2014年3月11日(火) 3月議会一般質問
青字は答弁
質問テーマ [新地方公会計モデルによる財務諸表から見える課題]

新地方公会計モデルによる財務諸表から見える課題

 平成18年8月の地方行革新指針において、各地方公共団体に対して新地方公会計モデルによる公会計整備が要請され、全国的に財務書類の整備が進展している。その目的の一つは地方公共団体の説明責任の履行であり、もう一つは財政の効率化・適正化であると言われている。
 本市では、平成11年度決算から旧総務省方式により貸借対照表等を作成してきたが、平成20年度決算より、平成18年5月に総務省から公表された「新地方公会計制度実務研究会報告書」における新たな地方公会計モデルのうち「総務省方式改訂モデル」を基準に財務諸表を作成している。
 現在の方式による財務諸表が作成されるようになり既に5年が経過したことから、各数値の傾向あるいは他市との比較ができるほどにデータが蓄積されてきた。
 そこで今回は、1月24日に市が主催して行った政策研究講演会で、講師の関西学院大学大学院経営戦略研究科教授の石原俊彦先生が示された指標も合わせて、普通会計財務諸表の中から以下の5点について質問させていただく。

【1回目質問】

  1. 資産の量の適否について
     石原先生の計算によれば、平成23年度の豊橋市の過剰資産額は1,418億円であり、標準財政規模に対する比率は196.3%であるとのことだった。
     資産の適正規模の計算は、標準財政規模に目標とすべき実質公債比率15%を乗じ、インフラ資産などの平均耐用年数と、地方債による有形固定資産投資への財源充当率を加味して行ったとのこと。そして、貸借対照表の資産額との差額を過剰資産額としている。
     本市の過剰資産比率の値は、総務省方式改訂モデルを採用し、その結果を公表している中核市27市の中で、上位から7番目に相当する高い数値となっている。因みに、この値がマイナスになっている中核市は9市ある。本市の資産の量の適否について、認識を伺う。
  2. 資産の老朽化の進展について
     豊橋市のホームページ上には、「とよはしの財務諸表」という資料が掲載されており、財務諸表についての解説や分析を行っている。そこに「資産老朽化比率」が計算されている。市が保有する有形固定資産が、耐用年数に対して資産の取得からどの程度経過しているかを%で表している。
     その計算式は、分子を減価償却累計額とし、分母には有形固定資産から土地を差し引き減価償却累計額を加えたもの。その値は、平成20年度末に36%だったものが、毎年上昇し、24年度末には42.2%になっており、グラフにすると直線的に右肩上がりになっている。
     このグラフを伸ばしていくと、37〜38年後には資産の老朽化比率は100%近くまで行ってしまう勢いとなっている。現実にはそんなことはあり得ないと思われるが、現状の資産の老朽化の進展について、どのように認識しているか伺う。
  3. 社会資本等形成の世代間負担比率の推移について
     ホームページ上の「とよはしの財務諸表」には、社会資本等形成の世代間負担比率として、将来世代負担比率が計算されている。社会資本等について、将来の償還等が必要になる負債による形成割合を見ることで、将来世代の負担の比重を把握しようとするもの。
     その計算式は、分子を地方債残高に未払金を加えた値とし、分母は公共資産に投資等を加えた値としている。この値は、平成20年度末の16.5%から毎年徐々に減少し、24年度末には11.3%まで下がっている。安定的に持続可能な社会であるためには、世代間負担が均等であることが望ましいと思われるが、現状の社会資本等形成の世代間負担比率の推移について、認識を伺う。
  4. 税収に対する行政コストの比率の推移について
     「とよはしの財務諸表」には、資産の形成に結び付かない経常的なサービスの提供に要する経常行政コストから、利用料など受益者負担を差し引いた純経常行政コストを、税収等の一般財源等で割り算した、行政コスト対税収等比率を示している。
     解説によれば、この比率が100%に近づくほど資産形成の余裕度が低く、100%を超えれば過去から蓄積した資産が取り崩されたことを意味するとのことだった。
     この値が平成20年度末の91.1%から24年度末には96.1%まで上昇している。税収に対する行政コストの比率の推移についての認識を伺う。
  5. 資産更新に向けた備えについて
     本市の貸借対照表純資産の部における「その他一般財源等」は平成20年度末の-463億から24年度末の-633億まで、毎年マイナスを拡大している。石原先生の解説によれば、この値は資産の減価償却の進捗と地方債償還の進捗の差を示しているとのこと。これに加えて、臨時財政対策債など資産形成を伴わない負債もマイナスの要因となることが考えられる。
     この値の標準財政規模に対する比率を出してみたところ、平成20年度末の-63.0%から平成24年度末の-87.2%まで、マイナスの比率が拡大している。
     石原先生は、この値はいわゆる「こどもへのツケ」にあたるということも言われた。この「その他一般財源等」の値がマイナスであるということは、既に将来の財源の一部が拘束されているということであり、資産更新の資金の準備ができていないということになるのではないかと考えるが、資産更新に向けた備えについて認識と対応を伺う。
【答弁要旨】
  1. 石原先生が示された過剰資産額と標準財政規模に対する比率についてですが、「総務省改訂モデル」は資産の評価について段階的に整備していくことが認められており、過剰資産額がマイナスとなっている中核市は、総務省の決算統計における有形固定資産の取得価額を基に評価を行っていますが、本市では、平成23年度に庁舎・学校・市営住宅などの事業用土地の資産評価を行ったことから、有形固定資産が平成22年度と比較して約833億円増加しており、中核市27市の中では上位の過剰資産比率の値となっています。
     また、自治体が所有する資産の量については、人口規模や市域の面積との相関が強く現れる傾向がありますが、本市では、学校や市営住宅、市民館等が比較的多くなっており、特に校区市民館・地区市民館は先進的に地域コミュニティ推進という観点から集中的に整備を行っており、この間、全市民を対象とする拠点的な役割を果たす施設と、広い市域において一定範囲の市民を対象とする施設をバランスよく設置することにより、市民活動の活性化を図ってきたところです。
     したがいまして、固定資産の評価が異なっていることや、資産の整備が各自治体の地域の特性に応じ進められていることなどから、一律に資産の量の適否を判断することは難しいものと考えています。
     また、この試算については、標準財政規模と資産の更新等に必要となる資金の規模の比較を目的として算出されていますが、更新の必要がない土地についても含まれています。平成23年度の本市の有形固定資産のうち、土地を差し引くと約3,602億円となることなどから、標準財政規模からみると適正規模の範囲内にあるものと考えています。
  2. 資産老朽化比率は、耐用年数と比較してどの程度の年数が経過しているのかを表す指標であり、本市では平成20年度から平成24年度にかけ6.2%上昇しています。これは、市有建築物の多くが昭和40年代から平成10年頃にかけて建設されており、厳しい財政状況の中、多額の費用を要する市有施設の建て替えについては、財政負担の平準化の観点から優先度を判断し順次整備を進めてきたことから、施設全体の老朽化が進んできているものと考えています。
  3. 社会資本等形成の将来世代負担比率は、毎年徐々に減少し、平成24年度は11.3%となっています。これは、公共資産の減価償却も年々進む中で、主に公共資産を形成するために充てられた地方債の累計額が減少していることやPFI事業における維持管理・運営費などの未払い金が減少していることから、将来世代の負担比率が減少しているものと考えています。 世代間負担については、過度な将来世代への負担の先送りとならないよう、地方債の計画的な発行・償還など将来負担の適正化を図っていく必要があると認識しています。
  4. 平成20年度末時点での財務諸表における純経常行政コストは約853億円でしたが、平成24年度末時点では、主に生活保護費の増加などによる社会保障費の増加などにより約1,002億円となっています。また、純経常行政コストを賄う一般財源等では、平成22年から地方港税の交付に伴う増がありましたが、厳しい歳入環境による市税収入の減などにより、経常行政コストの増加がより大きく、行政コストに対する税収等の比率が96.1%に上昇しています。
     地方自治体の一般的な値としては90%から110%の間と言われており、本市は平均的な水準となっています。当該比率が100%を下回る場合は、翌年度以降へ引き継ぐ資産が備蓄されたか、もしくは翌年度以降へ引き継ぐ負担が軽減されたことを示していますが、将来にわたる財政負担の適正化の観点からも、比率の推移を注視していく必要があると考えています。
  5. 貸借対照表の純資産における「その他一般財源等」については、公共資産や投資、現金等の資産合計から、負債並びに公共資産を形成するために使用した財源を控除した額であり、マイナスとなっている要因としては、ご指摘のとおり公共資産の形成を伴わない臨時財政対策債の累計額等が増加していることが主な要因となっています。
     本市は中核市市長会の会長市として、国に対し、「恒常的に生じている地方財源不足額」への対応は、臨時財政対策債による負担の転嫁や先送りではなく、法定率の引き上げなどにより、その解消を図る」よう提言を行っているところです。加えて、市としても財政調整基金への積み立てや地方債の償還により債務の圧縮を図ることにより、資産更新に備え、将来にわたって健全な財政運営を行っていかなければならないと考えています。

【2回目質問】

  1. まず、資産の量ということについては、貸借対照表に記載されている。貸借対照表には大まかにいうと三つのことが表示されている。資産、負債、純資産の三つ。資産というのは豊橋市が持つ、道路、公園などのインフラ、庁舎、学校、市民館などの施設、第三セクターへの出資、現預金などの財産の総額が表示されている。施設などについては、年月の経過に従い価値が下がることから、減価償却によって金額が減少していく。
     因みに、負債と純資産は、資産をどのような財源で取得したかの内訳ということになる。負債は地方債とか未払い金などのように、今後返済しなければならない財源であり、純資産はこれまでに収納された税金だとか補助金など、返済の必要のない財源ということ。
     石原先生は、豊橋市にとってこの資産の総額が多過ぎる危険性があると指摘されたわけだが、その計算では市が所有する土地の評価額も含めて行われた。しかし、施設等を更新する際でも、基本的には新規に買う必要はないわけで、更新コストの要素として考える必要がないという答弁の趣旨だと思う。
     平成23年度末の有形固定資産の内の土地の簿価は2,158億であり、これを差し引いて考えると、本市の資産規模は実質公債費比率の観点から見て、十分に適正な範囲に収まっており、過大ではないということが理解できた。言い換えれば、財政を健全に維持するという観点から見て、資産の更新に必要な地方債発行余力はまだしっかりあるということを確認した。このことについては終わる。
  2. 道路・公園、庁舎、学校、市民館などの資産の老朽化が進んでいることをどのように認識しているか伺った。
     答弁では、「市有建築物の多くが昭和40年代から平成10年頃に集中的に建設されており、現在、施設全体の老朽化が進んでいる」、とのことだった。
     資産の老朽化が進めばそれらの維持管理コストが増大することや、使い勝手が悪くなってくることも考えられる。時代の変化に対応できないため、陳腐化することもあり得る。
     また、このままいけば、どこかで集中的に更新時期が到来することになるのは明白。将来のある時期に様々なインフラや施設の更新時期が集中することを避けるためには、資産の老朽化の推移が今の右肩上がりから、より早い時期に高原状態化して水平になることが必要になるのではないか。
     老朽化の進展を食い止め、資産老朽化比率の推移を水平に安定させるためには、更新時期の前倒しも含む、積極的な更新計画の策定と計画の実践が必要になると考える。
     一方、本市のファシリティ・マネジメント計画の中では、施設保全計画や施設廃止計画は定められているが、更新計画については定められていない。さらに、市有資産の中には、公共施設やプラント系の他に、道路、公共駐車場・公園などのインフラ系も含まれているが、ファシリティ・マネジメント計画ではこれらインフラ系は対象に含んでいない。
     今回、申し上げたように、資産の老朽化が急速に進んでいることを考えれば、インフラや施設の更新計画の策定について、早急に検討すべきではないかと考えるが、資産の老朽化の進展への対応について考えを伺う。
  3. この世代間負担比率というのは、大雑把に言えば、資産の財源の内、今後返済していかなければならないものが、どれだけ含まれているかということ。その比率が次第に下がってきていることをどう認識するかということを聞いた。
     答弁では、「過度な将来世代への負担の先送りとならないよう、地方債の計画的な発行・償還など将来負担の適正化を図っていく必要がある」、とのことだった。
     そこは大切なところ。将来に大きなツケを残すことは是非とも避けなければならない。しかし、財務諸表に表れているのは、既に完成している公共資産の負担が将来世代にどれほどの負担になっているかということ。
     ところが、いつか建設しなければならないことはわかっているが、まだ工事に着手していないものについては顕在化していない。この数字上では見えていない将来負担が増えないようにしなければならない、という意味で、(2)の2回目をお聞きしている。
     (3)の答弁の前段では、「地方債や未払金などが減少していることが、将来負担比率を減らす要因になっている」という趣旨のことが述べられた。
     この間、有形固定資産は、平成20年度末から24年度末にかけて、土地の評価替えや減価償却額を考慮した上で見ても、増加している。では、この資産増加をどのような財源で賄っているかを見ると、負債ということでは、地方債や未払金などは減少している。もう一つの財源である純資産、つまり自己財源は増加しており、特にその中の公共資産等整備一般財源が増加している。
     この傾向から言えることは、公共資産の整備を行うにあたり、従来に比べて地方債などの負債に依存する部分が減り、一般財源等に依存する部分が増えているということではないかと思う。しかし、今後、公共資産の更新をして行くにあたっては、一般財源を主にしていくばかりでなく、負債をうまく活用していくことも必要なのではないか。
     社会資本等形成の世代間負担比率が減少していることは好もしいことのように思えるが、持続的な社会のあり方を考えた時には、世代間比率が、高くない状態で横ばいに推移することが望むべき姿と考えるべきではないか。
     そういう意味で、負債を上手に活用しなければならないわけだが、地方債の発行には制約があり自由にならない部分もある。そこで、もう一つの負債の活用として、長期未払い金を積極的に活用すべきではないかと考える。具体的にいえば、PFIを初めとしたPPP(官民連携)の積極的活用ということ。
     (3)の2回目としては、社会資本等形成の世代間負担比率を横ばいに持っていくために、今後のインフラや施設の更新にあたっては、PPP(官民連携)の活用を積極的に行うべきと考えるが、認識を伺う。
  4. 答弁では、「生活保護費の増加などによる社会保障費の増加などにより、純経常行政コストが増加している。厳しい歳入環境により市税収入が減少している。」ということだった。その結果、税収等に対する行政コストの比率が上昇し、96.1%にまでなっている。つまり、公共資産の建設に回す財源が少なくなって来ているということが言える。
     そこでまず、従来から取り組んでいる、税収を増やすために産業振興の推進や、行政コスト縮減に向けた「行財政改革プラン」の推進などについて、一層の努力が必要であることは言うまでもない。是非、しっかり進めていただきたい。これらに加えて、税収に対する行政コストの比率を下げる方策については、(5)の2回目の中で伺う。
     このように公共資産の建設に回す財源が少なくなっている中で、どのようにしてインフラや施設の更新をしていくかを考える必要もある。
     石原先生は、垂直補完が多くを期待できない時代になりつつあり、水平補完によるインフラ等の更新を考える必要が出てきた、ということを言われた。垂直補完とは、住民サービスについては基本的には市町村が行うものだが、市町村の力では賄えないものを都道府県が補い、都道府県でも賄えないものは国が補うという考え方のことを言う。
     今、国や都道府県の財政がひっ迫する中で、この垂直補完が十分に期待できなくなりつつあり、水平補完、つまり近隣自治体同士で補い合うことを考えていかなければならない、ということを言われた。お隣同士、施設を利用し合うことで、各自治体が持つ施設の数を減らし、施設建設の負担を減らすべき、という意味。東三河広域連合は、この水平補完を行っていくという意味でも、重要性を持つと思われる。
     これを延長して考えると、豊橋市の中でも水平補完の可能性はある。公共資産の建設に回す財源が少なくなっている中では、同じような意味合いで、市内の校区間の水平補完を促進することを考えるべきだと思う。まずは、隣接する校区同士で運動会などイベントを共有し、交互に開催するなどにより、関係を密にする。そして、施設の更新時期が来た時には、従来それぞれで持っていた施設を合体し、一つの施設とする。さらに進んで、校区の合併ということも考えられる。
     そこで、(4)の2回目として、今後、市内の施設の更新の財政負担を軽減するために、校区間の水平補完の推進を行うべきと考えるが、認識を伺う。税収等に対する行政コストの比率が100%に近付いている中では、もう現実の課題として考えていくことも必要ではないかと思う。
  5. 答弁では、「その他一般財源等がマイナスになっているのは、公共資産の形成を伴うことがない、臨時財政対策債の累計額等が増加していることが主な要因である。」ということだった。
     「その他一般財源等」のマイナス額の変化については、平成20年度末から24年度末までの5年間で、約170億円拡大していることは先程申し上げた。これに対して、臨時財政対策債の残高の推移を見てみると、20年度末の224億から24年度末の372億円へと148億円増加している。ここから見ても、答弁にあったように「その他一般財源等」のマイナス拡大の主な要因は臨時財政対策債残高の増にあることが理解できる。
     答弁にあったように、地方の財源不足を補う方法について、国に対して「臨時財政対策債をより少なく、普通地方交付税のウェイトをより大きくする」ように要望することは、必要なことだと考えるし、今後もしっかり進めていただきたい。
     かつては、基準財政需要額から計算される財源不足額は、普通地方交付税のみで補われていた。その後、地方交付税の財源ひっ迫により、財源不足分については地方自治体の臨時財政対策債発行を認めることになったという経緯がある。
     臨時財政対策債については、元利償還金全額が後年度の地方交付税に算入されることになってはいるが、借金を借金で返しているということになり、残高が増加している。そして、資産更新の備えとなる内部留保のマイナスが拡大している。臨時財政対策債の起債限度額を満額使わないようにする努力はもちろん、なんとかして臨時財政対策債の残高を減らさなくてはならない。
     2回目の質問としては、この状況を改善する方法について聞きたい。
     つまり、臨時財政対策債の起債を減らしていける構造を構築することを考えなければならないが、その一つとして、インフラや施設の更新、あるいは新設にあたっての優先順位を明確にしていくべきではないかと考える。
     もう少し具体的に言うと、投資額に対して税収の増加に寄与する効果の高いものを優先する、あるいは投資額に対して維持管理費削減効果の高いものを優先する、という考え方の導入をすべきではないかと思う。この考え方の導入について認識を伺う。
【答弁要旨】
  1. 済み
  2. インフラについては、橋梁や公園施設について長寿命化計画による更新等とライフサイクルコストの縮減に取り組んでいるところであり、道路についても策定に向け点検調査を行っています。
     公共施設については、市有建築物の多くが昭和40年代から平成10年ごろまでに集中的に建設されていますことから、議員ご指摘のとおり、集中的に更新時期が到来することが懸念されます。そのため、現在施設保全計画の策定を進めており、計画的な保全による施設の長寿命化と財政支出の平準化に取り組んでいくこととなります。
     インフラを含む公共施設の更新については、長期間の中での平準化の検討ということになりますが、それぞれの施設の老朽度、利用状況、重要性等を踏まえ、更新時期の前倒しを含めた将来負担の平準化に向けた検討を行っていくことになると考えております。
  3. 長期未払い金にあたるPPPの代表的な手法であるPFIの活用については、長期にわたる公共施設の受益と負担の関係において、将来世代に一定の負担を求めることにありますので、議員ご指摘のとおり、負債を上手に活用する意味において必要と考えています。しかし、あまり過度になると将来の財政構造の硬直化につながりかねないので計画的な対応が必要であることは言うまでもありません。
     PFIの活用については、公共施設の整備にあたって、民間資金を活用することにより、公共が地方債を活用し整備するより、VFM(バリューフォーマネー)が大きい場合に採用することになります。必要な公共施設等の整備にあたって直営で行うよりも整備費だけでなく、維持管理費を含めたライフサイクルコストの増嵩を抑えることとなりますので、可能なものについてはPFIの活用を積極的に行っていきたいと考えています。
  4. 公会計から行政コスト、水平補完と、大変難しい議論が進められているわけでありますが、先ほど言いました、石原先生のこの前の研修会の中でも、今次の地方制度調査会の中で、この水平補完というのは、一つの大きなキーワードだというお話もありました。人口減少や高齢化、等の進んでいる今の社会の中において、地方自治体は扶助費とか医療費とか、そういった行政コストが益々増大をしてきているわけです。
     そのようなわけで、これまでは公共施設や社会基盤の改修経費というものを先送りしてそれを賄ってきたわけですが、それはもうまさに限界に達しています。これからは、そうした社会基盤の維持補修、また公共施設の維持補修ということが大きな問題になっている、その中でも優先度が高いのはライフラインだろうと、そのようなお話がありました。 そうした中で、市町村間の広域連携を一層強化して、それぞれの役割を分担して、まさに水平補完によって、域内全体の発展を図っていく必要があると、そのために今回の地方制度調査会の中でも、広域連合をはじめ、様々な連携の選択肢を用意しているということでありました。
     本市の10年間を見てみましても、普通建設事業費というのは、年々減少してきていますし、また扶助費や社会保障関係費というのは、非常な勢いで増大をしていく、膨らんできているわけであります。
     また、先ほどの答弁にもありましたように昭和40年代から、インフラ整備というのが急速に進んできておりまして、学校、それから住宅、市民館、体育施設など、そういった施設の建設も非常に進められてきておりまして、それが、施設ストックとして今増大をし、膨張をし、まさに老朽化をして改築の時期を迎えつつあるわけであります。
     したがって、今後においては、後継施設についても、それがあることを是とするのではなくて、もちろんそれを平準化していくという努力も必要でありますが、それを例えば廃止をし、もしくは統合し、合築をすると、そういったことも合わせてこれは考えていかなければならない問題であると考えています。
     ファシリティ・マネジメント推進計画の中でも、本市の公共施設は、全体としては他都市と比較して多いのだというお話がありましたけれども、しかし、そこで培われてきたコミュニティといった無形の財産もあるわけで、これをファシリティ・マネジメントと、それから公会計の数値とか、それだけで論ずることもできないわけであります。
     したがって、今後においては、財務諸表で示した様々な資源を十分に活用しながら、本市の今抱える課題は何か、現状はどうか、そして公共施設のあり方、それから行政コストのあり方ということも、市民的な議論を深めていく必要があると、その中では、広域的な施設の共同利用ですとか、また議員が言われました、校区間の施設の複合化もしくは共同利用、そういった補完の水平化ということも合わせて議論をしていかなければならない問題だと考えています。今まさに、その時期がきていると、そのように思っています。
  5. 税収の増加に寄与する効果の高いものについては、道路、公園、上下水道など、企業の集積や雇用の増加に伴って必要となる都市基盤の整備になろうかと考えます。
     橋梁や公園のほか、水道の配水管整備、下水道の老朽管渠についてはすでに計画的な修繕や更新等に順次取り組んでおり、道路についても順次取り組む予定となっています。
     施設の新設・更新については、市民ニーズ、利用者の利便性向上、修繕の緊急度などの要素に加え、投資対効果の観点を踏まえた進め方を勉強してまいりたいと考えています。

【3回目質問】

  1. 済み
  2. インフラを含む公共施設の更新を早急に検討するということについての答弁は、長期間の中で、施設の老朽度、利用状況、重要性等を踏まえ、更新時期の前倒しも含めた将来負担の平準化を検討していくことになるとのことだった。
     将来負担ということについては、負債という形になっているものばかりではないということの認識が大切ではないか。負債は明らかに将来負担ではあるが、老朽化した公共資産も将来負担と考えるべきだと思う。負債が大きくならないように、また、老朽化した公共資産が多くならないように、両面に目配りをした資産管理を行う必要がある。
     更新の先送りということがあってはいけない。
     そういう意味で、早い時期に資産老朽化比率の目標値を設定するということを考えていただくことを期待する。それが更新計画のスタート時期の目安になるはず。
  3. インフラや施設の更新時に、世代間比率を適切に維持するための負債の活用ということについて伺ったところ、答弁は、「PFIの活用は過度にならない範囲であれば、負債を上手に活用するという意味であり必要」ということだった。「PFIはライフサイクルコストを抑えることになるので、積極的に行いたい」ということも言われた。
     PPPということで申し上げたが、PFIを積極的に行いたいということだった。
     ただ、PPPの方式については、従来型PFIの他、コンセッション方式によるPFIやDBO方式(デザイン・ビルド・オペレート)などもあると思う。本市の状況にマッチする方策を検討していただく必要があると思う。
     また、目指すべき世代間負担の比率の目標値を設定する、ということについても今後積極的に考慮していただくことを期待する。
  4. 校区間の水平補完を進めるべきではないかという質問に対しては、財政状態が厳しい中で、廃止、統合も考えなければいけないケースもあるかもしれないけれども、ただそれだけで論じることはできない。コミュニティの形成という部分、コミュニティを大切にしていかなければならないという部分が大切だということで、そういったことについては、今後、市民的議論を巻き起こしていくことが重要な時期に来ているという認識を示していただいた。
     一方で、核家族化が進み、校区によって人口の増加あるいは減少の傾向がはっきり分かれて来ているように感じられる。この傾向の是正ということから考えなければならないが、実態に合わせて公共施設の配置の検討ということについても、市民的議論を進める中で、検討を進めていただくことを期待する。
  5. 「その他一般財源等」のマイナスを縮小していくための、インフラや施設の更新にあたっての優先順位ということについては、「市民ニーズ等に加えて、投資対効果の観点も踏まえた進め方を勉強していく」、との答弁だった。
     臨時財政対策債に頼らなくてもいい、まちづくりに向けて、しっかり研究していただくことを期待する。
     そこで、(2)から(5)までをまとめて、3回目の質問をさせていただく。
     総務省が平成22年3月に出した資料「地方公共団体における財務書類の活用と公表について」では、財務書類整備の目的は大きく二点である言う。
     一つは「説明責任の履行」ということ。つまり、住民や議会に対する説明責任を果たす上で、財務書類を作成・公表することによって、財政の透明性を高め、その責任をより適切に果たすことだとしている。厳しい財政状況の中、今後、施設の統合などの必要性を市民に理解してもらわなければならないこともあり得ることから、これは大変重要な意味を持つはず。
     もう一つの目的は、「財政の効率化・適正化」ということ。財務書類から得られる情報を資産・債務管理、費用管理等に有効に活用することによって、財政運営に関するマネジメント力を高め、財政の効率化・適正化を図ること、となっている。
     これらの目的を達成するためには、まず職員の皆さんが発生主義による財務諸表から、しっかり課題を読み取る力をつけることが必要であることは言うまでもない。しかし、現状ではまだまだ財務諸表には苦手意識を持つ職員が大半ではないかと感じる。
     そこで、3回目の質問として、財政の効率化・適正化の一層の推進に向け、財政運営に関するマネジメント力を高めるために、財務諸表の読み取り方に関する職員教育にどのように取り組んでいくのか、また、財政状態や課題を市民に正しくわかりやすく伝えるために、どのような方策を考えるのか、について伺う。
【答弁要旨】
  1. 済み
  2. (5)に統合
  3. (5)に統合
  4. (5)に統合
  5. 財務諸表については、財務省の公会計モデルにより毎年作成して、議会にもお示しをして、公表もしているわけですが、多くの職員がこれをきちんと理解しているかということになると、残念ながらそうも言えませんし、またこれが十分に活用されているかということになると、これも残念ながら、まだまだそうとは言えないということです。
     今後においては、まずは活用の主体となる職員のマネジメント能力を高めていくことが大切であり、この財務諸表を用いた研修を充実するなど、新しい公会計制度に対する対応力、分析力というものを培っていく必要があると考えています。
     それから、財務諸表の作成のもう一つの目的は、市民に対する説明責任を果たすということにあります。
     これまでもホームページですとか行財政白書ですとか、様々な機会を通して、この財政状況の公表を行ってきていますが、今後においても、議会でこうした議論を深めていただいて、そしてまた財務諸表を様々な角度から分析をして、市民に分かりやすく本市の特色、また本市の課題、将来的な問題、そういったものも、財政の持ついろいろな姿というものをわかりやすく説明をし、理解を深めていただくことが大切であると思いますので、そうした工夫をこれからも重ねていきたいと考えています。

【まとめ】
 職員の皆さんが新公会計の財務諸表を読み解く力をどのようにつけていくのか、そこから把握された財政課題をどのように市民の皆さんと共有していくのかについて、答えていただいた。
 現状については、まだ職員の皆さんの新公会計制度の財務諸表の理解というのは遅れているという認識だった。
 このことに対しては、研修の充実等通じて、公会計制度の成果である財務諸表の活用をしっかり進めていきたいということだった。
 また、市民の皆さんには、ホームページで公開をしている、あるいは議会等にも財務諸表を示しているが、今後、もっとこの分析結果をわかりやすく市民の皆さんに説明できるように工夫を進めていただけるということだった。期待する。
 今回は普通会計についてのみの議論をさせていただいたが、連結の財務諸表もしっかり研究する必要がある。連結財務諸表には、普通会計の他、特別会計も含む公営事業会計、公社、第三セクター、広域連合も含めた数値が記載されている。特に、上下水道に関しては大きな資産があるだけに、この更新は大きな課題になる可能性がある。
 今回、この質問の準備をする中で感じたことは、財務諸表を見ていると、日頃なんとなく疑問に感じたことが数値で明確になったり、思い込んでいたことが数値を見ると誤りだったことがわかったりというようなことがいくつかあった。
 是非、今後の市政運営にあたっては、これら数値を基にした、論理的な課題解決や政策づくりを進めていただくことを期待する。先行きが見通しにくい時代の中で、進むべき道を示す重要な道標が見いだせるはずだと実感した。


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