1.日本人ブラジル移住百周年における多文化共生の取り組みについて
【背景説明】
- 百年前、日本はまだ貧しかったため、広大な国土を開墾する人材を求めていたブラジルに新天地を求めて多くの日本人が移住した。1960年代から1980年代にはブラジルでハイパーインフレが起こり経済は停滞し、日系人を含む国民生活を圧迫した。その頃日本は経済の安定成長期にあったことから労働力が不足し、1990年に出入国管理及び難民認定法を改正し日系ブラジル人の就労を認めたことにより、国内在住日系ブラジル人が増加している。このようにこの百年間、日本とブラジルは地球の反対にありながら助け合ってきた。またいつか日本人がブラジルでお世話になることもあるかもしれないと考えるべき。
- 一昨年の平和・交流・共生の都市宣言では、共生のためには信頼し尊重し合うことが大切であることを示している。信頼し尊重しあうための大前提として、日系ブラジル人の皆さんが日本人と同様に希望を持って生きていく権利を守ることが大切。
- 外国人を受け入れる地域社会では、異なる習慣の人々を迎えることで様々な問題も起こる。言葉の問題などから自治会の活動自身にも影響が出かねない状況にある。外国人にも是非、日本語や日本の生活ルールを理解してもらう必要がある。共生を進めて行くためには、自治会の活動がしっかりできる環境を守ることが大切。
(1)共生現場における主要な課題の現状について
ア 日系ブラジル人子弟の教育現場における課題について
【答弁1回目要旨(教育長)】
- 教育現場における直接的な課題は、ブラジルから来日する子どもたちの多くが、日本の学校で教育を受けるにあたり、言葉や学習理解の面などにおいて困難な問題に直面すること。こうした子どもたちに対し、県からの加配教員や教育相談員がプレクラスや国際学級で生活適応支援や日本語支援を行っている。また、外国人児童生徒のなかでも、8割近くを占める日系ブラジル人子弟への対応として、市のスクールアシスタントに全員ポルトガル語での対応ができる者を採用したり、ポルトガル語の会話集を各学校に配布したりして、言葉の壁を早期に取り除けるよう、人的、物的支援で対処してきている。
しかし、日系ブラジル人の定住化が進みつつあるにもかかわらず、生活を取り巻く様々な問題から、将来の進路設計がたてられず日本の文化にとけ込めない日系ブラジル人が多く生まれてきている。本市がめざす共生という視点で見たとき、このことが教育現場における外国人児童・生徒教育の最大の課題であると考えている。
【質問2回目】
- 1回目にご答弁いただいた内容は、市内の概ねの地域についてはそれで事足りるということが言えるのかも知れないが、市内東部の小学校ではまだまだ不十分と言わざるを得ない。加配教員の配置基準は、外国人児童数71名以上で4名、91名以上で5名となっており、6名以上はない。岩田小には基準の70%増に相当する、日系ブラジル人138名を含む156名の外国人児童がいても加配教員は5名しか配属されていない。国際学級を行うための先生と教室が圧倒的に不足している。通訳も不足している。このような状況に、今後どのように対応していただけるのか?
【答弁2回目要旨(教育長)】
- ブラジル人子弟の多い学校に対しては、教育相談員やスクールアシスタントの配置数や巡回回数を増やすなど対応を考えてはいるが、こうした地区では、学齢期の子どもだけでなく、就学前の子どもの保育の問題や学齢期を超えた子どもの進路の問題などを含め、解決しなくてはならない様々な課題が山積している。
その一つの解決策として、来年度からは、外国人児童の学習支援を主たる目的とした「外国人児童を対象とする放課後子ども教室」を試行的に実施し、成果を見ながら拡大の方向も視野に入れてスタートさせる予定となっている。
しかしながら、こうした課題は教育委員会だけで解決できるものではなく、全庁的に課題を共有し、組織をあげての対応が強く望まれる。今後とも環境整備に向けて、引き続き県や国に強く働きかけていくし、関係機関とも連携を図りながら、課題解決に向けての取り組みに努めていく。
【まとめ】
- 先生方と同様に語学相談員の方も保護者との連絡のためなどで大変ご苦労をされている。保護者には、朝早くとか夜でないと連絡ができないことも多いということのためだ。さらに国際学級運営のための予算などについても今後の課題として認識していただきたい。ご指摘のように、学校内部の努力だけではどうにもならない部分があると思われる。是非、周辺の環境づくりのためには他部局や国・県とも連携して、日系ブラジル人の子弟も日本人子弟と同様に、日本での将来に希望が持てるような力がつけられるように、積極的に取り組んでいただけるものと期待する。
イ 健康保険・年金への加入促進等における課題について
【答弁1回目要旨(文化市民部長)】
- 本市の日系ブラジル人の国民健康保険加入率は、平成18年度実績でおよそ23%。昨年9月のブラジルデーに実施したアンケート調査では、国民健康保険など社会保険に未加入の方は39%で、この内、国民健康保険制度自体を知らない方が36%もあった。
このため、まず第一に、制度の周知が必要なことから、国保年金課の相談窓口にポルトガル語通訳を配置し、ポルトガル語を併記した簡潔な制度案内等のリーフレットを作成するとともに、ブラジル人広報紙に制度案内の記事掲載や、ブラジルデーに相談会を開設するなど、加入促進に努めた。
国民年金については、平成19年1月現在の本市全体の外国人の加入者割合は18%と低い。このためブラジルデーや、成人式会場にて国民年金制度のチラシを配布するなど、周知に努めた。
【質問2回目】
- 日系ブラジル人が希望を持って生きていく権利を守るため、さらに地域社会を守るという観点においても、今後一層の加入促進をしていただく必要がある。その対応策としてどのようなことを考えておられるのか?
【答弁2回目要旨(文化市民部長)】
- 外国人の健康保険加入率の低い原因として、企業の中には、雇用主側の社会保険料負担を増やさないため、社会保険に加入させない会社があるとも聞いている。
また、わが国の社会保険制度が長期雇用労働者を前提にしているため、定住率が低い外国人の実情に合っていないことや、保険料負担を伴うこともあって本人も加入に積極的でなく、結果として、社会保険への加入率が低くなっている。
健康保険への加入促進に対する今後の対応策として、未加入の方の36%もの方が国民健康保険制度自体をご存じないことから、制度への理解を深めるため、従来の広報活動に加えてブラジル人向けのFM放送やホームページ等を活用し、より強力に推進していく。また、社会保険事務所には、雇用する企業に対して外国人労働者の社会保険加入を勧めるよう要請していく。
年金加入率が低い理由として、外国人が日本に住まなくなった場合、脱退一時金が支給されるが、支給対象月数は36ヶ月分を上限としており、これ以上の納付は掛け捨て状態になることがあげられる。このように、国民年金制度が日系ブラジル人の生活実態にはなじまないことから、国に対しては、昨年11月全国市長会において、定住外国人に対し一定の救済措置を講じるように要望書を提出し、また、国、都道府県及び関係各方面に対しては「外国人集住都市会議」等を通じて、外国人が受け入れられる制度になるように要望している。
【まとめ】
- これまでの周知宣伝活動と合わせて、雇用主に対する啓蒙活動、国・県への制度の見直しの要請など、積極的に進めていただくことを期待する。
ウ 日系ブラジル人を受け入れる地域における自治組織の課題について
【答弁1回目要旨(企画部長)】
- 特に課題が顕在化しているのは外国籍市民が多く住む公営住宅で、現在、県営住宅に715世帯、市営住宅には506世帯のブラジル国籍の市民が暮らし、中には入居世帯の4割を占める住宅もある。
公営住宅の運営管理は組を末端組織として自治会が編成され、入居者自身が自治会活動として実施することが基本だが、厳しい労働環境や言葉の壁による意思疎通の難しさなどから、ブラジル系市民の自治会活動への参加が積極的ではない住宅もあり、他方、ブラジル系市民を含む全ての人々が自治会活動に参加し、夏祭りや餅つき大会など、地域住民が融合して様々な取り組みが盛んに行われている地域もある。
やはりポイントは、こうした自治会活動への参加の促進ということであり、今後も自治会に働きかけ、また外国人入居者への説明会など様々な機会を通して、積極的な参加を促し、円滑な共生社会の実現を図って参りたい。
【質問2回目】
- 外国人が特定の地域に集住し、結果的に日本人社会から隔絶されるという状態は求めるべき共生の姿とは異なると思われる。さらに、言葉や習慣の違いにより自治会活動を担うことに困難を伴う人が市営住宅に過度に集住することにより、自治会活動に大きな支障を来たす恐れもある。この二つの意味において、市営住宅入居者について、国籍に関わらず、国内居住期間などの判断基準により、自治会活動を担うことが困難と思われる人の入居比率を一定基準以下に制限するなどの施策は考えられないか?
【答弁2回目要旨(建設部長)】
- 市営住宅への入居については、世帯要件、収入要件、住宅困窮要件などの入居者資格が整えば入居希望する住宅ごとに年1回の公開抽選によって順番に入居していただいている。なお、公営住宅法などの趣旨から、社会的弱者の方については、優先入居などの優遇措置は行っているが、特定の方に対して制限するようなことは出来ない。
【まとめ】
- 柳原住宅には現在、母子家庭、高齢者、多家族(人数の多い家族)しか入居できないことになっていることから、母子家庭も多く入居している。団地の中においても、自治会の組長の仕事、PTAの地区委員の仕事、子ども会の仕事など多くの地域での役割がある。言葉の問題などで、その役割を担える人が少ないため、一部のお母さんにその負荷が集中するということが起こっています。仕事を終え自宅に帰り、急いで食事の支度をし、すぐに地域の仕事に行かなければならないお母さんが沢山いるということ。このような方々の負担を減らすために、行政としても何らかの手だてを打っていただくよう、積極的なご検討を期待する。
(2)庁内の力を結集する体制について
【答弁1回目要旨(企画部長)】
- これまでも外国籍市民のための防災訓練やごみ処理、生活上の様々な制度のルールなどについて、関係各課とも協力しながら説明会の開催などを行ってきており、今年度は特に、地域の自治会を中心に市や小学校、警察・県などの関係機関とも連携をしながら地域共生懇談会の開催なども行っている。また現在、「平和・交流・共生の都市宣言」の具現化をめざして「都市宣言推進会議」を設置し、その部会である「多文化共生分科会」には、関係する24課等の職員が加わり、多文化共生に関する現状や課題の整理を行っている。
その中でも、「多文化共生の推進体制の整備」が重要な推進策として挙げられており、庁内だけでない、関係機関や市民とも緊密に連携をとりながら、外国人集住都市会議で国に対しての規制改革や法・制度整備の要望へ生かすなど、多文化共生の実現を図るための体制の整備について検討し、多文化共生推進プランに繋げて参りたいと考えている。
【質問2回目】
- 共生に関する庁内各部署の事業について、異なる部署で重複するのではないかと思われるような施策が行われたり、共生の方向として疑問を感じさせるものが見られるなど、チグハグなところが散見される。各部署の方々の努力を効果的に成果に結びつけるため、一層の努力をしていただく必要があるのではないか?
【答弁2回目要旨(企画部長)】
- 部局の連携については、不十分な面もあるので、合同説明会の開催など連携して強化し、庁内での議論を更に深める中で情報の共有化、認識の共有化を図っていきたい。施策については、日本語の理解も定住の考えも様々な人がいる。従って、共生のあるべき姿、めざすべき目標を明確にしつつ、対象に合わせた事業の展開を図り、効果的な成果に結びつくよう努力していきたい。
【質問3回目】
- 豊橋市は日系ブラジル人の方々の集住ということについて言えば、最先端を行っている。今の日本の国の制度や法は、このように多くの外国人と共生する事態を想定していたとは考えにくい。そういう意味では多文化共生特区というようなことも考える余地もあるのではないか。そこで、3回目の質問として早川市長にお伺う。市長は昨年秋の外国人集住都市会議に出席し、自ら発言されるなど、多文化共生ということに強い関心をお持ちであると感じている。ついては、多文化共生特区の可能性も含め、多文化共生ということについて庁内の力を結集し、どのような方向に進めていくべきと考えているのか?
【答弁3回目要旨(企画部長)】
- これまでも積極的に施策を展開し、先進的な取り組みを進めているが、あまりにも急激な変化に、個々の施策も人の内面も、なかなか追いつかない実態もある。また、多文化共生の問題は、地方自治体や住民の努力だけでは解決できない、全国共通の制度上の問題も多くある。特区についても情報を収集して行きたい。
これまでも「外国人集住都市会議」においても、国に対し、教育や年金、保険、外国人登録、企業責任など様々な要望をしてきている。参議院の「少子高齢化・共生社会に関する調査会」が本市の実情をつぶさに調査して行った。国や県においても、多文化共生の真剣な取り組みが進められている。
今後も様々な機会を捉えて国・県へも要望するとともに、皆様のお知恵も頂く中で「多文化共生推進プラン」を策定し、全ての人々が暮らしやすい多文化共生社会を目指していきたい。
【まとめ】
- 特区ということに関しては、情報を収集していただけるとのことだったので、期待する。多文化共生については国においても大きな課題となっている、という認識が示された。国内に居住する外国人の増加は著しく、いろいろな仕組みの整備が追いついていないのが現状。まずは、豊橋市当局の様々な部署による現状把握を積極的に進め、他の外国人集住都市と情報を共有し、早期に国の法律や制度などを新しい現実に対応可能なものとするよう、協力して進めていただくように期待する。
共生とは、日本人の子どももブラジル人の子どもも、ともに健やかに育つことのできる環境づくりを考えなくてはならないことなのだ、との思いに至った。本市において、このような環境整備が進むことを期待する。
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