2010年12月3日(金)〜7日(火) 基本構想特別委員会
青字は答弁
質問テーマ [10年後の人口] [政策の新規性] [電気自動車登場と産業構造変化]
[地球温暖化による様々な環境変化への適応] [自助・共助の進め方]

 平成23年度からの豊橋市の10年計画「第5次豊橋市総合計画」の内、「基本構想」については議決事項となっており、その原案に対して質疑しました。

10年後の人口

【1回目質問】

  1. 目指すまちの姿について、より具体的に「人口」「土地利用」「総合交通体系」について記載されている。
     その中で、「土地利用」「総合交通体系」については目指す方向性が示されているが、「人口」については「概ね372,000人になります」という表現になっている。目指す方向性ではなく、見通しを述べているに過ぎない。目指すまちの姿として、序論の「社会潮流と基本認識」を考慮した上で、目指すべき人口を示すべきではないか?
  2. また、それを実現するための「産業の目指すべき状態」、その結果としての「目指すべき市財政の状態」などを記述すべきではないのか?
【答弁要旨】
  1. 人口は、都市の規模や活力を示す最も基本的な指標であるとともに、行財政運営上の様々な場面で参照される重要な数値でもあるため、基本構想においてその将来値を設定するにあたっては、客観的な合理的な説明が可能な方法により行うことが妥当であると考えています。
     そこで、国立社会保障・人口問題研究所をはじめ多くの機関や自治体に使われているコーホート要因法を用い、本市の将来人口を分析・推計したところ、平成32年の人口は約37万2千人で、平成22年よりも減少するという結果を得ました。
     この結果を踏まえ、将来人口は減少傾向にあることから、目標値ではなく推計値を掲げることとし、「概ね37万2千人になります」という表現にとどめたものです。
  2. 産業や財政につきましては、こうしたまちを支えるものとして、基本構想の「まちづくりの大綱」、基本計画における「戦略計画」及び「分野別計画」並びに「基本計画推進のために」の中で、取組の方針や目標などをお示ししております。

【2回目質問】

  1. 二つまとめて2回目を伺う。
     現状の税制が大きく変わらなければ、人口の減少により市民税をはじめ税収の減少が考えられる。また、高齢化も進んで行くことも間違いないわけであり、それは扶助費の増加も意味するものとなる。歳入、歳出の両面から財政の硬直化が進んでいくということが予想される。それは、町の魅力を高める余裕がなくなることであり、地域間競争を勝ち抜くことも難しくなり、まさにジリ貧のシナリオしか描けなくなってしまうということになるのではないか? 「輝き支えあう水と緑のまち・豊橋」と示されているが、どうやって輝くことができるのか見えない。
     財政の硬直化を止むを得ないものとして受け入れていく、つまり輝かないのか、それとも何らかの方法で財政硬直化を阻止していく考えがあるのか、阻止するというならどういう方法を考えているのか?
【答弁要旨】
  1. 硬直化の要因として義務的経費に人件費、扶助費、公債費があげられ、その中の扶助費は少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少などにより増加するものと見込んでおりますが、現在策定を進めております新たな行財政改革プランに基づきまして人件費や物件費の削減に努めるほか、市債の計画的な借入により公債費の抑制をはかり財政の硬直化を防いでまいりたいと考えています。

政策の新規性

【1回目質問】

  1. 「まちづくりの基本理念」では、冒頭、「世界の社会経済情勢が大きく変化している」、さらに、「従来の価値観や仕組みでは対応することの難しい課題に直面」という記述がある。にもかかわらず、「まちづくりの大綱」では第4次総合計画における「施策の大綱」と照らし合わせても違いがわかりにくい。従来の価値観や仕組みではないと言える、新規性がどこにあるのか?
【答弁要旨】
  1. 既に第4次においても、少子・高齢化、国際化の進行や環境など様々な問題に対する認識を持ち、行政がリーダーシップを取り全力で取り組んできたところです。しかしながら、社会潮流は、想定したより更に急激に変化したことから、今後の町づくりは今までの行政主導では成り立たなくなってきています。
     こうしたことから、今回の第5次総合計画では、市民、事業者、行政が一体となって自らの役割と責任を自覚しながら、ともに考え、協力してまちづくりに取り組んでいくことがなお一層必要となってきたため、従来の価値観を見直し、第4次の基本理念「ともに生きる」を「ともに生き、ともにつくる」という考え方に変更し、どちらかというと行政主導であったまちづくりから、自助・共助・公助の考え方に基づくまちづくりを進めていくものです。
     なお、「まちづくりの大綱」は、行政分野別の政策を6つの柱としてまとめたものであり、今後10年間における本市の総合的な行政運営の基本となるものであり、大きく変わるものではないと考えております。

【2回目質問】

  1. 第4次における基本構想では、「W.基本構想推進のために」の中で「(1)市民参画の推進」として、協働による町づくりが示されている。今のご答弁では、第4次から取り入れられている市民協働という仕組みと、自助・共助・公助という補完性原則に基づく仕組みとが、異なるものであるという認識であるという理解をされているということだと思う。
    そもそも、補完性の原則というのは、1993年にはデンマークがEUに加入する際に示された概念であり、第4次のスタートする時にはあったものである。また、自助・共助と市民協働が別物であるのかということについては、少なくとも本市においては別物ではないと考えるべきものと言える。なぜなら、平成19年4月に施行されている豊橋市市民協働推進条例の第6条には市民協働の基本施策が掲げられており、その(2)には「市民が互いに支えあうことができる仕組みづくりに関すること」が挙げられている。この(2)は共助そのものであり、市民協働の一つと位置付けていると言える。補完性の原則ということについては第4次から取り入れているものであり、新たな仕組みとは言えないのではないか? それでなぜ想定以上に急激に変化した社会潮流に対応することができるのか?
  2. 財政の硬直化が心配されることに対して、補完性の原則導入を推進することで歳出の抑制をはかることは理解できる。ただ、歳入の増加策が示されていないのはなぜか? 健全な財政状態を作るために、歳入・歳出の両面から取り組むことが必要なのではないか。
【答弁要旨】
  1. 第4次は市民と行政とのパートナーシップにより、市民協働によるまちづくりをお示しし、市民協働による取組みを推進してきたことから、市民協働の考え方は市民の皆様には浸透してきたものと考えています。
     第5次では、市民と行政との協働に、補完性の原則を更に進めた市民と市民の協働も加えた考え方をお示ししました。
    基本構想の実現のために、地域の身近な問題を自らのことと考え、それぞれの生活の中で解決に努めること(自助)、個人や家庭で対応できないことは地域で力を合わせて取組むこと(共助)の考え方を、更に明確に表したものでございます。
  2. 財政の硬直化への対策としまして、歳入の増加策でございます。
     最も重要な収入であります市税につきましては、地域産業の振興により税源の涵養を図るとともに、収入率の向上策としまして、市税の広域徴収体制や公金債権管理の取り組みを進め、財源の確保に努めてまいりたいと考えています。
     あわせて、広告収入などの新たな自主財源の確保にも取り組み、歳入の増加を図って参りたいと考えています。
     歳入、歳出の双方において様々な取り組みにより財政の硬直化を防ぎ、健全な財政運営の維持に努めて参りたいと考えています。

電気自動車登場と産業構造変化

【1回目質問】

  1. 「1. 活力と魅力にあふれるまちづくり」では、「三河港など広域的な交通・物流における優位性を存分に活かして、農工商のバランスがよく多様性に富んだ足腰の強い産業の形成を促す」と示されている。取り組みの項目としては、7つが挙げられているが、その2番目に工業の振興が挙げられている。また、本市の工業の中では自動車関連産業が最も大きなウェイトを占めている。
     ところが、近年自動車関連産業ではガソリンエンジン車から電気自動車へと大きな技術革新が進行しており、自動車関連産業の構造に著しい変化をもたらすことが考えられる。今後10年を見通した時、本市の製造業に大きな影響を与えることが予想できる。このことに対して、どのような取り組みを考えているのか?
【答弁要旨】
  1. 本年度スタートした「三遠南信地域基本計画」は、地域の主力産業である輸送機器関連産業が、世界同時不況で大きな影響を受けた中、地域の強みを生かした4つの新産業を創出しようとするものです。
     そのプロジェクトの一つに、自動車の環境技術等に対応する「次世代輸送機器産業クラスタープロジェクト」がありますが、特に、急激な変化への対応が迫られる同産業は、広域連携により一丸となって取り組むことが必要であると考えております。
     その取り組みですが、本市も係わる中で、まず、フォーラムや大企業とのマッチング会の開催などを進め、中小企業者の意識を高めつつ、同時に新産業への参入や軽量化技術等の高度化に取り組んでいけるようにしていきたいと考えています。

【2回目質問】

  1. 先日の日産自動車の電気自動車の発表の際には、2012年には年50万台の生産・販売を目指す方針が示されている。既に実証試験の段階から量産の段階に移行しつつあると言える。予想以上に早いペースで業界の構造変革が進むことが考えられる。 市民の働く場の確保ということを考える時、既存企業の新産業への参入ということで間に合うのか?とか、あるいは、市外企業の誘致を進めるとしたら、市内のどんな特性を活かしたどんな方策があるのか?など、これまで自動車関連産業で働いてきた市民が、引き続き職場を得ることができるための方策について、考え方を伺う。
【答弁要旨】
  1. 豊橋、浜松地域は、輸送機器関連産業、光・電子関連産業、精密加工産業などの全国的な集積地域であり、また自動車港湾である三河港など、既存の産業集積と自動車の物流機能など立地条件などの強みがあり、情報などの連携がとりやすい環境にあります。
     この強みを活かしたネットワークを進めることにより、産業の厚みや広がりをつくりながら、更なる産業集積を図っていきます。

【まとめ】
 本市に立地する自動車関連産業が電気自動車の登場による業界の構造変革に適応できるかどうかは、市民の働く場を引き続き確保していけるかどうかの、非常に重要な課題と言える。また、このことはこれまでに経験したことのないような大きな変化への対応を求められているというものである。重大な決意を持って臨まれることを期待する。

地球温暖化による様々な環境変化への適応

【1回目質問】

  1. 序論の「社会潮流と基本認識」の「3. 深刻化する地球環境問題」では、「資源枯渇や地球温暖化など地球レベルでの環境問題を深刻化させてきた」という認識が示されている。もちろん、ここでいう環境問題の進行を食い止める努力は必要だが、資源枯渇や特に地球温暖化による様々な環境変化への適応について、「4. 環境を大切にするまちづくり」でも「5. 安心して暮らせるまちづくり」でも触れられていない。資源循環への取り組み、気象の激甚化による気象災害の増加などに対する記述、あるいは、温暖化による農作物の適地遷移、あるいは、温暖化による伝染病や病虫害の増加などの脅威に対し、産業部に対する情報提供など、どのように対応していくかということの記述がない。どのように認識されているのか?
【答弁要旨】
  1. CO2など温室効果ガスの排出を削減することによって、温暖化の進行を止めよう、緩和しようとする「緩和策」と、将来の温暖化を予測し、その影響への対応を考える「適応策」があります。
     すぐにも取組むことのできる温暖化対策としては、市民全員の意識の醸成や省資源・省エネなど具体的な取組みが重要であると考えています。
    市民全員の理解や直接的な行動・取組みが要点となりますことから、基本構想では、緩和策の記述を中心としておるところであります。
     また、「地球温暖化の影響による」というように限定した直接的な表現は、ございませんが、「まちづくりの大綱」の「2」の、「健やかに」や「5」の「安心して暮らせる」といった表現や記述に含まれるものと考えております。
     農業分野など個別分野への情報提供などの対応でございますが、今年3月に策定しました「地球温暖化対策地域推進計画」に定めており、今後設置する「地域協議会」の場などを活用しながら、しっかりと情報を共有し、対応してまいりたいと考えます。

【2回目質問】

  1. 気候変動の影響は、気付かない内に少しずつ表れてくる可能性が高い。この影響による変化をどのようにしていち早くキャッチするかは重要な課題と言える。気候変動の影響を把握する「組織」整備の考えについて伺う。
【答弁要旨】
  1. 先程、申し上げました、「地球温暖化対策地域推進計画」により、今後設置する「地域協議会」の場や環境行政を推進するために設置しております付属機関の環境審議会、こちらには専門家もおります。これらで情報を共有しながら対応したいと考えます。

【まとめ】
 地球環境問題の深刻化を認識しながら、当然発生が予想されるその影響や被害について、適応策や予防策を考えないとしたら、後々、大きな悔いを残すことになる。そうならないために、しっかり方策を検討していただくことを期待する。

自助・共助の進め方

【1回目質問】

  1. 「X. 基本構想実現のために」では、主に自助、共助、公助について書かれており、さらに、近隣市町村との連携を視野に入れてまちづくりを進めることが大切としている。その上で、自主的で自立的なまちづくりを進めるとされている。
     この中で、自助、共助ということを進めるということについて、市民の意識をどのように変えていくかが明確になっていない。少なくとも本市が抱える大きな課題について、第5次総合計画を進めていく10年間を通じて、市民に情報提供していくことが必要であり、そのための方策や体制についてどのように考えているのか
【答弁要旨】
  1. 自助・共助・公助を進めていくための情報提供は、大変重要なことであると認識しています。 そのための方策や体制づくりでございますが、まちづくり出前講座や意見交換会の開催など、様々な機会を捉え、市民の皆様に対し、総合計画をご説明申し上げ、基本構想の基本理念、目指すまちの姿の浸透を図る中で、自助・共助の意識の向上に努めてまいりたいと考えています。

【2回目質問】

  1. 市民に意識変革を求める作業は、この構想期間中ずっと行い続けるべき性格のものである。検討段階の意見交換会等で行っていればいいというものであるはずがない。基本計画の案を見ても、例えば、共助が必要とされる防災の部分では、自主防災組織の充実をはかるとし、防災訓練の回数を増やすという程度のものしか記述されていない。市民意識の変革を求めるために、情報提供以外にやるべきことがあると考えるが、どのように考えているのか認識を伺う。
【答弁要旨】
  1. 各部門において、様々な施策を実施する際に、市民意識の向上を求める方策を考えて行きたい。

【まとめ】
 補完性原理に基づき自助、共助、を広げるというのは、手段を表すものである。また、市民に強制的に押し付けることができないものでもある。なぜ、それが必要かが伝わらなければ、市民の自発的な動きは期待できない。市民の自発的な行動を促すために、市民の意識を変革していく努力が大切であることをしっかり認識する必要があることを指摘する。


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