2012年3月28日(水) 本会議報告案件
青字は答弁
質問テーマ [約5億700万円の債権放棄について]

約5億700万円の債権放棄について

 これは昨年4月1日から施行された「豊橋市債権管理条例」の第6条に基づき、昨年12月20日に放棄された債権について報告されたものであり、このことについて、3点伺う。
【1回目質問】

  1. 今回の債権放棄額合計約5億700万円の内、第6条の2号「消滅時効完成」によるものが、「住宅使用料」で5,505,919円、「市民病院関係」で合計397,574,874円、「水道料金」で2,728,710円ある。債務者が死亡、行方不明、破産などが、債権放棄しなければならない事由であることは理解しやすい。しかし、消滅時効の完成に至る前には、様々な方法による債権回収努力や時効中断措置を実施する機会があったものと考えられる。それぞれにつき、どのような努力をされたかについて伺う。
  2. 消滅時効完成による債権放棄の金額がこのように多額になったことについて、その原因と課題について、それぞれどのように考えるか、認識を伺う。
  3. 債権管理規則第4条によれば、債権の管理の適正を期するため債権管理調整会議が設置されることとなっている。消滅時効完成の判断は最終的にこの債権管理調整会議により判断されるものと考えられるが、この会議の構成についての考え方と構成員について伺う。
【答弁要旨】
  1. 消滅時効完成までに至る本市の取り組みでございますが、各債権におきまして、電話や文書催告を行うほか、連絡のつかない債務者に対しましては住民票調査や登録住所への現地確認による所在確認を行い、本人に連絡をとって面談を行うことなどにより債権回収を図っております。また、一括で納付が困難な相手方につきましては、債務承認書の提出や分割納付により、また、住宅使用料においては、裁判所に提起した明渡しの訴えの中で、併せて滞納している住宅使用料も請求することによって、時効中断措置を図ってきたところであります。
     今回放棄しました債権は、地方税とは異なるため、調査権がないことにより財産の特定ができなかったり、また、財産の特定ができたとしても、差押をするには、裁判所の手続きが必要となり、時効中断措置や債権回収をすることが困難で、消滅時効による債権が累増したものであります。
  2. 消滅時効による債権放棄額が多額になった原因についてでございますが、従来は相当な徴収努力をしたにもかかわらずやむなく消滅時効を迎え、以後時効の援用も受けられない債権については、放棄の適否の判断が困難であったため、長期間にわたり累積したものでございます。
     また、自主財源の確保と適正な債権管理が課題と認識しており、今後も引き続き債権確保に注力するとともに、時効中断措置を徹底し、消滅時効が完成することのないよう対策を取ることが重要と考えております。しかし、徴収努力をしてもなお回収困難な債権については、条例に基づき適宜放棄することも必要であると考えております。
  3. 債権管理調整会議の構成の件でございますが、この会議は市の債権を適正かつ統一的に行うための調整機能の役割を担うとともに、債権管理の目標や対策などの内部意思決定を行うための機関として設置しており、議長を堀内副市長、副議長を有安副市長とし、委員に総務部長、財務部長、福祉部長、建設部長、市民病院事務局長、上下水道局長及び教育部長の市の主だった債権を所管している部長7名で構成しております。

【2回目質問】

  1. 市が行う、病院、住宅、水道などの事業では、支払い能力のない生活困窮者に対しては、一定の配慮を行う必要があると考えるが、支払い能力があるにも関わらず支払う意思がないなど悪質なケースを放置すべきではない。夜間集金や保証人への督促など、今まで以上の債権回収努力が望まれる。
     時効の中断ということについては、民事訴訟法382条に定められる裁判所による督促制度の活用も必要だと思われる。市民病院においては請求額が大きくなることもあるので、ある程度以上の金額ですぐに支払いができないケースでは、公正証書化することによる強制執行の要件確立などの検討も必要ではないかと考える。
     そこで、これまでの反省を踏まえた、新年度以降の債権回収への取り組みの考えについて伺う。
  2. 過去の実績として消滅時効完成による債権放棄額は1年平均にするとどの程度であったのか、また、今後はそれをどの程度の削減をしようと考えているのかについて伺う。
  3. 債権管理調整会議は、債権を主管する職にある方々で構成されているわけだが、審査が甘くなる心配はないのか? それを防ぐために、公認会計士などの第三者を構成員に入れる考えはないのかについて、認識を伺う。
【答弁要旨】
  1. 債権回収への取り組みでございますが、今回放棄しました債権につきましては、支払督促などの法的措置や保証人への対策などが不十分であったことから、本年度早々に、その対策をマニュアル化し、是正を図っております。
     このマニュアルに基づき、住宅使用料、診療費において、債権回収のため支払督促、即決和解を行い、なお、納付が無い者に対し、債権差押命令による給与差押も行っているところでございます。
     今後につきましては、債権管理室と各部との連携を強化し、未接触者に対しての休日、夜間訪問の実施や、支払督促、公正証書などによる債務名義の取得を拡大するなど、債権確保に努めて参りたいと考えております。
  2. 消滅時効による債権放棄の年平均額でございますが、市民病院診療費では約3,300万円、住宅使用料では約50万円、水道料金では約20万円となっております。
     今回の放棄により過去の消滅時効完成債権について整理することができましたので、今後は新規に発生する債権について、時効中断措置を徹底することにより、消滅時効による債権放棄額を縮減させていきたいと考えております。
  3. 債権管理調整会議では、債権放棄だけでなく、債務者に対する法的措置の決定も行っております。なお、債権放棄につきましては、適用要件を厳格に定めており、債権管理室での内容精査の後、債権管理調整会議において条例との適合性の判断を行っております。
     これらの決定は、市の財政運営上、重要な意思決定でございますので、厳正な審査を行うため、判断の難しい事案につきましては、事前に弁護士等の精通者の助言を受けて判断を行っております。
     こうした方法により、会議の公平かつ適正な運用に努めて参りたいと考えております。

【まとめ】
 今後の債権回収の取り組みとしては、支払督促などの法的措置や保証人への対策などが不十分であった点につき、本年度早々に、その対策をマニュアル化により是正し、支払督促、即決和解、給与差し押さえなども行っているとのことだった。しっかり進めていただくことを期待する。
 また、今後の消滅時効による債権放棄額については、病院3,300万円、住宅50万円、水道20万円という従来の年平均額より縮減させるとのことだった。生活困窮者への一定の配慮をしながら、悪質な滞納者には厳しく臨んでいただくことを期待し、今後注視していきたい。
 調整会議においては、一定の基準に照らして甘さの歯止めとしているということであり、理解した。
 債権回収という仕事は地味でありかつ、真剣に取り組めば大変なことも多い仕事であることはよく理解できる。それだけ重要な仕事であるとも言える。それぞれの一連の仕事を完結させるという大切な業務という意味も持つ。債権管理室はじめ各部署ご担当の方々の頑張りを期待する。


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