2008年9月10(水) 一般質問
青字は答弁
T.東三河地域の広域合併に向けた取り組みについて

【背景説明】

  •  平成7年に改定された合併特例法では、住民の直接請求により法定合併協議会の設置を発議できる制度や、合併特例債制度の設置などが盛り込まれた他に、政令指定都市への移行や、町村の市への移行のための人口要件の緩和なども盛り込まれたことにより、その後10年にわたり平成の大合併と呼ばれる市町村の合併ブームが起こった。
     この間、本市では早川市長が二段階合併論を唱え、周辺市町村の合併の推移を見守ってきた。しかし、今年1月9日に経済団体の主催により行われた「平成20年東三河5市長2郡町村会長を囲む新春懇談会」において、1月15日に豊川市が音羽町、御津町と合併することに関連して、早川市長は次のように発言された。「私は常々二段階合併論を言ってきた。その第一段階が15日に終わる。豊橋が具体的に出す時には、東三河の市町村を選択できないと私は考えている」。このような発言がなされた後の今年3月に、東三河広域協議会の広域合併・道州制研究会の中間報告が出された。そこで、本市の広域合併に関する考え方を確認するために、この中間報告の内容に関連して、質問させていただく。
     さて、地方分権改革推進委員会の平成19年5月30日付け「地方分権改革推進にあたっての基本的な考え方」では、「住民に身近な基礎自治体について、さらなる体制の充実強化が必要である。それとともに、情報共有と住民参加の促進を通じて、多様性と創造性にあふれた住民本位の地域づくりを進めることが必要となる。これにより、真の民主主義の確立とともに、国民がゆとりと豊かさを実感し安心して暮らすことができる、確かな持続可能性を備えた社会を実現することができる。」としている。基礎自治体の体制の充実強化の目的を、「真の民主主義の確立と確かな持続可能性を備えた社会の実現」としているのだと言える。この目的の達成に影響する環境変化に対して、戦略的に対応していくことが、地方分権の時代の基礎自治体に求められていると言えるのではないか?
     また、今年7月4日に閣議決定された国土形成計画の中で、時代の潮流と国土政策上の課題として、本格的な人口減少社会の到来や急速な高齢化の進展などの経済社会情勢の大転換、安全・安心、地球環境、美しさや文化に対する国民意識の高まりなどの国民の価値観の変化・多様化、地域の自立的発展に向けた環境の進展などの国土をめぐる状況の変化をあげている。これらが正に、「真の民主主義の確立と確かな持続可能性を備えた社会の実現」に影響を与える要因と言えるのだと考える。
     東三河の広域合併を考えるに当たっては、このような全国に共通する状況の変化に加えて、東三河特有の状況の変化を予測し、それらに対応できる策としなければならない。このように合併の意義が明白になれば、自ずとそのエリアも最適なものが見えてくるはず。
     そこで、1回目の質問として3項目について伺う。

【質問1回目】

  1. 東三河広域合併のエリアについての考え方について
  2. 東三河広域合併で解決しようとする課題について
  3. 東三河広域合併に関する今後のスケジュールについて

【答弁1回目要旨(企画部長)】

  1. この研究は、東三河の全9市町村によって構成される東三河広域協議会の共同事業として行っているものであり、広域的課題の一つとして東三河地域が広域合併を行った場合に想定される効果や課題について調査・研究し、まずは関係市町村が情報を共有し、共通の認識に立つことを目的に行っているもの。
     したがって、エリアの設定についても東三河9市町村として検討しているが、いうまでもなく東三河地域は、豊川によって結ばれた運命共同体として歴史的にも文化的にも深い関わりを持つ地域であり、合併の枠組みという点から見てもいわゆる流域合併という分かりやすい地域設定であると認識している。
     なお、研究には、9市町村のほか湖西市と飯田市にも参加していただいており、現在整理中のシミュレーションでは、同じ豊川用水の受益地ということから静岡県の湖西市を加えた地域についても検討を行っている。
  2. 一般的に合併の実施にあたっては、その合併の意義や合併を行うことによって生じるメリットを対象地域の全ての住民が理解し共有することが何よりも重要であると認識している。
     今回の研究では、代表的な視点・基本的な視点として、広域連携の拡大強化という視点から「地域課題への対応」と「地域資源の活用」を、合併によって実現される新たな視点として「道州制への対応」と「行政権限の拡大」を取り上げて、意義やメリットの整理を試みた。今後、さらに具体的な合併の検討に入る場合には、あらためて様々な視点からの検証が必要になるものと考えている。
  3. 広域合併・道州制研究会では、現在、広域合併が市民生活に及ぼす影響などについて考察するため、行政基盤や産業、住民生活など様々な分野におけるシミュレーション分析を行っている。内部的なデータ分析・検証作業が若干遅れているが、こうした分析結果を加えて最終報告書としてまとめる予定となっている。今後、この研究成果をもとに東三河各市町村の共通認識を図りながら、次の段階に向けた対応について検討していきたいと考えています。

【質問2回目】

  1. 一つの自治体であるためには、歴史的にも文化的にも深い関わりを持っていることは重要。しかし、このことは合併の地域設定における必要条件ではあるものの、十分条件とは言えない可能性がある。その合併がどのような狙いを持つものかということにより、その意味を最大限に発揮するエリアを対象とすることが、十分条件を満たすために必要であろうと考える。今後の検討においては、是非このことをお含み頂くよう申し上げ、この件については終わる。
  2. 具体的な合併の検討に入る場合には、あらためて様々な視点からの検証が必要になるとのお答えだった。つまり、現在まだ解決しなければならない課題が明確でないとということではないか。では、そもそもなぜ東三河の広域合併の検討が必要だとお考えになったのか?
  3. 各市町村との共通認識はもちろん重要なことだが、早川市長は常々、市民の盛り上がりがなければ合併はできないと言われている。市民の意識が高まるためには、市民がしっかり考えられるように早い段階からの情報提供が重要なはず。このことから、周辺自治体との共通認識を図ることと平行して、市民への情報提供も積極的に行うべきことであろうと思われるが、どのように進めて行くのか具体的に考えを示されたい。
【答弁2回目要旨(企画部長)】
  1. [終了]
  2. 合併の持つメリット・デメリットや課題はそれぞれの市町村のおかれた立場や状況によって異なるものだが、合併の意義は、地域全体のメリットや課題を総合的に捉えたうえで、共通の目的・目標として見えてくるものであると認識している。今回の研究は、東三河地域のあるべき姿について検討するため、仮に広域合併という手段を選択した場合、東三河にとってどのような意義やメリットがあるのか、あらかじめ調査・研究し整理しておこうとするものです。
  3. 今回の広域合併の研究については、現在は行政レベルの検討を行っている状態にある。今後、検討を進めていく中で、それぞれの段階に応じた情報発信に努めていきたい。

【まとめ】

  • 東三河広域協議会の広域合併・道州制研究会の中間報告を元に、現状と今後の進め方について聞かせて頂いたが、正直なところ、大変失望した
     早川市長は、過去12年間、一貫して二段階合併論を主張してこられた。東三河において第一段階の合併が進められているその間に、次のステップのイニシアティブをとるべき豊橋市が、第二段階はどのように進め、どんな意義を持つ合併にすべきかという構想を練っていないはずはないと、密かに期待していた。しかし、その期待は裏切られた。今年1月には第一段階は終了したと宣言され、そして3月にこの広域合併・道州制研究会の中間報告が出されたが、ここまで確認したように、その内容は浅薄であり一般論の域を出ないものだった。東三河が今後迎えるであろう社会環境の変化、自然環境の変化への対応策を示すものではなかった。意義を明確にしないまま合併に進むことは、コンセプトを持たずに地域づくりを行うということに他ならない。チグハグな結果をもたらすことになるはず。また、最も重要だとされた、市民の意思決定のための情報提供の手段についても全く考えられていなかったようで、これから考えるということだった。これまで、子ども未来館や芸術ホールの企画の際にも言われているように、市民は結果のみを知りたいのではなく、検討の過程を知ることを望んでいる。検討過程の情報を把握することは、的確な判断をするために不可欠なことでもある。8月には出すとされていた最終報告も未だ出ていない。これでは、二段階合併論はただの問題先送りのための言い訳だったのではないかとすら、思える。
     地方分権は確実に進展している。地域づくりに対して消極的な地域にも、国が一律に施策を打ち出してくれる時代は過ぎ去った。積極的に考え、策を打ち立て、声を上げる地域にのみ、国は手を差し伸べることになる。地域主権の時代だからと言って、国や周辺地域との強い関係を持たず、孤立して地域が生きていくことがあり得ないことは明白。
     これまで以上に、地域経営という感覚が求められています。経営環境を的確に分析判断し、積極的に策を打ち立てて実行していく力と姿勢が求められている。自治体のエリアをどういう規模にしていくかは、地域経営をしていく上で最も基本的な問題である。もし、11月の選挙で選ばれる市のトップが、東三河広域合併のような重大なテーマについて問題を先送りする姿勢の人であるならば、豊橋市民はもちろん東三河全域の住民が重大な機会損失を被る恐れがあると言わざるを得ない。このことをしっかりお考え頂くよう申し上げておく。

U.新型インフルエンザ対策について

【背景説明】

  • H5N1ウイルスが変異し、ヒトからヒトへと感染する新型インフルエンザとして世界規模の爆発的大流行(パンデミック)を引き起こした場合には、人類は免疫を持っていないことから、罹患率、致死率も高くなることが予想され、国民の生命・健康・経済活動など社会全体に大きな影響を及ぼす、と専門家は指摘している。
     6月30日の読売新聞によれば、新型インフルエンザの発生に備え、国は10月に中国、韓国政府と初の3国合同訓練を行うことを決めたとのこと。また、8月25日の中日新聞では、「海外で発生した新型インフルエンザ対策で、国内への流入を防ぐには検疫が重要であり、大量の邦人帰国者や感染の恐れがある人への対応が必要となるが、人員不足が指摘されている」とし、さらに「厚生労働省の2009年度予算概算要求には、全国の検疫所職員増員のための人件費が盛り込まれる」と報じている。これらの記事は国が大きな危機感を持っていることを示している。
     パンデミック・インフルエンザ警報フェーズは、「人から人への感染が増加していることの証拠がある」という、レベル4にいつなってもおかしくない状況にあるといわれている。そこで、この新型インフルエンザについて本市がどのように認識し、どのように対応しようとしているのかを確認するため、以下3項目について伺う。
【質問1回目】
  1. 新型インフルエンザが発生した場合の、国・愛知県・豊橋市の推定流行規模について
  2. 新型インフルエンザ対策における国・県・市の役割について
  3. 本市の新型インフルエンザに対する現状の取り組みと課題について

【答弁1回目要旨(福祉保健部長)】

  1. 国は「新型インフルエンザ対策行動計画」で全人口の25%、3,200万人が新型インフルエンザに感染するとしている。
     そのうち医療機関を受診する患者数は、国全体で1,300万人から2,500万人、愛知県では73万人から140万人、本市では3万9千人から7万4千人になると推定している。また、死亡者数については、スペイン風邪(インフルエンザ)のような重度の場合には、全国で64万人、愛知県で3万6千人、本市で2,000人、中等度のアジア風邪(インフルエンザ)の場合には、全国で17万人、愛知県で9500人、本市では500人と推定している。
  2. 国・県・市の役割について、国・県においては、内閣総理大臣・知事を本部長とする「新型インフルエンザ対策本部」を設置し、それぞれ新型インフルエンザ対策の骨格をなす「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定・公表している。
     本市としては、愛知県が策定した「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき医療体制の確保、患者調査などを実施することとしている。
  3. 国や県等が開催する新型インフルエンザに関する研修会や模擬訓練などに、感染症を担当する職員を参加させ、最新の知見や技術を習得させるとともに、日ごろから国・県・他自治体と情報を共有化するなど連携強化を図っている。
     市役所内においては、平成18年1月に保健所長を長とする「豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議(7部18課)」を設置し、庁内関係各課と緊密な連携を図るとともに、本年1月には、連絡会議の構成員などを対象に新型インフルエンザ研修会と防護服の着脱訓練を市民病院において実施した。また、医療体制の確保という観点から、豊橋市医師会が設置した「感染症対策委員会」と定期的に新型インフルエンザに関する打合せ会議を開催するなど連携を深めることとしている。
     新型インフルエンザ対策の課題としては、一旦、国内で新型インフルエンザが発生した場合、封じ込めができるのか、医療体制が確保できるのか、電気・ガス・水道などライフラインを維持できるのかなど、平成19年3月に厚生労働省が設置した「新型インフルエンザ専門家会議」が「フェーズ4以降の対策ガイドライン」を提言・公表しているが、現段階で、国は具体的な対応策や法的整備、財政支援などについての方針を示していないため、国・県においても行動計画を見直していないのが現状となっている。
     今後、世界保健機関(WHO)・国・県の動向を迅速に把握するとともに、ガイドラインを参考にしながら、庁内危機管理体制を更に整備し、豊橋市医師会など関係団体との連携を深め対応していくこととしている。

【質問2回目】

  1. 2にまとめて質問する。
  2. いざ海外で新型インフルエンザが発生した場合の対策、すなわちパンデミック対策は、検疫所の水際対策、国内対策の二つが基本戦略とされている。特に国内においてはパンデミックをいかに封じ込めるのか、はたして豊橋市では封じ込めが可能なのか、また、一旦、パンデミックとなった場合にはどうするのか、迅速な対応が重要である。対応方法とそのための準備の進捗状況を合わせて伺う。
  3. 医療体制の確保については豊橋市だけではなく、東三河全体で協力・連携する必要があると思われるが、その認識について伺う。
【答弁2回目要旨(福祉保健部長)】
  1. 2にまとめて答弁する。
  2. 封じ込めとは、新型インフルエンザ発生初期の早期対応により、可能な限り感染拡大を防止し、パンデミックを遅らせることと言える。実際に、封じ込めが実行可能である場合は、人口密度が低く、交通量の少ない地域、離島・山間地域など自然障壁等により交通遮断が比較的容易な地域である。東京・大阪・名古屋などの大都市や、この豊橋市においては、封じ込めは難しいと言われている
     また、一旦、国内で新型インフルエンザが確認された場合、すなわちWHOが定めた6段階中のフェーズ4の対応としては、「新型インフルエンザ専門家会議」が作成した「フェーズ4以降の対策ガイドライン」を参考にして、行政・医療機関・企業・個人などが水際対策、公衆衛生対応、医療対応、社会対応を総合的に講じることにより、医療サービス・社会機能を維持し、可能な限り被害を最小化することを目的に対応することになる。
     現在、「医療体制のガイドライン」を参考にして、豊橋市医師会と発熱相談センター、発熱外来の設置について具体的な検討作業に取り掛かったところである。また、情報の共有化と技術の標準化という観点から、市職員等を対象とした講習会の開催、防護服の着脱訓練などを実施してきたが、今後、「事業者・職場におけるガイドライン」や「個人及び一般家庭におけるガイドライン」に基づき企業や市民を対象に啓発を行うこととしている。
  3. 東三河の医療体制の確保でありますが、新型インフルエンザが発生した場合には、周辺市町の多数の住民が豊橋市内の医療機関を受診することが予想されるため、地域医療体制の崩壊を防ぐためにも、東三河全体の協力・連携が必要だと認識しており、愛知県の担当部局にも連携体制を構築するよう申し入れしたところです。

【まとめ】

  • 新型インフルエンザ対策については、検疫所の水際対策を破られてしまうと、パンデミックの封じ込めは難しいとのことだった。因みに、米国では1918 年のスペイン風邪の流行時、住民の行動制限等の対策をとり被害を最小限にくい止めることができた地域がありました。当時、第1 次世界大戦で戦勝パレードを行ったフィラデルフィアでは犠牲者が激増したが、セントルイスでは、市長の英断による学校閉鎖、外出自粛により、医療機関の崩壊を防ぎ、結果的に犠牲者の増加が抑制された。このように、パンデミックの被害を大きくするか小さくするかの分かれ道は、医療機関の崩壊を防ぐことができるかどうか、医療従事者への感染が防御できるかどうかにかかっていると言われている。
     また、社会全体の機能を、特に人と人との接触をできるだけ抑えることが必要であり、このための外出自粛措置や事業活動の休止・在宅勤務などが長期に及べば、経済活動はもとより市民生活にも重大な影響を及ぼすことになる。
     平成18年には「豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議」が設置され庁内の連携が図られているとのことだが、これとは別に、長期の外出自粛措置に伴う影響など社会機能の維持に対する備えなどを研究・準備する必要があると考える。
     新型インフルエンザ対策は、現在のところ、保健所の感染症担当者が対応していると聞いているが、ライフラインや治安などの社会機能の維持ということまでが課題となるのであれば、市全体あるいは東三河全体の危機管理として、防災対策と同等の、さらに、日本のどこからも救援がこないということからいえば、防災対策以上の体制強化を図る必要があると考える。スピードも要求されている。
     まさに今、トップの英断が求められている。フェーズ4になってからでは手遅れになる可能性もある。各自治体トップの決断力の違いが、被害の大きさの違いに大きく影響することが予想される。早急な検討と対応を期待する。


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