2011年3月8日(火) 3月議会一般質問
青字は答弁
質問テーマ [「共助」の具体的な進め方][次世代自動車への移行が市内産業に及ぼす影響への対応]

「共助」の具体的な進め方

 第五次総合計画は、平成23年度からの10カ年計画として策定され、その基本構想における基本理念は「ともに生き、ともにつくる」とされている。生産年齢人口の減少による税収低下の危惧、高齢化の進展による社会保障費の増大傾向の中で、自助・共助を広げていかなくてはならないという認識に基づくものと言える。
 しかし現実には、核家族化、サラリーマン化の進展の中で、共助を進めるべき地域力は低下の傾向にあり、未だ回復の方策は示されていない。加えて、行政が期待する共助とはどんなものかということが不透明なものであり、まだ市民の中には浸透していない。自助はわかりやすい概念であり推進方法も考えやすいものだが、共助を進めていくには、まだまだ乗り越えなければならない、大きな壁があると言える。
そうであるが故に、特に共助を重点的に進めなければならない分野で、どのような地域活動主体にどのような活動を期待するのか、行政はどんな地域力育成・支援を行おうとしているのかなどを明らかにする必要がある。そこで共助を具体的に進めるために、以下の2点について伺う。

【1回目質問】

  1. 特に共助の推進を期待する分野について
  2. 地域力育成・支援の方策について
【答弁要旨】
  1. 共助の推進を期待する分野についてでございますが、地域の絆の弱まりが危惧される中であっても、防災・防犯・交通安全など日常生活の安全安心の確保や子育て支援、高齢者の居場所づくりなど、生活に密着する様々な分野で今まで以上にきめ細かな対応が求められております。
     地域で力を合わせ取り組むべき課題、分野は、地域によりそれぞれ異なり、地域のことはそこに住んでいる方々が一番よく知っておられます。既にいくつかの地域では、住民の力を結集し、身近な課題を住民自らの力で解決しようと取り組んでおられるところもあり、今後このような取組が多くの地域、生活に関わるあらゆる分野で広がっていくことを期待しております。
     また、共助の形としては市民一人ひとりが共通の課題解決に向け力を合わせ活動しているNPOやボランティア団体のような取組もあり、こうした活動の重要性も認識しなければならないと考えております。地縁の絆に頼るばかりでなく、様々な立場の市民が連携することが大切であると考えております。
  2. 行政が行う地域力育成・支援についてでございますが、現在地域コミュニティに対しては、地域の絆づくりのための拠点として、校区市民館を情報の受発信、住民の交流、地域課題の共有の場としてのコミュニティセンター化を進めるとともに、その施設を担う人材の育成も重要であることから地域スタッフの研修にも取り組んでいるところでございます。
     今後も、自助・共助を基本として地域の力を一層高めていっていただきたいと考えており、地域のまちづくりのリーダーを育成する地域人材育成講座の実施など、更なる人材の育成や発掘、加えて補助金の統合など地域の自主性を高め、地域の力を発揮できるようなしくみづくりにも意を用いていく必要があると考えております。
     こうしたことを通して、地域が自立し自らのまちづくりに取り組んでいけるよう行政としても支援してまいりたいと考えております。

【2回目質問】
 (1)(2)をまとめて、さらに2点について伺う。

  1. 特に共助が期待される分野としては、「防災・防犯・交通安全など日常生活の安全安心の確保や子育て支援、高齢者の居場所づくりなど、生活に密着する様々な分野」であるとのお答えだった。
     共助の必要性ということについては、先ほど申し上げたように、高齢化の進展などによる社会保障費の増加、生産年齢人口減少による税収の低下傾向などがその原因。しかし、この認識は行政にはあるものの、一般市民の間にはまだ高まっていない。これを高めなければ、共助を進めようと言う市民は出てこないということになる。
     ご答弁では「市内のいくつかの地域で、住民の力を結集し、身近な課題を住民自らの力で解決しようとする取り組みがあり、地域、生活に関わるあらゆる分野で広がっていくことを期待する」ということだったが、期待するばかりでなく積極的に実現するための方策を講じることが必要なはず。
     それをより確実に行うためには、「目標」をしっかり定め、その目標を達成するための合理的な「方策」を選択するという、戦略的な考え方が必要だということ。
     そこでまず、「目標」について。共助が必要との認識が示された分野において、どんなイメージの共助をどの程度行うなど、共助を進める目標をどのように考えているのか、あるいは今後どのようにしてそれを定めて行こうとするのか、認識を伺う。市民の皆さんに共助をどれ程進めればいいのかという共通の認識を広めることなく、行政の共助の認識と市民の認識がずれてしまうことになれば、必要な公共サービスに漏れや重複が起きかねない。そういう意味でも共助の目標をしっかり見定める必要がある。
  2. 共助を進めるための合理的な方策について伺う。
     地域力育成・支援の方策については、「校区市民館のコミュニティセンター化の推進、地域人材育成講座の実施によるまちづくりリーダーの育成などを行う」というお答えだった。
     地域力の育成で最も重要なことは、いかにしてリーダーを発掘・育成していくかということと言える。しかしながら、共助を進めて行くには、圧倒的にそのリーダーが不足しているのが現状。
     一方、共助の推進ということは、これまで公助により行っていたものを共助に置き換えて行くことであると見ることもできる。つまり、行政職員が行っていたことを市民に委ねていくという要素がある。 であるならば、その過渡期においては、市の職員が一市民として共助のリーダーとしての役割を担うことが必要であり、それが積極的にできるように、何らかの措置を考える必要があるのではないか? 「隗より始めよ」ということ。
     会社勤めをしている市民に、地域活動のリーダーになることを期待するのであれば、まず、市の職員がその模範を示すべき。市の職員が率先して、プライベートの部分で地域活動のリーダーとなることを奨励するとか、必要なスキル等を学ぶ機会を提供するなどが考えられる。
     そうすることで初めて、一般市民の意識が啓発されリーダーの役割を継承する市民が生まれてくるのではないか? このことに関してどのように進めていくのか、認識を伺う。
【答弁要旨】
  1. 共助を進めるにあたっての目標でございます。
     市民協働のまちづくりでは、すべてを行政に頼るのではなく、まずは地域の身近な課題は自分たちで解決するという共助の意識をもっていただくことが重要であると考えております。
     例えば、大災害時に行政の支援がすぐに届くとは限らないことから、まず自分の生命維持のために飲料水などを確保した上で地域での助けあいのしくみやその心構えを地域でつくっていただくことが大切でございます。
     また、平成20年度から市内4校区で「住みよい暮らしづくり計画作成モデル事業」に地域と一緒に取り組んでまいりましたが、地域のまちづくりにおいて何より地域の皆さんと市でその目的・目標やそれぞれの役割を共有することの重要性を再認識したところでございます。
     様々な施策事業に対し、市がどこまでやるというような目標を一括りに定めることはできませんが、地域力の向上に向け、今後あらゆる分野で、又機会を捉えて市民と市が議論し意識を共有しながら取り組むことが肝要であり、それが推進されるようになるような仕組みづくりを検討してまいりたいと考えております。
  2. 市職員が共助のリーダーとしての役割を担う仕組みについてでございます。
    市民協働によるまちづくりを新たな公共の創出という観点で市民に行政の一部を担ってもらうという考え方もありますが、現在の社会の複雑化に伴う新たなニーズに行政がすべて対応することは困難であり、地域での市民参加が必要不可欠であると考えております。市職員が率先してその活動に参加することが大切であると認識しております。
     現在、本市の人材育成基本方針の中では、職員は地域活動やボランティア活動に積極的に取り組むこととしておりますし、休暇制度も整備し、管理職、若手職員それぞれに研修を実施し、その意識の醸成に努めてきたところでございます。
     地域活動への参加は自発的なものであると言っても、市職員である以上積極的に参加すべきものであり、今後においても市民協働の周知や研修の充実に努めるとともに、業務に取り組む過程で、今まで以上に市民協働推進員などが中心となり意識の醸成・共有を図りながら地域活動への積極的な参加を促していきたいと考えております。

【まとめ】
 「目標」については、「目標を一括りに定めることはできないが、あらゆる分野で、機会を捉えて市民と市が議論し意識を共有しながら取り組むことが肝要であり、それが推進されるようになるような仕組みづくりを検討する」というお答えだった。是非、しっかり進めていただきたい。
 次に、市の職員が共助のリーダーとしての役割を担うことを奨励するという「方策」については、「今まで以上に市民協働推進員などが中心となり意識の醸成・共有を図りながら地域活動への積極的な参加を促していきたい」ということだった。
 私が知っている市役所の職員の方々の中にも、既にプライベートの部分で地域づくり活動に積極的に参加している方がいる。大変、活き活きと活動されている様子を目の当たりにしている。職員の方々が、地域の中に入りその実情をしっかり理解すること、またその活動を通じて内外の人間関係を形成していくことは、今後の市役所における業務にも必ずプラスになるはず。
 多くの職員の皆さんが地域活動に参加し、その発展の起爆剤となることを期待する。

次世代自動車への移行が市内産業に及ぼす影響への対応

 本市では低炭素社会実現手段の一つとして、公用車として電気自動車を導入したり、電気自動車用の無料利用ができる急速充電器の設置をするなど、率先して電気自動車の普及にあたってきた。このことが回りまわって本市の産業にどのような影響を及ぼすかは、しっかり考えておかなければならないこと。
 昨年は、国内二つの自動車メーカーから量販用電気自動車が発売されている。自動車の動力が内燃機関から電気モーターへとの流れは確実に動き始めている。このような流れが加速すれば、自動車関連産業には大きな構造変化がもたらされることが考えられる。自動車関連産業のウェイトが高い本市製造業においては、大きな衝撃をもたらすものとなる可能性が高いと言える。大変重大な問題。
 これらの動向を的確に見極め、いち早く対応策を講じていくことが、地域間競争を制し地域経済を発展させ市民の働く場を確保していくために大変重要となる。以上により、以下の2点について伺う。

【1回目質問】

  1. 自動車関連産業の構造変化をどのように予測しているのかについて
  2. 本市製造業への影響と対応をどのように考えているのかについて
【答弁要旨】
  1. 「自動車産業の構造変化に関する予測」でございますが、地球温暖化や化石燃料の利用制約に対する世界的な関心の高まりなどから、自動車産業におきましてもハイブリッドカーや電気自動車など、いわゆる「次世代自動車」の普及への取組みが積極的に行われています。
     その中で、電気自動車につきましては「価格」、「走行距離」、「充電インフラ」など、本格的な普及に向けての課題克服には相当の期間を要するものと言われておりますが、現在、既に実用化から量産化の段階に進んでおり、また、経済産業省は昨年4月公表の「次世代自動車2010」において、2020年の国内における次世代自動車の普及目標を20〜50%に設定しているところでございます。
     こうしたことから自動車産業の今後につきましては、これまでの内燃機関自動車から、電気自動車など次世代自動車を中心とした構造へ移行していくものと考えております。
  2. 「本市製造業への影響と対応の考え方」でございます。
     自動車産業が次世代自動車を中心とする構造へ移行していく際には部品関連を始め販売や整備など、多くの分野において様々な影響が生じるものと考えています。
     本市産業の基盤である製造業への影響につきましては、電子部品や内装品、塗料の製造といった業種では影響が比較的少ないものの、動力源がモーターなどへ変わることに伴い、これまでのエンジン周りの部品製造においては大幅な需要の減少が想定されます。
     こうした予測される影響への対応につきましては、企業が行う技術開発や新たな事業への取り組みなどに対し、国や県などとも連携する中で支援体制を構築し、企業のニーズに応じた対応を迅速に行うことが求められるものと考えております。

【2回目質問】
 (1)(2)をまとめて、さらに2点について伺う。

  1. (1)については、自動車産業は将来的には、内燃機関自動車から電気自動車など次世代自動車を中心とする産業構造へと移行していくものと考えているとのお答えだった。(2)の本市産業への影響と対応については、「エンジン周りの部品製造においては大幅な需要の減少が想定される」また「国や県などとも連携する中で支援体制を構築し、企業のニーズに応じた対応を迅速に行うことが求められる」ともお答えいただいた。
     本市産業の中で自動車関連産業は大きなウェイトを占めるものであり、次世代自動車への移行による影響がどれ程のものになるかは、本市にとって極めて重大な関心事であるはず。であるならば、しっかり調査し予測することが必要なのではないか?
     既存企業の技術力向上や新事業への取り組みで対応できる程度の変化なのか、あるいは地域外の企業を誘致しなければ対応できないものなのか、判断するための材料として調査結果が必要と考えるが、認識を伺う。
  2. 大きな変化は必ずチャンスを伴うと考えるべき。自動車関連産業の構造変化の中で取り組み導入すべき新技術があるとするなら、その技術を自動車ばかりでなく他の製品での応用も行うなど、豊橋がそういった新技術の拠点となることも考えられる。
     例えば、電気自動車では必ず二次電池が使われるが、これは自動車ばかりでなく、家庭で太陽光発電などを行う際にも使われる可能性がある。そうであれば、二次電池の研究・製造の拠点となることで、この変化による需要の減少を、逆にプラスに転化することにもなり得る。
     このようにして、変化をチャンスとするためには、経済界、大学などの研究機関との連携による、当地域の知識や情報を総動員した体制での、ビジョンづくりが必要なのではないか? 当地では、産学官が連携して「東三河2015構想」や「国際自動車コンプレックス構想」などを作ってきた経緯がある。是非、この経験と風土を活かしていただきたい。
     今後、次世代自動車の普及に伴う産業構造変化に対する、産学官連携による、本市の産業振興のあり方を示すビジョンづくりの意志、また、その方向性などについて考え方を伺う。
【答弁要旨】
  1. 自動車に関連する企業は、製造部門、材料などの資材部門、さらに運輸部門や販売・整備部門など、製造業からサービス業にわたっており、産業として非常に広い裾野を持っております。
     そのため、次世代自動車への移行が、どの産業分野や業種に対し、どのような影響を与えるのかという点については、今後の技術開発や普及の仕方など、自動車産業を取り巻く環境変化の動向を見極めることが必要であると考えております。
     また、移行の方向性に対して、本市の産業が持つ潜在能力や可能性、そして、必要とされる技術や業種の集積状況を把握・分析した上で、その対応を図らなければならないものと考えております。
     間近に迫る自動車関連産業の大きな変化へ備えるためにも、企業が行う先進的な技術開発などの支援とともに、効率的な支援策を検討する上におきましても、地域企業の考えを伺い、関係者との意見交換を行うなど、地域産業の内在する能力についての状況把握に努めてまいりたいと考えております。
  2. 本市が今年度作成しております産業戦略プランにおいても、地域産業活性化のため、地域産業拠点の形成による本市の産業基盤強化とともに広く三遠南信地域が連携し、地域の主要産業である次世代自動車産業の集積を目指すものとしております。
     本市地域ではサイエンスクリエイト21計画の策定時より、新たな産業形成の取組みにおいては産業界を主体に、技術開発については大学などの研究機関が、インフラ整備や推進支援については行政が、それぞれの役割を担うことを基本とする産学官連携の体制がしっかりと根付いております。
     こうしたことを背景として、本市産業の基盤である自動車産業の新たな取組みを成長のチャンスと捉え、産学官が一体となって取組むことは非常に大切であり、その認識を共有するためにも、新年度には、関係機関の参画する中で研究会を組織し、産業戦略プランに基づくビジョン、あるいは計画などにつきましても検討してまいりたいと考えております。

【まとめ】
 「自動車産業の新たな取組みを成長のチャンスと捉え、産学官が一体となって取組むことは非常に大切と認識し、新年度には、関係機関の参画する中で研究会を組織し、産業戦略プランに基づくビジョン、あるいは計画などについても検討する」という、大変積極的なご答弁をいただいた。研究会では、是非とも壮大なビジョンを描いていただくことを期待する。大きなビジョンには発信力がある。小さなビジョンでは人や企業を動かすことができないから。まさにシティ・プロモーションということ。
 先ほどは、二次電池の可能性について触れたが、もっと広く、新エネルギーの研究・生産拠点になるという可能性も考えられる。本市は海に面している。遠州灘には、燃える氷と言われるメタンを主成分とするメタンハイドレートが豊富に存在すると言われており、今後の活用が期待されている。
 また、昨年の12月に日経新聞に紹介されたオーランチ・オキトリウムという沖縄で見つかった藻が、昨今注目されている。新しい藻類バイオマス。これは汽水域に生息する藻であり、従来の藻の10倍以上の高率で石油を産生すると言われている。これならカーボンフリーであり、大気中のCO2を増加させない。仮に、深さ1mの水槽で培養したとすると、面積1ヘクタールあたり年間約1万トンの炭化水素を作り出せるというもの。これを三河湾で培養することも考えられる。どちらも10年後の商業化が期待されているもの。
 このように、本市のロケーションは新エネルギーの研究あるいは生産拠点としてのポテンシャルも高い。地域間競争に勝てる企業誘致の思い切った優遇施策の検討も併せ、是非この機会に、そのポテンシャルを活かせるよう検討して頂くことを期待する。


戻る