2012年6月12日(火) 6月議会一般質問
青字は答弁
質問テーマ [広域連合に何を求めるのか][教育における地方分権の推進][産業育成と学官連携]

 今回は、地方分権あるいはそれに伴う地域間競争の激化にどのように対応するか、または適応するかという視点から、三点について伺う。

広域連合に何を求めるのか

 近年、大都市圏で大阪都構想や中京都構想などの地方統治機構の改革に向けた議論が盛んになり、今まで以上に地方分権の意識が高まる中で、地方の時代が現実味を帯びてくるのと同時に、地域間競争の激化が予想される。
 一方、市町村合併の特例に関する法律は平成22年に改正され、その目的は「自主的な市町村の合併の推進による市町村の規模の適正化」から「自主的な市町村の合併の円滑化」へと改められ、市町村合併推進のための方策も削除された。
 このような状況下にあって、3月議会で佐原市長が示されたように、広域連合の形成により地域間競争を勝ち抜く力をつけていくという考え方は必要なことと考える。東三河広域協議会で議論されている広域連合は、単一の既存事務の持ち寄りによる従来型のものではなく、市町村の広域連合では例のない、関西広域連合のように多様な分野で上位機関からの権限移譲を受けていくものを考えているということも言われている。その広域連合を持続可能な地域づくりに、より実効性の高いものとすることは大変重要なことであり、しっかり検討しなければならない。
 しかしながら新たな形の広域連合は全国に例がないというだけに、イメージを持ちにくいものでもある。そこで、そのイメージを明らかにするために、地域間競争を勝ち抜くためのどのような力が得られるのか、広域連合と東三河県庁とはどのような関係になるのかなど、以下2点について伺う。
【1回目質問】

  1. 広域連合によりどんな分野で地域の持続可能性を高めることができるのか、また、地域のプレゼンスを高めることにどのようにつながっていくのかについて
  2. 広域連合準備段階及び形成後の東三河広域協議会と東三河県庁あるいは東三河ビジョン協議会との連携と役割分担について
【答弁要旨】
  1. 広域連合により東三河地域の持続可能性を高めることができる分野についてです。
     広域連合では、広域的な事務に総合的かつ計画的に取り組むことで、単独の市町村では解決が困難な行政課題への対応やより効率的な行政運営が可能となることから、持続可能な地域づくりを進めることができると考えています。具体的な取り組みについては現在検討中ですが、想定される分野としましては、防災、環境、観光などを考えています。
     次に、広域連合が地域のプレゼンス向上にどのようにつながっていくかについてです。
     広域連合は、広域行政の推進に加え、国や県から権限を委譲されることで、多様化する地域課題に対し、これまで以上に主体的に取り組むことが可能となります。
     地方分権の流れや道州制に向けた動きなど、地方自治の枠組みが大きく変わろうとする中、地域力を強化し、国や県などに対する発言力を高めることで、東三河地域のプレゼンスいわゆる存在感の向上につなげてまいりたいと考えています。
  2. 広域連合の準備段階及び形成後の東三河広域協議会と東三河県庁あるいは東三河ビジョン協議会との連携と役割分担についてです。
     現在、東三河広域協議会では、広域連合を軸に新たな広域連携体制についての検討を行っていますが、広域連合の準備段階においては、目指すべき地域の将来像を共有することが大切だと考えています。 そのため、今年度、県が進めている「東三河振興ビジョン」の策定に際しましては、東三河県庁と力を合わせ、東三河ビジョン協議会からの意見も参考にしながら、東三河のあるべき姿について協議検討してまいりたいと考えています。
     また、広域連合が設置された場合には、目指すべき地域の将来像の実現に向け、東三河県庁、広域連合、そして基礎自治体である東三河8市町村が、それぞれの権限に応じた役割を果たしながら、連携して取り組んでまいりたいと考えています。

【2回目質問】

  1. どんな分野で地域の持続可能性を高めることができるのか、ということについては、想定される分野としては、防災、環境、観光などを考えている、また、地域のプレゼンス向上にどうつながっていくのかということについては、国や県から権限移譲を受け地域力を強化することで国や県などへの発言力が高まるということだった。
     そこでまず、地域の持続可能性を阻害する要因を考えてみると、多くの人が最も心配していることは産業の衰退ということなのではないか。東西の活力ある地域に挟まれ、東三河地域が谷間に埋没してしまうのではないか、その結果、産業が流出し衰退することになれば、若者は働く場がなくなり出て行ってしまい、町としてはジリ貧になってしまうということが一番大きいのではないか。
     この危惧を取り除くためには、地域のプレゼンスを高め企業の関心を集め、さらに様々な企業誘致施策を実行することが必要なはず。そのことが、この地域を持続可能な地域としていくために、欠くことができない要素だと考える。そこで、この点についてさらに2点伺う。
    1. 現在、県が行っている企業活動のインフラに関する事業としては、三河港の管理、あるいは企業庁が行っている工業用地の造成などがある。これらを含め、広域連合が県の権限の移譲を受けて、産業、特に人口扶養力の高い製造業のインフラの強化を行っていくべきと考えるが、このことを最重要課題として取り組んでいくことの必要性について認識を伺う。
       三河港について言えば、入出港事務の一層の効率化による使い勝手の向上、自動車港湾としての機能強化のための特区構想の推進などや、震災時の船舶等避難指示の充実など様々な課題がある。
       企業用地についても、市内には三河港域の一部に若干の土地があるのみであり、企業誘致できる場所が乏しいという現実がある。特に、震災以後は内陸部への立地ニーズが高まっているとも言われている。
       当地域の製造業のインフラ強化に向けては、広域連合が県の権限移譲を受けて、積極的に取り組んでいける可能性は十分にあると考える。
    2. 現在検討している広域連合に湖西市にも加わってもらうように強く働きかけるべきだと考えるが、その必要性について認識を伺う。
       その理由として、以下のことがある。平成19年度から20年度にかけて行われた、東三河広域協議会の広域合併・道州制研究会では、合併のシミュレーションとして東三河のみの合併のケースと、東三河+湖西市の合併のケースについて、様々な数値を示している。
       湖西市を加えた場合では、人口は5.7%の増加に対して製造品出荷額は27.3%もの増加になっている。湖西市には製造業の集積が進んでいることが読み取れるわけであり製造業強化への強い味方になる可能性と合わせ、地域の製造品出荷額6兆8千億円という数値は広域連合のプレゼンス向上への期待も抱かせる。
       佐原市長が3月議会で言われていたように豊橋市と湖西市は古くから強い関係を持ってきた。現在、豊橋市からは大変多くの市民が湖西市に働きに通っている。湖西市には豊川用水から水が供給されている。また、湖西市は三河港と現東名、新東名のインターを結ぶことを期待されている浜松三ケ日豊橋道路のルート上にある重要な地域でもある。
       先日、ある勉強会で総務省自治行政局の方の講演を聴いた折に、県境を越えた広域連合実現の可能性について質問したところ、その答えとしては「権限委譲を受ける元となる県が二つになることから、権限移譲を受けるまでの手続きは大変かもしれないが、県境をまたいだ広域連合ということについての法的な制約はない」とのことだった。
       これらが、東三河の広域連合に湖西市に加わることを働きかけ、豊川流域広域連合として検討する必要があるのではないかと考える根拠。
  2. 東三河県庁などとの連携や役割分担ということについては、ビジョンの共有が大切であり、それぞれの権限に応じた役割を果たしながら、連携して取り組んでいきたいとのことだった。是非、それぞれの特性を活かしながら、しっかりと役割を分担し、無駄なくスピーディーに進めていただくことを期待する。
     そこで2回目として、この広域連合に東三河県庁、即ち県も参加をするよう呼び掛けることについて認識を伺う。市町村の広域連合ということであれば、県の権限移譲を受けることができるが、これに県が加わることで国の権限移譲を受けることも可能になるのではないかと考えられる。そのことでさらに、広域連合の効果の強化ができる可能性がある。県に参加を呼び掛ける考えの有無、実現の可能性、障害の有無などについてお聞かせいただきたい。
【答弁要旨】
  1. a.について
     産業を最重要課題として取り組んでいくことの必要性の認識についてです。 産業は、経済の活性化や雇用の確保など様々な面で持続可能な地域づくりに欠かすことのできないものであり、広域連合においても、その振興発展に向けて積極的に取り組んでいく必要があると認識しています。
     このため、産業分野に関しましても、市町村の共同事務として早期に実施できるものから、インフラの整備・管理など国や県の権限移譲が必要なものまで、幅広く検討してまいりたいと考えています。
  2. b.と2.について
     まず、湖西市についてですが、東三河8市町村と同様に豊川流域圏に位置し、通勤・通学などで多くの住民が日常生活圏を共有することに加え、製造業を中心とした高い産業集積を誇ることから、地域力のさらなる向上を図るためにも、同市との連携を一層強化する必要があるものと認識しております。 また、愛知県につきましては、国や県の権限に係る事務も含め、東三河の地域づくりを自主的かつ総合的に推進していくためにも、東三河県庁を中心に県との連携をこれまで以上に強化していく必要があるものと認識しています。
     しかしながら、長きに及ぶ東三河の地域形成の歴史や経緯、各市町村による様々な連携活動の実績、あるいは組織実現までの手続きや工程などを踏まえますと、まずは、東三河の8市町村の取組みの一体化を急ぐことが大切だと考えています。
     したがいまして、連携範囲の拡大につきましては、8市町村によるさらなる一体化の状況を見ながら検討してまいりたいと考えています。

【3回目質問】
 産業振興策については、広域連合のテーマとして積極的に考えていただけるとのことだった。取り組みに期待する。最も重要なことだと考える。
 湖西市、愛知県に対して、広域連合への参加を強力に呼びかけていくことについては、必要性は認めながらも8市町村の一体化を優先し、その後で考えたいとのことだった。
 現時点、東三河8市町村の中にはまだ広域連合への参加を躊躇しているところもあるということを聞いている。小さく産んで大きく育てるということはよく言われるが、広域連合の早期形成ということに関しては、広域連合がいかに重要なことを取り扱うか、どれほど大きな力を発揮できるかが、早期の実現に大きく寄与する可能性が高いはず。魅力のないものには、いくら全国初の事例になるといっても触手が動くことはあり得ない。このことを、是非、念頭に置いていただき今後一層の取り組みを期待する。
 そこで、1.2.をまとめて、3回目として2点伺う。

  1. 広域連合の意味としては、広域的地域の全体最適を求めていく方策であると言える。その反面、局所的には部分最適とならない事態が生じることも容易に想像できる。豊橋市が東三河地域のリーダーとしてこの広域連合を実現そして成功させるためには、短期的に見た時には豊橋市自身の最適の方策とならないことでも敢えて進めることを選択しなければならないはず。
     広域連合の好ましい面だけでなく、我慢しなければならない側面があることを、早い段階で市民に示す必要があると思われる。市長として、そのことを市民に伝えていく考えがあるかどうか伺う。これが1点。
  2. また、長いスパンで考えた時には、豊橋市にとって必ず最適になる広域連携の形としなければならない。そういう意味で、2点目として、将来的にこの広域連合をどのように発展させるべきかについて、佐原市長のお考えをお示しいただきたい。以上2点について伺う。

【答弁要旨】

  1. 1市民に伝えていくことについてですが、極めて重要なことだと認識しています。 とりわけ、豊橋市にとっての受益と負担については、大変に関心の高いところだと思いますが、広域連合では地域全体としての視点が欠かせません。従いまして、施策によっては短期的には本市の負担が増えることも考えられますが、将来的には本市を含む地域全体のプラスになる効果があり、そういう意味では本市にもその効果が還元されてくる効果があるものと認識しています。そういったことをしっかり説明していかなければいけないと思っています。またいくつかの事例について、そういったことを具体的にお示しできるものと思っています。
     こうしたことから、議会をはじめ広く市民の皆様へ、東三河全体に対する効果や影響などについて丁寧にご説明を申し上げ、ご理解をいただきながら進めてまいりたいと考えています。
  2. 広域連携の形として将来的に広域連合をどのように発展させるべきかについてです。
     東三河の持続可能な発展に向けては、東三河8市町村が、地域の将来像を共有し長期的な観点から地域づくりに取り組むとともに、深刻化する地域課題に対し、スピード感を持って対応していくことが何より大切であると認識しており、早期に実現が可能な枠組みからスタートしてまいりたいと考えています。
     また、広域連合は、地域一体化の第一歩と考えており、実効性ある取り組みを積み重ねながら段階的に強化していきたいと考えています。こうした取り組みによって地域の一体感が醸成され、東三河県庁との連携や三遠南信地域における東三河の役割を果たしていく中で、次の姿が見えてくるものと考えています。
     いずれにしましても、地域の主役は住民の皆様であり、東三河地域に住む方々が「ここに住んでいて良かった」と思えるような地域のあるべき姿を追い求めてまいりたいと考えています。

【まとめ】
 広域連合については、市民にしっかり効果や影響を説明していくこと、将来の姿については、実効性のある取り組みを積み重ねる中で一体感が醸成され、次の姿が見えてくると考えるということを答えていただいた。
 今回の議論を通して地方分権に臨む姿勢について考えてみた。従来は、市でできることは何かを考え、その中で必要な施策を選ぶという思考方法だったと思われる。しかし、地方分権の時代にまず最初に必要なことは、豊橋市が国並みの権限を持ったつもりで何ができるかを考えることなのではないかということ。
 そしてその中に、市の権限ではできないものがあるならば、県や国に要望をしていく。それが補完性の原則のあり方だと思う。
 さらに、県や国がその要望に応えてくれないとしたら、それができる権限の移譲を受ける受け皿づくりを考えるべきであり、その一つが現在検討されている広域連合ということだと思う。
 様々な制約を取り払い地域の可能性を最大限に活かす施策実現に向け、積極的に取り組んでいただくことを期待する。自らの殻を破った考え方が必要だ。

教育における地方分権の推進

 「委任」と「補助執行」というのは、本来、教育委員会が行うべきものと法律で定められていることを、市長部局で行うこともできるように、地方自治法で定められている二つの方法のこと。今回は、これらの方法により、教育委員会の職務権限を市長部局に移管するということについての質問をさせていただく。
 今年4月、都市計画部に所属していた動植物公園が総合動植物園部となったことを機会に、教育委員会に所属する自然史博物館が総合動植物公園部に統合され、その事務を市長部局で補助執行されることになった。同じく教育委員会の権限に属する女性教育及び校区市民館の管理運営事務については、既に市長部局の市民共同推進課で補助執行がなされている。
 また、平成19年の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正では、文部科学省から各教育委員会への通知に示されているように、「教育における地方分権の推進」として、スポーツ及び文化に関する事務の所掌の弾力化ということが行われた。具体的には、「スポーツ及び文化行政について、地域の実情や住民のニーズに応じて、”地域づくり”という観点から、他の地域振興等の関連行政とあわせて地方公共団体の長において一元的に所掌することができる」ということになったということ。
 高齢化社会への適応、市民活動の活性化、あるいはシティプロモーション推進のために、地方自治法で認められている教育委員会事務の委任、補助執行の他、今申し上げた事務の所掌の弾力化の活用などにより、教育委員会の権限に所属する社会教育に関する事務のあり方について、しっかり見直すことが必要ではないかと考える。
  そこで以下の2点について伺う。
【1回目質問】

  1. 本市が教育委員会事務の補助執行を行っていることの考え方と実績の評価について
  2. 教育委員会事務の補助執行と委任(地方自治法第180条の7)、教育委員会の職務権限の特例(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第24条の2)のそれぞれについて、特性の認識と活用の考え方について

【答弁要旨】

  1. 教育委員会の権限に属する事務の補助執行についての考え方と実績の評価についてです。 本市ではこれまで、教育委員会との協議を経る中で、組織の簡素化、事務の効率化、政策の推進といった総合的な視点から、教育委員会の権限に属する事務の一部を市長部局の職員に補助執行させています。
     具体的には、女性教育、校区市民館の管理運営、自然史博物館の管理及び教育普及活動に関する事務でありますが、女性教育に関しては男女共同参画の推進を図る中で、より一層効果的な事業の展開を図っております。また、校区市民館の管理運営に関しては、住民自治により地域コミュニティを総合的に推進する基盤が整い、校区市民館を拠点にして環境や子育て支援など、地域の諸課題に対してきめ細かい対応ができるようになったことなどが挙げられるかと思います。
     なお、自然史博物館に関しては今年度からの新たな取り組みとなりますが、総合動植物公園との一体的な整備・運営とプロモーション活動の重点的な展開といった面で、今後、教育委員会と市長部局が緊密に連携し、効果的な事務執行に努めることにより、成果を出していくことができるものと考えています。
  2. 教育委員会事務の補助執行と委任、教育委員会の職務権限の特例について、それぞれの特性と活用の考えについてであります。
     事務の「補助執行」と「委任」については、教育委員会の自主性と職務権限の独立性を侵害しない範囲で行っており、委任では権限は受任された市長に移りますが、補助執行の場合は教育委員会に残るという違いがあります。
     女性教育、校区市民館、自然史博物館に関する事務については法で教育委員会の所管とされていることから、教育委員会と市長部局との連携を図る上において、権限を教育委員会に残す「補助執行」の形がより適切であると考えております。 「職務権限の特例」は、教育委員会の権限に属する事務のうち、スポーツに関すること及び文化に関することに限定し、条例化によりその事務の全てについて市長が管理執行できるという特性を有しています。
     今後の活用については、行政課題等への対応として市長部局、教育委員会に求められる役割、互いの裁量の範囲を踏まえ両者が十分な協議を進める中で、検討していくことが必要であるとの考えを持っております。

【2回目質問】

  1. 教育委員会の権限に属する事務の補助執行についての考え方と実績の評価についてお答えいただいた。組織の簡素化、事務の効率化、政策の推進などをねらいとするものであり、概ね期待する成果が出ているということだったと思う。
     先日、教育委員会で補助執行の状況把握をどのようにしているかについて伺ったが、事務によって情報把握の程度にかなり開きがあるように感じられた。権限の行使をするためにはある程度の現況把握は必要だと思われる。一方、報告等の負荷が過大にならないように、手続きが煩雑にならないようにという点についても留意されることを期待する。
     また、自然史博物館が補助執行により総合動植物公園部に併合されたのは、動植物公園の再整備構想が提示された後のこと。再整備構想に、この補助執行の意味をしっかり活かしていくためには、これまで示されているコンセプトを見直すということも必要ではないかと考える。
     再整備構想のコンセプトの見直しということに大きく期待して1.については終わる。
  2. 教育委員会事務の委任、補助執行、職務権限の特例について、それぞれの特性の認識を聞かせていただいた。今後の活用については、行政課題への対応として市長部局、教育委員会の両者で十分に協議し検討することが必要、との考えを示していただいた。検討の成果に期待する。
     今、高齢化社会となり高齢者の健康増進は大きな課題となっている。ここにはスポーツ行政が大きく関係を持つはず。また、本市はシティプロモーションに熱心に取り組んでいる。今回、補助執行されたことにより自然史博物館はシティプロモーションへの一層の貢献も期待される。そういう意味では本陣資料館、民俗資料収蔵室、あるいは美術博物館などの、シティプロモーションや地域活動との連携強化ということも考えられる。校区市民館と類似する性格を持つ施設である地区市民館も市長部局で補助執行するということも考えられる。
     そこで2回目として、現在教育委員会で行っている社会教育全般について、市長部局への委任あるいは補助執行などを行うことの必要性について、認識を伺う。一層の事務の効率化、高齢者の健康増進やシティプロモーションの推進、あるいは市民による地域活動の活性化など、教育の地方分権をしっかり活用するという観点からの考えをお聞きしたい。
     高齢化社会への適応、シティプロモーションの推進、市民による地域活動の活性化はいずれも本市にとって重要な課題。この件について他都市の例を3件ほどあげさせていただく。
     先日視察した東京都府中市では、教育委員会が行う事務としては学校教育に関することだけを残し、その他は市長部局に委任あるいは補助執行をさせていた。市長はスポーツのまちづくりを掲げており、スポーツに関する事務を市長部局が行うことでハードとソフトの緊密な連携の下での施策遂行が可能となっているということだった。
     滋賀県の琵琶湖博物館は滋賀県教育委員会から知事部局に委任されている。博物館であるばかりでなく、研究施設、文化施設、生涯学習施設、交流と情報のセンターとして機能しているという。滋賀県教育委員会は、この他にも県立女性センターの管理運営、県立近代美術館の管理運営、県立青少年宿泊研修所の管理運営、県立野外活動センターの管理運営、青少年団体の指導育成に関することなども知事部局に委任している。
     東京都足立区では、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づき、「教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例」を設け、スポーツに関すること、文化に関することの事務を区長が管理し執行することとしている。区長部局の「地域のちから推進部」には地域文化課やスポーツ振興課が置かれている。そのユニークな活動の一つとしては、公園や広場などを利用して、安全・気軽に楽しみながら自主的に健康体力づくりに取り組めるように、専門の指導員がアドバイスしている。「パークで筋トレ」というメニューになっており、ここでもハードとソフトの緊密な連携により高齢者の健康増進活動が展開されている。それと同時に、公園利用者のコミュニケーションが図られ、近隣住民の人間関係も形成される場となっているとのこと。
     このような事例をみると、本市でも十分に検討に値するものと思われる。

【答弁要旨】
 この問題については、本市における組織向上のためのテーマの一つとしてとらえており、今年度関係部局において検討することとしています。
 先ほど議員が言われたように国の中央教育審議会などの様々な議論を経て、平成19年度に地方教育行政の組織と運営に関する法律の一部が改正され、文化・スポーツについては市町村の判断により、市長が担当することを選択することができるようになったわけですが、文化については本市では先駆的に取り組んできております。スポーツについては、高齢者や市民の健康増進など市長部局との関連が深く、それを一緒にすることによって、特色ある町づくりなど様々なメリットがあると思います。
 ただ、一方で学校スポーツが教育の一環として本市のスポーツの底辺をを支えているということがあり、学校の運動場や体育館など学校体育施設が地域スポーツの活動の拠点となっていることなどがあり、教育との結び付きも大変強いものがあります。このことは社会教育事業における青少年教育についても同じことが言えます。その他、本陣、図書館、美術館など様々な社会教育施設もあるわけですが、本来の教育施設としての役割を踏まえる中で、また、高齢者の健康増進やシティプロモーションなどの視点も勘案して、メリット・デメリット・必要性など総合的に考えていく必要があると考えています。
 他都市についてもこの取り組みについては、その方向性は様々であります。今後、市長部局と教育委員会とで課題や問題点などきちっと整理して、一定の方向性を出していきたいと考えています。
 教育委員会という執行機関と市長部局という執行機関が互いに連携を密にして、正に一体一丸となってこの町の町づくりや人づくり、そして社会教育の推進が円滑に図られる、そういう体制であることが最も大切であると考えています。

【まとめ】
 社会教育部門の市長部局への移管ということについては、市長部局と教育委員会との役割・責任分担を整理する必要があること、今後、教育委員会との協議により一定の方向性を見出していきたいということなどお答えいただいた。
 高齢化が進む中、高齢者が健康でいきいきと暮らせる方策づくりへのスポーツの活用、シティプロモーションの推進に向けた文化施設の活用、教育施設の利用による市民による地域活動の活性化など、ソフトとハードが緊密に連携した施策を実現することで大きな可能性が開けると考えられる。積極的に検討していただくことを期待して、この件については終わる。

産業育成と学官連携

 地球温暖化、労働人口の減少、円高などが進み、技術革新と相まって産業構造に大きな影響を及ぼすことが考えられる状況となっている。即ち、地球温暖化は電気自動車の普及などCO2の排出がない、あるいは少ない製品への転換を促し、労働人口の減少や円高の進行は、より付加価値の高い製品の製造が余儀なくされる傾向をもたらしている。
 このことは自動車製造に関連する産業の多い本市製造業に対し、大きな影響が及ぶことを予期させるものであり、逸早くこれに備えていかなければ産業の空洞化が進む心配がある。CO2の排出が少ない、あるいは付加価値の高い製品づくりに向け、学官連携の強化は喫緊の課題となっていると言えるのではないか。これまで培ってきた製造業や農業の経験を活かしながら、新たな産業を生み出していくために、特にシーズの育成に向け行政が何をすることができるかが問われる環境となっている。
 そこで、現状の学官連携の進め方を確認し、今後のあり方を考えるために、以下の3点について伺う。
【1回目質問】

  1. 産業空洞化の危惧に対する、学官連携による本市の取り組みの現状と今後の方向性について
  2. 本市の特性を活かすという視点の下で、今後特に重点的に取り組むことが必要と考える領域について
  3. 研究者にとって魅力ある行政施策のあり方について

【答弁要旨】

  1. 産業の空洞化に対する学官連携の現状と今後の方向性についてでございます。これまで本市では、産業基盤を成す多くの中小企業にとって、豊橋技術科学大学などの研究を技術移転することにより企業の経営的な自立を促進することが必要であると考え、その施策方針と事業計画をまとめた「サイエンスクリエイト21計画」を策定し、それを具現化する中核的な機関として第三セクターの(株)サイエンス・クリエイトを設立し、様々な産学官連携事業の推進に取り組んでまいりました。近年は、本市の産業活性化の新しい取り組みである農工商連携を推進していくためにも大学と企業、行政の連携が不可欠であるという考えから、サイエンス・クリエイトを中心とした共同研究を推進し、地域の特性を活かした新産業創出に取り組んでいるところでございます。今後におきましても、こうした地域の連携で培った産学官のネットワークを活用し、本市産業の特徴である農業を活かした食品、健康、医療に関する新たな産業分野の創出、また一方では、本市産業の主軸である自動車関連企業の次世代自動車への対応についても産学官が一体となって積極的に支援してまいりたいと考えております。
     今後とも、本市の産業構造の特性を活かした新たな分野の創造などについて、産学官連携をより一層推進していくことで対応してまいりたいと考えております。
  2. 次に、本市の特性を活かして重点的に取り組む領域をどのように考えているかということでございます。この地域の工業の強みである中小企業を中心とした「ものづくり技術」を新たな分野に活かしていくための技術開発などは、今後の地域産業の活性化にとって益々必要となる領域ではないかと考えておりますし、農工商の連携事業などにおいては、これまで培った農業者の経験やノウハウをセンシング技術によりデータ化することで、高品質で安全な農産物を安定的に生産できるような新しい農業分野を確立することなども重要な領域となってくるものと考えております。
     それらを具体的に展開していくためには、企業や農家の自発的な取り組みを待つだけではなく、大学研究者や異業種、他分野などとの情報交換の場の確保や関係機関によるサポート体制の強化などが益々不可欠なものになると考えております。
  3. 最後に、研究者にとって魅力のある施策の在り方についてでございます。本市では、地域企業による新たな分野での技術開発の取り組みには、やはりその分野で専門的知識を有する研究者のサポートが不可欠であると考えており、これまでも(株)サイエンス・クリエイトが実施する「新産業創出等支援事業」などを支援し、産学共同研究の機会創出に努めてまいりました。
     そして今後におきましても、今年度から新たに(株)サイエンス・クリエイトがはじめる「イノベーション創出等支援事業」などでの産学共同研究への支援を積極的に展開していきたいと考えております。また、技術者の自由な発想を開発のヒントに結び付けていただく試みとして、大学や企業など様々な分野、組織の研究者が集まる自由な意見交換による研究会(通称「ワイガヤ」)の設置なども支援してまいります。このような事業を展開することにより、多くの研究者と地元企業のマッチングを進め、研究者がスムーズに地域産業へ貢献できるための環境作りを進めてまいりたいと考えております。

【2回目質問】

  1. 産業空洞化の危惧に対する、産学官連携による本市の取り組みの現状と今後の方向性については、サイエンスクリエイト21計画を進め、近年は農工商連携による新産業創出に取り組んできたということだった。今後については、農業から始まる、食品、健康、医療に関する分野の創出、次世代自動車対応を進めることで新たな付加価値創造など、産業構造の特性を活かしていきたいということだった。
     1.については2回目質問を2.と合わせて行う。
  2. 本市の特性を活かした重点的に取り組むべき領域ということについては、ものづくり技術の汎用性の開拓、センシング技術を活用した新しい農業の活用などが中心であり、異業種・他分野の情報交流のサポート体制構築を考えているとのことだった。
     そこで、1.2.を合わせて、2回目の質問をさせていただく。
     まず、1.で産学官連携として様々な取り組みが行われていることはわかった。ここで行われていることは、主に大学にあるシーズと民間企業のニーズのマッチングということがメインであろうと思われる。
     そこで、シーズの育成ということについて伺いたい。時代にマッチしたもの、当地域の特性を活かす可能性の高いものなどを選定し研究の支援を行う必要性があるのではないか。
     そういう意味で例えば、今後のシーズとしての研究領域として期待されるのは、円高環境下でも強い競争力を持てる高い付加価値を持つ製品の開発であり、CO2発生の少ないエネルギー利用技術、資源の段階的有効利用の方策であるカスケード利用のシステム、植物が生産する微量成分の医薬やサプリメントへの利用技術なども考えられる。
     シーズ育成に向けた研究支援の方策として、研究領域を限定した資金援助、研究拠点の形成などを考えることの必要性について、認識を伺う。
  3. 研究者にとって魅力のある施策のあり方ということについては、「ワイガヤ」の支援など研究者の地域貢献の意欲を研究の初期段階から地域が期待することのできる環境づくりに取り組んでいくということだった。
     研究者が必要なものは様々あるはずだが、中でも研究テーマの活用に関する情報、資金、実験フィールドなどが主要なものと考える。これらの内、すぐにでも取り組めるものとして、研究テーマの活用に関する情報提供ということがあるのではないか。
     いくつかの分野における豊橋に縁のある研究者、関連業界の開発担当者、行政などのメンバーが情報交換できる仕組みをつくることは考えられないものか。例えば、Facebookの非公開グループの活用なども使えるのではないか。このような情報交流の場づくりに取り組んでいただきたいと考えるが、認識を伺う。

【答弁要旨】

  1. 2.に統合
  2. 研究支援の方策として、研究領域を限定した研究費補助や拠点形成などに対する必要性の認識についてでございます。本市が進める産学官連携への支援事業においては、事業化の可能性が高いプロジェクトや市場ニーズへの対応能力の高いプロジェクトなどを優先的に選定し、地域経済にとってより効果的な共同研究となるものに対して、幅広い分野を対象に支援してまいりたいと考えております。
     本地域には、様々な分野で多くの企業が活躍されており、どんな研究シーズが企業に必要とされるのか、今後益々技術革新が進み、対象となる研究領域も現在では想像できないものに拡大していく可能性も大きいと考えられます。そこで、現段階では、資金援助や研究拠点の形成に関しましては、研究領域を限定することなく、幅広い分野を対象に施策を展開してまいりたいと考えております。
  3. 研究者の情報交換の仕組みづくりについて。
     ご提案いただきました本地域に関係の深い様々な分野のメンバーによる情報交換や研究者間のネットワークの構築などにつきましては、今年度より実施を計画している研究会活動の「ワイガヤ」などをはじめとする新たな産学官連携事業をフォローアップする機能として重要な取り組みであると認識しております。
     そこで、今後は、地元企業や大学などを中心に多くの方面からのご意見を参考とさせていただく中で、研究テーマの活用がよりスムーズに展開できる仕組みづくりについても検討していくことが必要であり、そのためには、今まで以上の産学官の連携強化と(株)サイエンス・クリエイトの組織強化を進めていくことが重要であると考えております。

【まとめ】
 特定分野の研究支援ということについては、本市としては、大学で開発された技術の産業への移転ということに引き続き注力し、研究の支援ということは考えないという趣旨のご答弁だったと思う。
 かつて豊橋技科大には、炭素原子60個で構成されるサッカーボール状の構造を持つフラーレンの存在を予言し、現在同大学の名誉教授となっている大澤映二先生がおられた。しかしその後、大澤先生がナノ炭素研究所を作ったのは千葉県であり、豊橋にはフラーレンに関連した産業が育つことはなかった。このことは反省すべきことと考える。
 産業振興に向けては、全国から注目される地域であることが重要。豊橋技科大の榊学長は、ヒトゲノムの研究における世界的権威であるとのことであり、また産業振興に大変大きな関心を持っておられると聞く。是非、学長と市長との間で、研究の推進、研究の活用ということについて、意見交換を進めていただくことを期待する。


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