T.大規模事業検討における広報・広聴のあり方について
【背景説明】
- 社会基盤づくりにおける地方分権の優れた点の発揮ということを考えると、それはそれぞれの地域の特性を生かした地域づくりをするということであり、地域の事情をしっかり織り込むという過程こそ重大な意味を持つと考えるべき。そこで、本市の大規模事業検討がなされる際に、市民の意見がしっかり反映されるための広報広聴ができているのかどうかを確認する。
長期にわたり市民に大きな影響を及ぼすテーマ(大規模施設や広域合併など)については、市民に様々な角度からの情報を提供し広く意見を聞く必要がある。このような大規模事業については、多くの市民が情緒的に判断をするのではなく、適切な時期に適切な情報を得た上で、外部環境や内部環境について正しく現状と将来について理解をし、しっかり判断できる状況を構築して行くことが必要。確固とした地方分権の受け皿であるために、地域内の情報流通の仕組みについて一層の整備が望まれるところであり、そのあり方について確認する。
【質問1回目】
- 市が行う大規模事業の広報手段について、現状と課題の認識について
- 大規模事業における市民の意見聴取の手段について、現状と課題の認識について
【答弁1回目要旨】
- (企画部長)市民との協働による市政運営を進める上で、広報の担う役割は極めて大切なものであり、これまでも様々な広報媒体を通じて情報の発信に努めてきた。とりわけ、大規模事業、最近の例では「子ども未来館」「保健所・保健センター」「豊橋駅東口の開発」「総合文化交流施設」などについて、計画段階から議会にお示しして議論を重ね、報道発表を行うとともに、事業の進捗に応じて、広報の特集号やホームページへ掲載するなど、情報の提供に努めた。
一方、情報の伝達には、受け手の「知る努力」も大切と言えるが、提供する側が、適切な時期に知りたい情報をいかに分かりやすく、またいかに得やすい手段で提供するか、さらには、「市民主体の行政」の時代にあって、行政に対する関心をいかに高めていくか、ということが、課題の一つではないかと認識している。
- (企画部長)定期的な市民意識調査や各種懇談会、あるいは市民のメールボックスや市長への手紙など、様々な方法によって市民のご意見を伺っている。特に、大規模事業などの重要施策については、計画策定時から、個別の意識調査や市民参加による検討会議、あるいはパブリックコメント制度などを通じて幅広い方々からの意見聴取に努めている。
しかし、例えば「意見聴取の仕組みや方法そのものの認知度が低い」「様々な意見がある中での活用のあり方」といった課題もあるので、今後は、意見聴取の機会や手段の周知方法、活用方法についても、更に検討していきたい。
【質問2回目】
- 「行政に対する市民の関心をいかに高めるか」という課題に取り組むに当たっては、まず市民の関心がどれほど高まっているかを知る必要がある。関心の高さを知る方法としては、行政側が伝えたいことがどれ程伝わっているか、ということを把握するということが適切なのではないか。
- 今後必要なこととしては二つ、一つは「受身の情報」を使って「取りに行く情報」の更新情報などを知らせること、もう一つは、「広報とよはし」に接する機会の少ない市民への、「受身の情報」の強化が必要ではないのか。例えば、「受身の情報」のもう一つの代表格であるメールマガジンにより、かなりの市民をホームページに誘導することができるのではないか。関心を高める手段である「受身の情報」で概要を伝え、更に詳しく知りたい情報については「取りに行く情報」を利用してもらうというように、媒体の性格に応じた使い分けと、情報が届いていないところを潰していくという考え方、が必要なのではないか?
- ホームページの充実という課題について。地方債残高についてはわかりやすく示されているものの、PFIにおける公有財産購入費の将来予定額については分かりやすい形での広報がされていないことに関する認識を伺う。
- 大規模事業を行う際に、便益と財政負担とのバランスが見えてこそ適切な意見が展開されることになるはず。ところが本市の検討のしかたはそうはなっていない。 従来の手順では、まず総合計画の中で必要とされる便益あるいは機能が示され、その後、どの程度の財政負担が必要であるかが示されるのは、概ね実施計画が公表される時を待たなければならない。一旦実施計画ができてしまってからでは、大きな変更は大変なことになる。財政負担を考えずに便益についてのみの意見を言う状態が続けば、「市民の皆さんのご意見に基づき、こんな立派な社会基盤をつくりましたが、お陰でこんな膨大な借金ができてしまいました。」ということになりかねない。実施計画を作る前の段階で市民から大規模事業の便益と財政負担に関する意見が収集され、それを踏まえて実施計画を作るべきではないか?
【答弁2回目要旨】
- (企画部長)情報は、「出せば終わり」というものではなく、「それがどれだけ伝わり、理解されているか」ということも、広報活動の推進にとって重要な視点であると認識している。もちろん、個々の情報全ての理解度を測ることは不可能であり、関心の対象や関心の高さは人によって様々だが、市や市民にとって重要な大規模事業などについては、より多くの市民に知っていただくことが大切であり、今後、理解度の把握や活用の方法について検討して参りたい。
- (企画部長)様々な広報媒体を組み合わせ、その特性を生かしながら、事業の段階に応じた情報をお伝えして参りたいと考えている。また、ご提案のあった広報誌やメールマガジンなどでのホームページへの誘導やホームページの充実についても、今後、研究していきたい。
- (財務部長)PFI事業における将来負担額は、ホームページにおいて各事業ごとにその内容を契約金額も含め詳細に記載しているほか、バランスシートの中に情報の一部として、他の将来負担となるものと合わせて記載しているが、ご指摘のとおり理解しやすさの点では工夫が必要であると認識している。PFI事業にかかる将来負担額は、今後事業の拡大に伴い増加するもので、財政健全化法の将来負担比率にも参入されるなど、その情報の重要性も増してくる。今後、財政健全化法の比率の情報や公会計制度改革による財務情報と合わせ、わかりやすい情報の提供方法について勉強してまいりたい。
- (総務部長)大規模事業を推進するに当たっては、市民協働推進条例を踏まえて、企画・立案の段階から、便益や財政負担などの情報を、できる限り、またわかりやすく提供するなど、積極的に市民意見の把握に努めてまいりたい。
【まとめ】
- 大規模事業の検討に際しては、市民がその便益と財政負担のバランスを見ながら考えられることが大切。更に言えば、複数の事例が選択肢として示されれば、その比較を行いながら検討することができるわけで、市民からはもっと多くの意見が出ることが期待できるはず。
大規模事業の検討を行う際の広報広聴のあり方の基本は、市民の中で行政とりわけ市政情報に関心を持つ方の比率がもっと高くなることを目指すことだと考える。そのためには、まず市民が市政情報に寄せる関心の程度について、現状がどの程度かを把握し、目標レベルを定め、目標達成を阻害する問題点を見出し、論理的にその問題を解決するという、正に戦略的な取り組みを期待する。地方分権は制度の変更のみでできるものではなく、地方自治体と市民が互いに刺激し合い共に成長することがどうしても必要。
U.地球温暖化の影響への対策について
【背景説明】
- 本市では地球温暖化防止に向けて、「豊橋市地球温暖化対策地域推進計画」を平成21年度末までに策定すべく、20年度から地球温暖化対策地域推進計画策定委員会を立ち上げ、市民、事業者、農業経営者アンケート、温室効果ガス排出量の現況調査などを行ってきた。
一方、地球温暖化は温室効果ガスの大気中濃度が高くなったことにより起こっているとされているが、多くの温室効果ガスは18世紀半ばの産業革命以後蓄積されてきたものであり、発生の抑制をしても容易に減るものではない。また、一部には地球温暖化は大気中の二酸化炭素の蓄積に起因するのではない、という説もあると言われている。いずれにしろ、地球温暖化による気候変動は既に起こっており、少なくとも当面は気候変動が進むことを覚悟して、備えをしていかなければならない。近年、頻発する集中豪雨も地球温暖化が大きく影響していると言われている。本市においても昨年8月の集中豪雨により柳生川などが氾濫したことは記憶に新しい。
一般的に、問題がある時にその対応としては、応急対策と恒久対策を講じることが必要とされている。応急対策とはその問題により生じる様々な弊害への対応策であり、恒久対策とはその問題の根本原因の除去ということ。そういう意味では今回の温室効果ガス排出状況の現状把握と削減対策は恒久対策に該当するものであり、この効果が現れるには何年もかかることが予想され、その間に様々な弊害が出現することが考えられる。今回行われたアンケートにおいても、市民や農業者は地球温暖化の影響に不安を感じていることが示されている。そこで、このような弊害を逸早く把握し被害を最小限にとどめる、もしくはピンチをチャンスにするような手段を考えておくことこそ、重要なのではないか。
【質問1回目】
- 地球温暖化が本市に及ぼす影響に関する認識について
- 地球温暖化の影響を把握する体制の必要性に関する認識について
- 地球温暖化の影響把握と対策に関する国、県、他都市との連携の現状と課題について
【答弁1回目要旨(環境部長)】
- [2にまとめて]
- 地球温暖化が及ぼす影響については、世界各地で気候変動による影響の可能性がある熱波、ハリケーン、洪水、干ばつ等の災害が報告されており、国内においても記録的な猛暑日や熱帯夜の増加、台風の強大化や豪雨の頻発など様々な影響が顕在化してきている。
本市においては、これまで気候変動による影響把握を目的とした具体的な調査や体制作りは行っていないが、農産物の収穫量の減少や品質低下、猛暑による熱中症や大気汚染リスクの増加、あるいは記録的豪雨による浸水被害など、温暖化を一因とした影響の不安を感じている。
今回行った市民アンケートにおいても、同様な不安や影響を市民も感じているという結果となっており、体制づくりを含めた影響把握の必要性を認識している。
- 温暖化により既に起こりつつある、あるいは今後起こりうる影響に対する「適応」の対策については、昨年6月に環境省・地球温暖化影響適応研究委員会から出された報告結果を受けて、今後、国でもさまざまな技術開発や研究が進められるものと思っている。
本市としては、こうした国の情報等に留意するとともに愛知県や技術科学大学などの委員から構成する地域推進計画の策定委員会や東三河の環境部課長会議などで意見交換を図りながら、連携策等幅広く勉強してまいりたい。
【質問2回目】
- [3にまとめて]
- [3にまとめて]
- 地球温暖化影響適応研究委員会が言うように、農林水産業、健康、災害、国民生活などへの影響と対策を考える必要があるとすれば、市役所内でも環境部ばかりでなく、関連する部署は多岐にわたることになるはず。関連部署による情報共有や協調した対策なども考える必要があるのではないか。
【答弁2回目要旨(環境部長)】
- [3にまとめて]
- [3にまとめて]
- この適応策の問題は、わが国ではまだ比較的新しい課題として、現段階では確率された把握方法や科学的知見が少なく、今後の研究に待つところが多くある。本市としては、まず、各所管で担当する行政分野の研究知見や対策等の情報の把握や庁内での共有化に努めていくことが重要であると認識している。
また、環境部としても関係分野の計画策定に参画し、温暖化の影響による将来予測の視点や適応策の必要性などについて働きかけることにより、庁内での連携を深めてまいりたい。
【まとめ】
- 本市では毎年「とよはしの環境」という冊子が作成配布されている。このレポートでは、様々な人間活動による環境汚染ということに焦点が置かれてデータが掲載されている。しかし、昨年の市民アンケートで示されたように、今後、市民の関心が地球温暖化に向いているとなれば、その内容についても検討を要する時期にきているのではないか。これについても今後の取組みを期待する。
今後早急に影響把握に向けた検討を期待するが、これは気候変動への適応の第一歩であるに過ぎないわけで、本当に重要なのはその次のステップである備えをするということ。地球温暖化は地球規模で進み、気候変動も全世界に及ぶ。しかし、地球上で本市と同じロケーションにあり、かつ本市と同様の地勢を有する地域は他にはない。即ち、気候変動への対応は、他地域と同様で足りるということはなく、本市独自の適応策を作成することが重要。早く影響把握の段階から適応策検討の段階に進めることを期待する。
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