2013年6月10日(月) 6月議会一般質問
青字は答弁
質問テーマ [東三河広域連合が目指すべき方向性][豊橋市の経済成長に国の成長戦略を][公務員倫理の徹底]

東三河広域連合が目指すべき方向性

 東三河広域連合について、昨年12月、その設置に向けて「基本方針」「組織体制」「取組みのイメージ」「「今後のスケジュール」などが示された。平成26年度末までの広域連合設置に向けて、大きな一歩を踏み出したものと感じている。
 また、今年4月15日には、東三河広域協議会は広域連合の設立準備検討部会の初会合を開き、「総務」企画」「介護保険」「福祉」「保健医療」「都市基盤」「住民相談」「税務」の8部会が設置された、ということが報じられた。広域連合実現に向けて着実に準備が進んできている様子がうかがえる。
 しかし、市民の中では、東三河広域連合に対する関心はまだ盛り上がっていないように感じられる。大きな原因の一つは、市民が期待する情報開示がされていないことにあるのではないかと考える。
 市民の関心は、広域連合が実現することによりどんなプロジェクトが生まれてくるのか、ということにある。どんなプロジェクトが行われ、東三河の暮らしがどう変わるかがわかって、初めて市民は腹に落ちるということになる。それに対して、行政側からは事務の統合、権限の移譲ということを中心に情報発信されている。そういう意味では市民が一番知りたいところの情報が未だ示されていない、まだ腹に落としきれないという状況にあると言える。
 一方、東三河県庁が主催する「東三河ビジョン協議会」は、愛知県、東三河の8市町村、経済団体、大学等で構成されており、今年3月28日に「東三河振興ビジョン」を策定公表している。このビジョンは「将来ビジョン」と 〜広域観光の推進〜 を副題とする「主要プロジェクト推進プラン」で構成されている。
 そして、このビジョンにおいては広域連合ということについては触れられていないものの、その「地域づくりの基本理念」は「地域が一体となって自立した東三河をつくる」であり、「目指す地域の姿」は「豊かさが実感できる 輝く『ほの国』東三河」ということになっている。
 市民の疑問としては、この東三河振興ビジョンを東三河広域連合ではどのように位置づけるのか、あるいは相互にどのような関係を持つのかという点にある。
 そこで、東三河広域連合の設立を市民に応援してもらうために、以下の2点について伺う。
【1回目質問】

  1. 東三河広域連合準備状況の情報提供と市民の理解促進方法について
  2. 東三河ビジョン協議会が作成した東三河振興ビジョンの東三河広域連合検討における位置づけについて
【答弁要旨】
  1. 広域連合の設置に向けては、市民の皆様にご理解をいただきながら進めていくことが何よりも大切であると認識しています。
     これまでは、8市町村による内部検討の段階でしたので、提供できる情報も、広域連合の設置目的や組織の体制といった、主に事務的なものに限られておりました。しかしながら、今後は、広域連合が何に取組み、住民の暮らしがどう変わるのか、あるいは地域の産業活動にどのような影響を及ぼすのかなど、住民目線に立った情報を丁寧に解りやすくお伝えすることが重要であると考えております。
     具体的な周知の方法については、後方への掲載、パンフレットの配布、ホームページでの公開、出前講座など、様々な機会を通じて市民理解に努めてまいりたいと考えています。
  2. ご指摘のとおり、東三河振興ビジョンは愛知県や経済団体、大学などとともに、私たち東三河8市町村も加わる中で策定されたものであります。したがいまして、その基本理念や目指す地域の姿は広域連合が目指すものと大きく異なることはないものと考えています。
     こうしたことから、広域連合の検討においても、東三河振興ビジョンを地域づくりの重要な計画の一つと位置付け、広域計画や広域連携事業の立案の際には、本ビジョンとの整合を図るとともに、県、市町村、広域連合のそれぞれが担うべき役割を明確に示して参りたいと考えています。
     一方で、東三河振興ビジョンには、県や市町村はもとより、経済界や民間団体も含めた様々な機関による取組みが包括的に描かれています。したがいまして、東三河振興ビジョンの中で広域連合が担うべき役割と、今後、広域連合が主体的に取り組むべき事業を明らかにしていくことが重要であると考えています。

【2回目質問】

  1. 広域連合設置に向けて市民の理解を得ることが何よりも大切であり、地域住民の暮らしがどう変わるかを分かりやすく伝えることが重要、という答弁だった。
     しかし、先程申し上げたように、市民が知りたいのはどういうプロジェクトであり、「地域住民の暮らしがどう変わるか」ということであるにも関わらず、これまでの情報提供は事務的な内容が中心となっている。答弁にあったように、広域連合設置に向けて市民の理解を得ることが大切であることはその通りだと思う。
     では、「地域住民の暮らしがどう変わるか」という情報が提供されるのはいつなのか。私は「今でしょう!」と申し上げたい。広域連合の結成が平成26年度中ということであれば、今こそ市民の理解を得る活動が必要なのではないか。
     また、新たな組織を作っていく一般的な手順は、まず組織の理念、使命(ミッション)を定め、それを実現するための事業を定める。その上で、それら事業を合理的に進めるための組織を考えていくということになるのではないか。今、東三河広域連合の検討では組織作りが優先的に行われているように感じられる。少なくとも情報発信はそういうことになっている。
     昨年12月に示された資料でも、「取組みのイメージ」で示されているのは、「主な取り組みの例」であり、「今後のスケジュール」で示されているのは「広域連合で実施する事務の具体的な検討」が25年度に示されているのみで、どんな事業、プロジェクトを行うかという検討の予定は示されていない。「住民の暮らしがどう変わるか」ということの情報発信をしていくためには、事務の検討ではなく事業の検討こそ優先させるべきではないのか。
     そこで、(1)の2回目として2点を伺う。
    1. 現在、組織作りの検討が先行しているように思われるが、東三河に存在する広域的課題の抽出と分析を踏まえて、それに基づく事業の選定を優先的に行う必要があるのではないかと考えるが、その認識について。
    2. 東三河広域連合により「地域住民の暮らしがどう変わるか」という情報を、いつから市民に提供することを考えているのかについて。
  2. 東三河振興ビジョンを地域づくりの重要な計画の一つと位置付け、広域計画や広域連携事業の立案の際には、本ビジョンとの整合を図ること、東三河振興ビジョンの中で広域連合が担うべき役割、事業を明らかにしていくことが重要ということだった。
     まことにその通りだと思う。まず広域連合が担うべき役割や事業を明らかにすることで、他の部分はどの機関が担うべきかという議論につながることが期待できる。そういう意味でも、(1)の2回目でお聞きすることについては、前向きに考えていただきたい。
     2.については、終わる。
【答弁要旨】
  1. 広域連合について、組織作りよりも事業の選択を優先する。理念、ミッションを明らかにして、そして住民の暮らしがどう変わるか、その情報提供をするのは「今でしょ!」ということでありますが、言われるとおりで今であります。
     こうした各市町の議会や委員会でこの質疑の場というのも、大変重要な場であると思っておりますが、これまでも行政が行います膨大な事業の中身を洗い出して、そして広域的な課題というものを抽出し、それを分析しながら検討を進めてきているところであります。
     少し挙げますと、まず一つは介護保険であります。これまで市町村ごとに取り組んでいる介護保険が一つになれば、全体として介護認定から介護施設の整備、そして介護サービスに至るまで、奥三河はじめ、今まで以上にサービスを充実させ、また保健基盤を安定させることができます。
     現在、各市町で都市計画図をつくるために飛行機を飛ばして航空写真を撮っておりますが、これを共同化して行うことで、大きな経費の削減がはかられます。様々な相談業務を共同で行うことによって、市民サービスの向上を図ることができます。
     その他にも様々ありますが、そういった事務事業の共同化だけで、ざっと計算しても億単位の経費節減がはかられ、それによって広域連合に伴う費用を賄うことができます。
     広域連合と言うのは、基本的には、現に現在市町村が行っている事務事業の一部を共同して処理をする、そういうものをやりますので、それによって、住民の生活がドラスティックに変化するというものではないのかもしれません。 しかし、例えば、広域的な観光ルートを設定して、それを一体として同時に進めれば、新しい交流、新しい観光を生み出すことができます。
     そのように、これまで取り組んできたことのない新しい広域的な施策、事業を生み出すことができ、そのことで広域の連携が一層強化されます。
     また、市町村業務だけではなくて、現在、県が行っている児童相談所、保健所の業務と財源を移管されることによって、東三河一体となって、自らの責任と判断において、迅速に対応し、質の高い行政サービスが提供でき、市民の生活をよりよく守っていくことができます。また、東三河県庁も大きな力になることでしょう。
     広域連合というのは、自治法でいいますと組合形態の一つです。しかし、組合の場合には、一つひとつの事業で組合をつくっていいきますが、広域連合の場合には、広域連合一つでさまざまな事業ができます。また、最初から全てのことをするのではなくて、まず広域連合を設置して、できることから始めて、そして十分な議論や検討を少し準備を進めた上で、新しい事業を追加をしていくことができます。
     そのように、広域連合というのは非常に柔軟で、懐の深い形態でありました。明日の新しい地方自治の形をつくることのできる、そうした大きな可能性を持ったものであると思っています。
     そのことが、成長する広域連合ということであり、新しい地方行政のトップランナーを目指すということであります。
     そうした理念や信念をきちんと持ちながら、何をすべきか、そしてその必然性、効果は何か。ミッション、理念はということもきちんと説明しながら、広域連合の必要な体制の整備についての検討も進めていきたいと考えております。 それから、情報提供についてでありますが、先程企画部長の答弁にもありましたように、現在、市民向けのパンフレットの作成を進めております。しかし、なかなか、言いたいことがたくさんありまして、これをどう表わすのか、形にするかということを悩みながら、今進めているところでありますが、どうしても今日的にならざるを得ないところもあるのですけれども、そうしたものも議会にお示しをし、皆さんのお知恵もお借りしながら、様々な機会、様々な方策を通して、市民の皆さんに周知をし、理解を深めていきたいと考えております。

【まとめ】
 市民向けのパンフレットを作成するということだった。この夏頃までにできることを期待する。
 また、副市長のお話の中に、「成長する広域連合」ということがあった。その意味するところは、段階的に高度な課題に取り組んでいくということだと思う。しかし、市民に情報提供するにあたり、「できる」ことの羅列に終わっては、市民は広域連合の必要性を理解できない。「やらなければならないこと」を「いつまでに」やる、ということまで是非表現していただくことを期待する。

豊橋市の経済成長に国の成長戦略を

 国の成長戦略についてはまだ閣議決定されておらず、このタイミングでこのことを質問するのはいささか時期尚早かもしれないと思いながらも、本市の将来に大きな影響を及ぼす可能性のある大変重要な政策であり、重大な関心をもっていただきたいと考え質問させていただくこととした。
 政府は5月29日、産業競争力会議を開き、アベノミクスにおける第三の矢となる「成長戦略」の骨子を示した。この会議でこの骨子を了承したことにより、政府は6月中旬にも「成長戦略」を閣議決定する見通しとなっている。
 この骨子の中では、「成長への道筋・目標」の他、「三つのアクションプラン」として、「日本産業再興プラン」「戦略市場創造プラン」「国際展開戦略」が示されている。会議終了後、甘利経済再生担当大臣はインタビューに応えて「八合目まで来た。今後、農業や医療の点を詰める」と語っている。
 これに先立って、安倍総理大臣は日本アカデメイアで4月19日と5月17日の二度にわたり成長戦略について講演を行っており、その内容は官邸ホームページに示されている。このような情報から、成長戦略の内容についてはかなり明らかになっているものと感じている。安倍総理は今月5日にも、規制改革に重点を置いた成長戦略第3弾を発表し、この中で「必要な法改正や制度改革について、急ぐものは、この秋にも政府として決めていく」と述べている。
 これらの内容を見てみると、非常に積極的な政策が盛り込まれてくることが予想され、地域経済にも大きな効果や影響を及ぼすものになると思われる。本市の経済成長を加速する絶好の機会となる可能性があり、積極的に政策を活用することを期待する。
 そして、そのためには逸早い情報の入手と、その活用策の検討など、政策の受け入れ態勢を準備しておくことが必要と考える。
 そこで、この大きなチャンスを逃さないために、政策が示された後に対応を準備するというのではなく、早急な政策の受け入れ体制確立に向け、以下の2点について伺う。
【1回目質問】

  1. 国の成長戦略において、本市として特に注目すべきと考える方針について
  2. 国の成長戦略への対応のあり方について

【答弁要旨】

  1. 本市では現在、平成23年度に策定した豊橋市産業戦略プランに掲げた5つの戦略、農工商連携、プロモーション戦略、産業集積戦略、産業サポート戦略、雇用・人材育成戦略に基づき各種事業に取り組んでいるところであります。特に、農商工連携戦略とプロモーション戦略は積極的に推進しており、植物工場の推進や首都圏販売の促進などでその成果も見え始めています。
     今回、政府がアベノミクスの3本目の矢として発表しました成長戦略の骨子には、製造業の復活や科学技術のイノベーション、農業分野の競争力強化といった本市の産業戦略と一致している項目が含まれており、本市にとって追い風になるものと期待しています。
     また、国の成長戦略では、今後3年間に民間投資の拡大や構造改革などを集中的に行うとしておりますので、今後も国の動向に注視しながら、幅広く情報収集を進めることにより、国による新たな取り組みを逸早く本市の産業振興に取り込んでいけるよう努めていきたいと考えています。
  2. 本市では、首都圏活動センターを設置し職員を常駐させている他、国や県、大学などの関係機関に職員を派遣するなど、様々な方面にアンテナを張り、常に最新の情報を入手できる体制を整えています。
     国の成長戦略については、現在、まだその内容が具体的なものとなっていないため、現状のネットワークをフルに活用し、情報を入手する一方、得られた情報は、庁内各部局における共有化を推進していくとともに、関係各所との連携強化を図る中で、本市の産業振興施策のさらなる展開に向け、積極的な取り組みを進めていきたいと考えています。

【2回目質問】

  1. 安倍内閣による成長戦略は、これまで示された内容だけみても非常に多岐にわたっている。対象とする産業領域が広いことに加え、成長実現へのアプローチの手法が多様でもある。このことを考えると、これから出てくる様々な具体的な政策の全てについて対応していくということが必ずしも、適切な方法とならないのかもしれない。
     むしろ、本市としてある程度的を絞り、重点的に積極的に情報の入手に努め、本庁においても迅速にその情報への対応ができる体制を構築していく、という考え方が必要なのではないか。
     また、国の成長戦略を活かす方策として考えなければならないのは、今申し上げた積極的な情報の入手と対応ばかりでなく、情報の発信、国への提案ということも重要だと思われる。
     成長戦略の中では、終わりなき規制改革に向けて、明治初期の事例にならい「現代の建白書」を受け入れていくとしている。「官でも、民でも、新たなアイデアがあれば、どんどん戦略の中に取り込んで、戦線を拡大していきます。」ということ。
     そういう意味では、国が示す施策を待つばかりでなく、本市が持つ特性をもっとしっかり発揮するための規制改革を提案していくことが必要なのではないか。
     国の成長戦略を契機として、地域間競争が激化することになると思われる。この競争に勝ち残るためには、待ちの姿勢ばかりでなく、攻めの姿勢こそ重要なのではないか。そういう意味で、豊橋ならではの規制緩和を求めていくべきであり、国もそれを受け入れる姿勢を見せている今は好機と言える。
     本市には、日本の先端を行く農業がある。自動車関連産業も多く存在する。最近では、トピー工業やシンフォニアなど暮らしに役立つロボット産業も育ちつつある。それに加えて、豊橋技術科学大学には「未来ビークルシティリサーチセンター」や「人間・ロボット共生リサーチセンター」があり、これらの研究機関では先端技術を活かしたライフスタイルが研究されている。
     この町には「作る文化」と「使う文化」の両方が育つ環境があると言える。これらが相互に刺激し合うことにより、それぞれ単独に存在しているよりさらに高いレベルの文化を築き上げることができるのではないか。その実現に向けて、新たな規制緩和を提案していくことができるのではないかと考える。
     そこで、2回目として、1.2.をまとめて以下2点について伺う。
    1. 成長戦略に関する政策情報に、迅速かつ的確に対応するため、本市として焦点を絞り重点的な情報入手及び検討の体制を構築していくことに対する認識について
    2. 「現代の建白書」を提出するための検討体制をつくることに対する認識について

【答弁要旨】

  1. ご指摘のとおり、国の成長戦略については、幅広い分野にわたり数多くの情報が一度に出されることが考えられます。それらに対応するためには、各部局がしっかりとした意識を持って、常に高いアンテナを張り巡らすとともに、首都圏活動センターや経済産業省への派遣職員との密接な連絡体制を築くことが大切であり、現行体制のさらなる連携強化が必要になるものと認識しています。
     そこで、今後も、本市としましては、多岐にわたる情報の中で、よりこの地域に有効で、具体的に活用できるものに焦点を絞り、詳細な情報の入手に努めていきたいと考えています。
  2. 「現代の建白書」を提出するための検討体制を作ることに対する認識についてです。
     国の成長戦略では、官民からの新たな規制緩和などのアイデアを積極的に取り込んでいきたいとしているわけですが、委員ご指摘のとおり、本市には、各分野において先端技術を有する企業や基礎研究を行っている大学などがあり、サイエンス・クリエイトなどを中心に、産官学が相互に連携しながら新たな産業を創出するための体制が整いつつあります。
     また、本市では、輸入自動車関連企業などと連携した国際輸入自動車特区の提案が規制緩和を実現させた実績があるわけですが、そこにいたるには、民間企業からの様々な意見に耳を傾け、現行制度の実情をしっかりと把握し、民間企業との二人三脚による取組みがあったからこそ実現できたものであると考えています。
     そこで、今回の国における成長戦略の推進につきましても、民間企業や大学関係者からの様々な意見を聞き、実情を把握した上で、全庁的な取り組みとして各部局が連携をより強化することにより、国などへの具体的な提案をより積極的に展開していけるよう、迅速な対応に努めていきたいと考えています。

【まとめ】
 アベノミクスの成長戦略では、日本全体の産業振興を図ることを目指しているものの、現実的には全国均等に経済発展をすることは困難と思われる。恩恵をしっかり受けることになる地域、あまり恩恵を受けることのできない地域という違いが、自ずと生まれざるを得ないはず。その差がどこで生まれるかと言えば、国に対して積極的な提案をできる地域であるのか、そうでないのか、という差から生じる可能性が高い。
 政府の立場になって考えれば、国中から様々な提案が出され、提案合戦の様相となることを期待するものと思われ、そういう意味では提案は早い程受け入れられやすくなることも容易に想像できる。
 是非、豊橋発の、豊橋の産業を取り巻く環境をしっかり活かすための建白書を出していただくことを期待する。そのために、積極的かつ集中的な情報の収集と、大学や企業などのヒヤリングを進めていただけるとのことだったが、大変重要な取り組みになると思われる。
 大いに期待する。

公務員倫理の徹底

 5月10日、職員3名の懲戒処分の公表が行われた。一つは、54歳の建設部職員が4月27日(土)午後11時頃酒気帯び運転し縁石に乗り上げたところ、通報により駆けつけた警察官が酒気を帯びていることを見つけ検挙したことによる。
 二つ目は、58歳の消防本部職員が4月16日(火)午後7時50分頃、市内飲食店で同席した消防職員に暴行し傷害を負わせたというもの。
 三つ目は、36歳の市民病院医師が2月2日(土)午後11時31分頃、知立市内の国道23号において、制限速度60kmに対し51kmの速度超過違反をしたというもの。
 また5月22日には教育委員会が行った懲戒処分として、55歳の小学校教頭が4月5日(金)午後5時30分頃、15kmの速度超過違反と酒気帯び運転で検挙されたことに対する処分が行われた。
 市民病院医師の速度超過違反以外の3件については、本人に加えてその上司にも管理監督責任により処分が行われている。
 公務員として最も基本的な遵守事項である、酒気帯び運転の禁止が4月中に2件も続けて破られている。消防署員の暴力事件は昨年6月に続いての発生である。行政に対する市民の信頼を揺るがしかねない事態という危機意識を持つことが必要なのではないか。誠実に誠心誠意職務に励む職員、教職員が多くいる。彼らの努力を無にしないためにも、このような事態の再発防止には全力で取り組んでいただきたいと考える。そこで、以下の2点について伺う。
【1回目質問】

  1. 公務員倫理教育の現状と課題について
    1. 市長部局の認識について
    2. 教育委員会の認識について
  2. 問題の再発防止策検討方法の課題について
    1. 市長部局の認識について
    2. 教育委員会の認識について

【答弁要旨】

    1. 職員に対しては、これまでも階層別研修やテーマ別研修など各種研修の中で、また、日々の朝礼や人事考課面談など、日常的な職場でのマネジメントを通しまして、倫理意識の向上を図るとともに、年2回副市長から綱紀保持に関する通知を発するなど、服務規律の確保に努めているところです。
       こうした中で、今回のような「あってはならない事案」が発生していることから、引き続き、コンプライアンスを始め、公務員倫理の徹底に努めていくことが必要であると考えております。
    2. 学校教育は児童生徒や保護者、地域の方々との信頼関係を基盤として成り立つものであり、子供の教育を担う教職員は、法令を遵守するといったコンプライアンスのレベルにとどまらず、子どもによりよい生き方を示すことができる教育者として、より高い倫理性が求められています
       本市では、これまでも校長会議や学校訪問など、様々な機会をとらえ、服務規律の徹底を図るとともに、校内においてはチェックリストを活用して定期的に意識啓発を図ったり、職員一人ひとりの心に響く具体的な取り組みを指導してきました。また、昨年8月には市内全教職員を対象にして、不祥事撲滅に向けた悉皆研修を実施するとともに、教職員が自らの心の健康に留意できるようメンタルヘルス研修も実施したところです。
       現在、教職員の多くは「信頼される教職員」を目指して日々の教育活動に取り組んでいますが、今なお、ご指摘のような不祥事が起きていることは誠に遺憾であり、そのために教職員全体の信頼が損なわれてしまうことは残念なことであります。
       不祥事を起こす教職員を一人として出してはならないという強い覚悟を持ち、不祥事撲滅に向けた取り組みに一層力を入れていく決意であります。
    1. これまでも、こうした事案が発生した場合には、その都度、副市長からの通知を発しながら、管理職を通じ全職員に対し綱紀粛正の徹底を図っております。さらに、事案が業務上において発生したものにつきましては、再発防止に向けた組織を設け、個々の原因を究明するとともに、防止対策といたしまして、業務マニュアルや執行体制の見直しなどに取り組んでいるところです。
       再発防止に向けての課題としては、事案に対する職員一人ひとりの当事者意識の希薄さがあるのではないかと考えています。そのためには、24時間、365日、公務員であることを忘れず、常に高い倫理観と使命感を持って行動ができるよう、引き続き職員の意識改革と職場風土の改善に取り組んでまいりたいと考えております。
    2. これまでの再発防止策の検討方法としては、校長が不祥事を起こした本人から直接聞き取った内容の報告を受けるだけでなく、教育委員会としても本人や校長から直接事情聴取を行ったり、現場の検証を行ったりする中で、本人の心情、職場の環境・雰囲気など、本質的な要因となり得る点を多角的に洗い出し、原因の追究と再発防止策の立案に努めてきました。
       しかしながら教職員の不祥事が続いている現在、今一度、過去の不祥事案件の原因を分析し、従来のような研修や通知に加えて、新たな不祥事撲滅の方策を研究していく必要性も認識しております。この点につきましては、現在、教育委員会、校長会、教員組合、現場の教職員などで構成する「学校教育問題検討委員会」に検討を諮問し、各会・各層を代表する教職員が力を合わせて不祥事撲滅に向けた具体的な方策の立案に努めているところであります。

【2回目質問】

  1. 公務員倫理教育の現状と課題については終わる。
  2. 業務中に職員が起こした問題であれば、再発防止のために、様々な問題発生の要因を解析し対策を講じて行けるはずだが、業務時間外では把握できない要因が多過ぎて問題の根本原因が突き止められないということがある。そのことが、市長部局、教育委員会ともに、業務時間外の問題について、再発防止策の課題が具体的にあげることが困難な事情となっているものと考えられる。
     このことを考えると、現在行われている公務員倫理教育の質の向上を進めることがまずは取り組むべきことだと思われる。公務員倫理に関して、常に同じことの繰り返しではなく、最新の情報提供に努めていただくことが必要であり、問題対策の水平展開という意味でも、市長部局や教育委員会どちらで起こったことについても、原因と対策を全部署にしっかり伝えていくことに取り組んでいただくことを期待する。
     労働災害における有名な経験則の一つに「ハインリッヒの法則」というものがある。1つの重大災害の背後には29の軽傷災害があり、その背景には300の無傷の事故が存在するというもの。酒気帯び運転や暴力事件は行政に与える影響は重大ではあるものの、人命にかかわる事態に至っていなかったことを考えると、軽傷災害の範疇に分類される。
     そうであれば、この状況を改善しなければいずれ人命にかかわるような重大事故も起こり得るということが考えられる。逆に、今回のような事態を減らすためには、その背後にある異常を減らすことが必要ということになる。
     そこで、(1)(2)を合わせた2回目として、各職場単位でモチベーションを継続しながらヒヤリ・ハットと言われる異常な事態を減らしていく活動を検討すべきではないかと考えるが、市長部局、教育委員会、それぞれに認識をお伺いする。
     例えば、職場単位でメンバーがその月に交通違反を起こさなかったかどうかを報告する機会を持ち、それぞれのチームの結果をグループウェアなどで開示していくなどの方法が考えられる。チームとして意見交換をしたり、優秀チームの表彰などで、さらに効果が期待できるのではないかと考える。

【答弁要旨】

  1. 済み
    1. 公務員倫理の教育におきましては、一職員にとどまらず組織として主体的に遵守・実践しようとする文化を醸成することが必要でございます。
       そのためには、議員からお話のありましたように、各職場における教育の質の向上を進め、持続的かつ粘り強い取組を進めることが不可欠であります。
       昨年度、外部講師によるテーマ別研修において「公務員倫理を考える」と題して研修を行いましたが、その中で講師の方は「実践しない限り何も変わらない。倫理は職員一人ひとりが実践することに意義がある」と述べられました。職員一人ひとりが不祥事に対する傍観者的な態度を改め、倫理的に正しい行動、公務に対する信頼を得ることができる行動を自然にとれるようにするには、どのような活動を進めればよいかを十分に検討し、そして、それぞれの職場に応じた活動を持続的に行うことで、職員の倫理観を高め、共有していける職場風土の構築に取り組んでいきたいと考えております。
    2. 不祥事撲滅に向けた各学校における意識啓発の方策についてでありますが、不祥事撲滅のためには、これまでのように教育委員会からの通知や研修にとどまらず、一人一人の教職員が、「不祥事事案を対岸の火事としない」という自覚をもって、日頃から自分の心を律し、さらには不祥事を起こさないという強い意志を教職員同士が共有することが大切であります。
       教員は、子どもや保護者の前に立ち、範を示していかなければならない重責を担っており、ひとたび不祥事を起こせば、その軽重にかかわらず、辞職に追い込まれるケースも出てまいります。そうなれば自分の人生のみならず家族や関係者に多大な迷惑をかけることになります。
       こうした教育公務員としての立場をふまえて、不祥事が起きた場合の様々な影響を具体的な事例をもとにして考えさせる研修や指導を繰り返し行い、教職員一人一人の意識啓発に努めてまいります。

【まとめ】
 市長部局では、「一職員にとどまらず組織として、公務員倫理を主体的に遵守・実践しようとする文化を醸成することが必要」と答えていただいた。教育委員会には、「不祥事を起こさないという強い意志を教職員同士が共有することが大切」という認識を示していただいた。大変重要なことだと考える。
 そして、そのことを徹底していくには、「あれしては駄目、これしては駄目」式の、通達や研修では成し得ないと思われる。組織上位からの一方通行の情報伝達ではなく、職員同士、教員同士の意見交換や相互にアドバイスをすることが重要であり、そのことなしには組織の文化が醸成されないはず。さらに、問題の原因分析の手法、問題解決策の立案方法などについて、豊橋市としての方式が極められていけば、他市に先んじた組織風土、文化が形成されていくことになる。
 昨年の「公務員倫理を考える」という研修で、「実践しない限り何も変わらない。」と講師の方が言われたとのことだった。にもかかわらず、その後に、今回例示したような不祥事がいくつも起きたことは大変残念なこと。まじめに取り組んでいる職員や先生が肩身の狭い思いをすることなく、胸を張って誇りを持って仕事に取り組めるための環境づくりとも言える。早急に公務員倫理の徹底に向けて、活動を実践していただくことを期待する。


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