T.「平和・交流・共生の都市宣言」具現化の推進について
【背景説明】
- 2006年の市制100周年を機に「平和・交流・共生の都市宣言」が行われた。宣言以後2年経った今、果たしてこの宣言が市民の中に浸透し、日々の暮らしの中に活かされているか振り返ってみると、まだまだ不十分と思わざるを得ない。是非、市民の中に運動を定着させることにより、もっともっと人の心が通い合う町になることを目指すべきだと考える。そこで、まずその必要性をしっかり理解するために、なぜ今この時期に豊橋で平和・交流・共生への取り組みが重要であるのか、三つのそれぞれについて目的の再確認をしたい。さらに、これまでの2年間の実績の評価や今後の取り組みの方向性を確認することを通じて、「平和・交流・共生の都市宣言」具現化の推進について伺う。
そこで、1回目の質問として2項目について伺う。
【質問1回目】
- 平和、交流、共生のそれぞれの目的について
- 宣言後2年間の評価と今後の方向性について
【答弁1回目要旨(企画部長)】
- 戦災により市街地の大半が焼失し大きな被害を受け、先人の方たちの大変なご努力により、今日、ここまで発展してくることができた本市にとって、平和への思いはとりわけ強いものがある。また、本市はこれまで、友好都市や姉妹都市、市民の様々な活動を通して国際交流に積極的に取り組んできた。さらに、近年、外国人市民が急激に増加し、全国でも有数の外国人市民の多い町となり、多文化共生の取り組みを一層充実させる必要があった。
そうしたことから、「国際協力などを通じた平和への取り組み」「交流による国際理解の一層の推進」「異なった文化を認め合い、すべての市民が安心して伸びやかに暮らす多文化共生社会の実現」を目指したもの。
- 宣言後2年間の評価については、この2年間、平和関連では、戦争体験談の映像化や戦争に関する「収蔵資料展」の開催、交流関連では、ブラジルからの教員の受け入れ、シンポジウムの開催やブラジル年との教育提携、また、共生関連では、多文化共生懇談会や外国籍児童アフタースクールの実施、放課後子ども教室の開設など、都市宣言の具現化のため、新たな取組みも積極的に展開してきた。こうした、行政はもとより、市民・地域・各種団体などとの連携や協働による様々な事業を地道に、着実に進めることで、一定の成果があがっているものと認識してる。
今後の方向性は、現在、平和・交流・共生の都市宣言推進計画・多文化共生推進計画を策定している。これまでの成果や現状と課題を分析し、市民のご意見もお聞きする中で、具体的な目標や取り組むべき事業を整理し、行政・市民・企業・関係機関が一体となって、計画的な取組みを着実に進め、「平和・交流・共生の都市」の実現を目指していきたい。
【質問2回目】
- このような目的の下で2年にわたる実践を行ってきた結果、果たして、大きな運動となり市民一人ひとりの行動変容につながってきたかを見ると、まだその状態にはいたっていないのではないか。これら三つの中では、平和、共生についてはその実現が市民生活に大きなプラスの影響を及ぼすことになる。それだけに行政が呼び掛けるだけでなく、市民の意識と行動が変わるところまで目指すことが重要だと思われる。市民がもっと関与するために、行政は何ができるのかという視点が必要になるのではないか。このことに対する認識を伺う。
- 今回の市長選挙における佐原市長のマニフェストを拝見すると、「多文化共生実現の約束」として前市長時代にはない発想がいくつか盛り込まれている。現在、都市宣言推進計画や多文化共生推進計画の策定が進められているということだが、この中に佐原市長の考えを盛り込むことになると相当大幅な変更の必要があるのではないかと思われる。このことにつき、スケジュール変更の可能性も含めて認識を伺う。
【答弁2回目要旨(企画部長)】
- 平和の取り組みについては、地方自治体として何ができるか、ということを踏まえる中で取り組みを進めてきた。これまでも平和教育などの実践や平和に関する様々な市民活動を通して、また国際交流・国際協力活動を進めることで、地方自治体としての平和行政を進めてきた。この2年間、先ほどお答えした様々な取り組みを行い、その充実も図ってきた。
また、多文化共生についても、市民が安心して伸びやかに暮らせる社会の実現を目指し、市民活動の促進や外国籍市民の地域活動への参加、国際理解教育の推進や市民への啓発など、その充実を図ってきた。なかなか一朝一夕に、市民の行動が目に見える変化として現れるまでには至ってはいないが、これまでの長い取り組みの中で、市民の意識も変わってきていると感じている。
今後は更に、国際協力・多文化共生へ理解を深めるための啓発活動や活動の担い手を増やすための環境づくり、人材の育成など、施策の推進を図ってまいりたいと考えている。
- 多文化共生のこれからの取り組みについて、本市はこれまでも、他の自治体の模範となる多文化共生施策を非常に積極的に、かつ先進的に推進してきた。多文化共生の抱える課題は、これまでの本市の年月の積み重ねの中で顕在化してきたものであり、その目指すべき基本理念は、一つのものだ。
現在、多文化共生推進計画の策定を進めているが、その作業において、これまでの事業を見直し、新たな取り組みについても、今後十分に検討し、具体的な年次計画を立てる中で、多文化共生の理念の実現のための施策の展開を図ってまいりたい。
【質問3回目】
- [済み]
- 3月議会で申し上げたように外国人の社会保障の問題、外国人子弟の教育の問題については、多くの課題を残している。また、外国人集住市営住宅では、共生に係る様々な問題が自治会まかせとなっており、住民は疲れきっている。共生するどころか、対立ということにもなりかねない切羽詰った状況にあり、早急な行政の支援を必要としている。
そこで3回目の質問として、現場主義を掲げる佐原市政において、このような問題に対してどのような姿勢で臨むのかについて伺う。
【答弁3回目要旨(企画部長)】
- [済み]
- 多文化共生の抱える問題は、「労働環境」「社会保障」「人権」「地域コミュニティ」「教育」など、非常に広範に及んでおり、市だけでできるものでもなければ、地域だけに任せる問題でもない。国・県・市、民間団体、企業、地域、住民など、多くの担い手が、それぞれの責任と役割を充分に認識し、連携・協力を一層深めながら、更なる取り組みを進めていかなければならないと考えている。
また本市においては、特に外国人が集住する東部地域において様々な課題が顕在化し、早急な対応が求められている。したがって、今後においても、常に現場に足を踏み入れ、地域の実情を充分に把握し地域の声をお聞きする中で、行政、市民活動団体、地域が連携し、新たな施策も積極的に展開して、地域への支援を強めていかなければならないと考えている。
そうしたことを、現在策定中の多文化共生推進計画の中で十分に検討し、具体的な年次計画を立て、スピード感を持って取り組んで参りたい。
【まとめ】
- 市民レベルでの国際協力ということについては、今年の夏、ネパールに調査に行かせていただき、豊橋の団体などが、子どもの教育や女性の自立支援などにつき、どのようなことが行ってきたのかということと、それぞれの成果について見てきた。
王制をしいていたネパールでは、1990年以降民主化運動が盛んになり、今年5月から連邦民主共和制に移行したばかり。その間、政治は荒廃し経済は低迷することとなり、庶民は混乱と貧困に苦しんできた。このような中での豊橋からの支援はいずれも大変喜ばれており、贈った側、即ち豊橋の皆さんのお話を聞くと、こちらもそれぞれ大きな達成感を得られているようだった。
もう一つの国際協力の例になるが、今年2月豊橋にユネスコ協会が誕生した。ユネスコ(国連・教育科学文化機関)の精神を実践しようという市民の集まりである。戦争の原因を無知と偏見にあると考え、教育支援などにより無知と偏見をなくすことで平和を実現しようとする活動に取り組んでいる。
今、申し上げた例は、いずれも平和の実現に寄与したいという市民レベルの活動であり、この輪をもっと広げるように行政として推奨していくことが、都市宣言における平和の具現化ということになるのではないか。「情けは人のためならず」という言葉がある。国際協力を進めることは平和の実現ばかりでなく豊橋のためにもなるはず。昨今、日本では殺伐とした事件が数多く報じられている。自分のことしか見えない人が増えていることによるのではないかと思う。多くの豊橋市民が世界に目を向けて、困難な状況にある人達を支援する活動に参加するようになれば、きっと豊橋自身が思い遣りに満ち溢れた町になっていくことになるものと確信する。
- これまで共生の都市宣言がされたものの、共生の最前線である市東部の市営住宅に市の幹部の方が訪れるということはほとんどなかった。是非、多くの幹部の方々に団地の様子を目の当たりにし、生の声を聞いていただきたい。そのことが、現場の皆さんに勇気を与え、元気を与えることになるはず。また、外国人に日本語を教えてくださるボランティアの方々もおられる。こうした皆さんの輪を広げる可能性なども検討していただければ幸い。企業の皆さんとの緊密な情報共有もしていただきたい。現場主義の実践により、他の都市の模範となる共生が実現することを期待する。
U.行政評価システムの改善について
【背景説明】
- 市が行っている様々な仕事について、誰を対象にし、何をどのようにしたいのか、その目的を個別に整理し、仕事をした結果、どれ程の成果や効果が上がっているかを評価することによって、より力を入れていくもの、やり方を改める必要があるもの、などを明らかにし、今後の仕事の改善に役立て、より良いものにしていこうことが行政評価の意義であるはず。言い換えれば、Plan Do Check Action のマネージメント・サイクルを確実にまわしていこうというもの。
ところが一方で、「評価に時間がかかる」「評価を理解するのが難しい」などの声が聞かれ、また、職員の皆さんの苦労にもかかわらず、大変なボリュームであることから見る事が大変であり、市民による客観的な評価を得ることも難しいものになっている。加えて、「チェックのための評価指標が事業の目的とずれているケースがある」「アクションとしての、評価結果の翌年度計画へのフィードバックが徹底されていない」などの問題も散見される。佐原市長はマニフェストで「全事業の必要性と意義の見直し」を掲げておられ、行政評価システムはまさにそのための重要なツールとなるはずであり、本システムの重要性が増していると考えられる。そこで、このシステムの問題点を見出し、改善の方向性を探るために、以下の2項目について伺う。
【質問1回目】
- システムの効用と課題の認識について
- 課題に対する改善の方向性について
【答弁1回目要旨(総務部長)】
- 2と合わせてお答えする。行政評価システムの効用については、市民の視点に立った計画・実施・評価のサイクルが確立できたことや、事業の点検に伴い、目的・コストに対する職員意識の向上が進んだこと、また、評価表・評価結果概要の公表などを通して、透明性が高まったことなどが挙げられる。
次に課題と改善に対する方向性については、例えば、評価結果の市民公表について、ホームページや広報とよはしなどで、お示ししているが、市民にとって細かな内容であることから、見やすさ、分かりやすさの点において工夫が必要であると考えている。ご指摘の「評価に要する作業時間」などの点は、私どもも課題であると認識している。「評価に要する作業時間」につきましては、評価表の一部について作成を簡素化することにより、作業負担の軽減を図るとともに、「評価指標と事業目的の整合」については、事業の目的を的確に把握した上で、より目的と整合の取れた指標に変更することも行っている。また、「評価結果の翌年度計画へのフィードバック」についても、評価結果を踏まえ予算要求結びつける仕組みについて研修等を通じて周知するなど、努力しているが、更なる改善を進める必要があるものと認識している。
評価の質を低下させずに効率的・効果的な評価を行うため、評価事務の簡素化や評価結果の活用などについて、現在、行政評価システム全般にわたって見直しを行っているところ。
【質問2回目】
- [2にまとめて]
- さらに以下の2点について伺う
- 仕組みの改善について
これまでの取り組みは、仕組みというツールづくりと研修というソフト充実という姿勢が窺えるが、マインドの醸成という面が不十分ではないか。仕組みをつくり、その使い方を教えても組織は動かない。常に目的意識を持って行動するように、意識付けをすることが最も重要。仏作って魂入れずとならないように、日常の仕事をする時に、常に目標を意識できるようになることが大切。このことに対する具体的な今後の取り組みについて考えを伺う。
- 視点の改善について
簡素化のためには、評価の視点を減らすことになるが、時代の変化の中で新たな視点の導入を考える必要もあるのではないか。例えば、国土形成計画では、「新たな公」を基軸とする地域づくりが掲げられている。つまり、市民協働による公共サービスの充実が問われるということだと思う。この点から見て、現在の本市の事業について行政でなければできない仕事だけになっているのかどうかという視点が必要になるのではないか。この点に関する認識を伺う。
【答弁2回目要旨(総務部長)】
- [2にまとめて]
-
- 常に目標を意識し仕事に取り組むことが大切であるとのご指摘に対して、今後の具体的取り組みの考え方は、行政評価の取り組みにあたりましては、これまでにも主査職から管理職にわたる「階層別研修」を開催するなど、職員意識の向上に努めてきた。また、平成18年度から取り組んでいる「業務改善運動」を通して、職員の改善意識を高めるとともに、全管理職を対象に目標管理制度を実施し常に目的・目標を意識できるような取り組みを行っている。
今後の取り組みは、行政評価活動という点については、評価活動がシート作成者の活動に終わることなく、職場全体の活動として定着するよう特に意を用いて行ってまいりたい。
- 本市事業について行政でなければできない仕事になっているのかどうか、市民協働の視点が必要になるのでは、という件について、従来から行政評価において、「妥当性評価」で官民の役割分担は妥当か、本来市で担うべき事業か、などについて、また「効率性評価」では、NPO、ボランティアの活用を図ることができないか、などの評価も行っている。
限られた財源を効果的に配分するとともに、市民参画のまちづくりを進めるためには、今後、ご指摘の視点が益々重要になってくるものと認識している。
【まとめ】
- 多様な仕事を画一的な制度に当てはめようとしていることに無理があるのではないか。大きな穴を掘る時にはパワーショベルを、小さな穴を掘るにはスコップという具合に、対象に合わせた道具の使い分けということを考える必要がある。例えば、政策・施策評価には成果指標として、アウトカム指標、つまり満足度とか便益を目安とすることが適切だ。しかし、これを計ることはなかなか大変なことなので、事務事業とか細事業についてはアウトプット指標、つまり仕事量を目安とすることでもいいのではないか。そのかわり、これらについては1年に1度の評価ではなく、日常頻繁に評価しマネージメント・サイクルをドンドンまわして行くことが大切。そのためには、目標を職場にしっかり掲示することと合わせて、進捗状況が一目で分かるような工夫が必要。市民も見られるようにすることで、客観的な評価を得ることも容易になる。トヨタ生産システムでは「目で見る管理」ということが行われている。是非、参考にしていただきたい。多様な仕事に対応できる柔軟なシステムとなるように、見直しを進めていただくことを期待する。
- 行政でなければできない仕事であるかどうかということを、何をもって判断するかという基準を定めていかなければならない。佐原市長が市役所の全ての仕事の必要性と意義を見直す場合に、何をもって必要性を見極めるかということと共通する可能性もある。是非、研究を進めていただくことを期待する。
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