするけど、多様の失敗を許しながらでも、その人たちがしっかり結果を得る成功体験をして、それを次の糧にするという形だと思います。
 つい先日、「カンブリア宮殿」でありました。ロート製薬がなぜ最近「肌研(ハダラボ)」とか、新しいものができたかという成功体験の中で、いろんなことが職員の好奇心、まさにアクティビティのための仕掛けづくり、そして、そのために上司と部下の関係をどうするかと上手に話をされていたと思います。
 私たちの職場でもそういったことをやって、アグレッシブで、そして答えを自分で出していける、想像力あふれて物語を描いて仕事ができていく、そんな人間、職員をしっかり育てていくことだと思っています。以上です。

【まとめ】
 職員の資質向上ということについて、ダイバーシティ、シンパシー、アグレッシブという三つのキーワードで、市長の考えを聞かせていただいた。市民の期待にしっかり応え、本市の発展に寄与できる職員の育成にご努力いただきたい。


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